キヴォトスメロンパンモドキ   作:ただねこ

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遅すぎた自覚

「……今、なんて言った?」

「ティーパーティーの桐藤ナギサ様からの要請で、エデン条約に関わる書類の保護をしに向かうところですが……」

「……わかった。君に今から伝えることがある」

 

私はツルギに、今自分が知りうる情報を話した。

 

「……なるほど。ですが……」

「ああ。この命令に背くことは、ティーパーティーへの謀反となる。君は追放されるだろう」

「……すみません、夏油さん。このことは誰にも伝えるわけにはいきませんし、夏油さんの希望通りには行きません」

「わかってるさ。それを承知で頼んだのだから。そして──」

「?」

「もし補習授業部とティーパーティー以外の何者かが介入したのなら、即刻戦闘を開始してくれ。これは私個人の依頼だ。頼む」

「……はい」

「ありがとうツルギ。それじゃあ、君にできる仕事を頑張ってくれ」

 

私は、私のすべきことをしよう。

ほんの少し重い足取りで、アリウス自治区へと足を運ぶ。

 

「……」

 

今の私の顔は、さぞ恐怖の化身のように映っただろうね。

 

 

・・・・・

 

 

「ベアトリーチェ?」

「ああ、遅かったではありませんか。羂索」

 

 

 

 

秤アツコが、磔にさせられている。

 

 

 

 

「……儀式は?」

「もう終わる頃です。……直に、「色彩」がこちらにやってくるでしょう」

「……そうか」

「どうかしまし──ごはぁっ!?」

 

無言で、彼女を殴る。

 

「何故、こんなことをした?」

「私が崇高に至るためです……やはり、やはり貴方は要らない。ゲマトリアなど役には立たない」

「そうか」

「羂索、貴方とは良い関係を築きたかったのですが……仕方ありませんね」

 

そう言うと、ベアトリーチェは異形へと変貌を遂げる。

 

「これこそが、私の真の姿です。恐ろし……くはないでしょうね。貴方はもっと悍ましい殺意を見ているでしょうから」

「ああ、そうだね。そしてそれ以上にお前は醜悪だよ。ベアトリーチェ」

「は?」

「お前はいらない。……領域展開」

「!?」

 

掌印を結ぶ。

 

「何をしているか、解っているのですか!?」

「呪いの奔流に蝕まれ続けるがいい」

 

……もう、時すでに遅し。秤アツコはとうに絶命し、ベアトリーチェの思惑通りに進んでしまった。

早ければ。あと3日で色彩が来るだろう。

 

「呪霊操術」

「やめ」

 

ベアトリーチェは呪霊に食われ、その呪霊を私が祓う。ベアトリーチェの存在は、今この世から消えた。

 

「……そうか、そうだったのか」

 

この世界は、最初から詰んでいた。そういうことだったのか、連邦生徒会長。

 

「……ククッ、ははははは!」

「……羂索?」

 

後から来たアリウススクワッドの3人は、狂気的に笑う私と絶命したアツコを見遣って──

 

「……お前が、姫を殺したのか?」

「……そうだ。私が殺した」

 

生まれて初めて、殺意が湧いただろう。

 

「殺してやる……!!」

「やってみなよ。君には到底届かない「絶望」を見せてあげるからさ」

 

 

・・・・・

 

 

「……」

「なあ、サオリ。君はそんなザマで()に勝てる気でいたのか?」

「……ぁ、あ。おまえ、は……アツコを」

「アレは最初から、生贄となる存在だった。私の想定よりも、幾つか時期が早かった。止められなくてすまなんだ……」

「……」

 

血だらけ、肉片が辺りに転がるアリウススクワッドの4人を並べる。

 

「私はね、この世界は無意味だと知ったよ。足掻けども足掻けども、私たちが居るのは広大な蟻地獄。抜け出すことは未来永劫叶わないんだ。……だからもう、どうでもいいんだ」

「……」

「アツコを救えなくて、すまなかった。最期だけは、4人でそっちに逝かせてあげよう」

「……なあ、羂索」

「どうした?」

 

……とうに、サオリ以外は絶命している。今頃は先生がミカを慰めている頃だろうか。

 

「──────」

「……ははっ、いい呪いじゃないか」

 

呪霊の術式を使って、私はサオリを殺した。

 

「……くそ」

 

ここは、()の知識で言う所の「プレナパテス」の世界だ。色彩が到来する時期が掴めなかったが、そうか、今か。

 

「……ああ、すまない、すまない……」

 

色彩は、触れたものを狂気に染める(反転させる)。この世界におけるヘイローの反転は死と同義であり、死より恐ろしいこととして黒服から伝えられた。そして、シロコが反転させられるはず。

そこから先、どうなるかはわからない。

 

「……砂狼シロコ。反転した彼女がもしも、何らかの存在の意思をもってこの世界に牙を向くというのならば」

 

「無名の司祭」の存在によって、彼女を彼女ならざる存在として扱うのならば。

 

それによって先生の命が、脅かされるのならば。

 

()(羂索)として、彼女の精神を汚さぬよう──」

 

全てを、消さねばならない。




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