キヴォトスメロンパンモドキ   作:ただねこ

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慈悲の(けん)、救済の(さく)(2)

「夏油さん!!」

「Vanitas Vanitatum et Omnia Vanitas……わかるかい?世界の終わりが確定していることを知る瞬間の虚しさが」

「……」

「わかるかい?全てを尽くして、命を賭してやってきたことが全て無駄になる瞬間の絶望が」

「っ、わかるわけない……私に、夏油さんの心なんてわからないよ」

「そうか……」

 

今なら、アリウス生の気持ちがわかる気がする。

 

「でも、私たちは諦めたくない!」

「絶望が目の前にあろうと、それが最善を尽くさない理由にはならないから……!」

「だから足掻く!たとえ命を投げ捨てても、私たちはアビドスの生徒でありたいから!」

 

……ああ、そうだ。アズサも言っていた。例えそれが虚しいものであろうと、今日日最善を尽くさない理由になどならないと。

彼女たちのこの眩さがあったから、私も私であれたんだろう。平然と銃を向けることが日常のこの世界で、シロコたちの心からの笑顔が好きだった。

それ故に、彼女たちを殺さなければならないことが何よりも辛い。

 

「……私はが持つ術式はね、呪霊操術ではないんだ」

 

容赦など、しても何も産まない。せめて苦しまぬよう。彼女たちが真実を知って逝けるよう、君たちへの餞として。

 

「私の本来の術式は、脳を入れ替えることで身体を転々とするものだ。私はその術式を用いて、1000年を生きた。呪霊操術も、乗り移った身体(夏油傑)の術式の1つでね……勿論、1つの身体に生得術式は1つと決まっている、ホシノは習っただろ?」

「……」

「だが、対策はしてある。そしてこの術式は──”反重力機構(アンチグラビティシステム)”。夏油スグルの1つ前の身体に刻まれていた術式だ」

「ぐっ……!」

 

ホシノたちの目の前で、空気が弾ける音がした。

一斉に銃を構えるも、その銃口はひしゃげて弾が撃てない。

 

「夏油、さん……」

 

容赦は、しない。したくない。

 

「夏油傑はね、呪力量も身体能力も術式も、何もかもが完璧に近かった。恐らく呪霊操術自体が()()()()()()なのだろう。いつの世でも呪霊操術は便利だった」

「……」

「ホシノは特に、私の放った呪霊を幾度となく祓っただろう?どれも準2級以上だから、それなりに苦戦する。……ヒナもネルもツルギも、よく頑張ってくれていた」

「何が、言いたいんですか?」

 

アヤネのその問いに、私はシロコの名を呼ぶ。

 

「……ん」

「君は近い内に「色彩」と接触してしまうだろう。恐怖へと反転したシロコ(アヌビス)は、私たちを此岸から彼岸へ渡す神だ。狂気へと染まり、先生すらも殺すだろう。そして、君にはそれをさせたくない」

「……」

「でも、それは恐らく止められない。世界が私に「シロコ」を殺すなと言うんだ。身体が言うことを効かない」

 

止まるチャンスは、これが最後。元来のシロコの役目は、私と「シロコ」が背負う運命になったのかな。

 

「もしもシロコを反転させたくないのなら、私とシロコを殺しなさい」

「嫌だ」

「……シロコ?」

「夏油さんがそっちに行くのなら、私も行く」

「シロコちゃん!?」

「……ありがとう」

 

チャンスは失った。

 

「さあ、殺し合い(救済)を始めようか」

 

奥空アヤネの鮮血が舞い散る。

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