「っぷう……掃討完了だよ」
「ありがとう、スグルくん!」
「ヘイロー無いのになんなんですかあなた……」
「まあ、自前の身体能力だよ」
「……」
「シロコちゃんもノノミちゃんもありがとね!」
「はい!」
アビドスの人々の仲間になってからもう既に1年ほど経過していた。新しく入学した十六夜ノノミと、ホシノの2人が拾ってきた”砂狼シロコ”。え、シロコって拾われてたの?
……まあ、計5人でこのアビドスの砂嵐や襲撃に備えて、戦闘訓練や見回りなど、およそ学生とは言えないようなことをしている。
「……」
現在、小鳥遊ホシノは2年生。つまり、あと半年弱で原作が開始する。
今から敵組織──『ゲマトリア』に取り入ろうにも、怪しさ満点の大人がアビドスの生徒と仲睦まじく話しているさまを、彼らはとうに見ているだろう。
ゲマトリアは不可能。だが、情報は必須……。どうする。
「夏油さん!ご飯の時間ですよー!」
「ん?ああ、ノノミか。ありがとう。すぐに行こう」
「……最近、夏油さんはぼーっとしてることが多いですけど……何かあったんですか?」
「いいや。……恵まれていると思っただけだよ、私は」
「?」
「ここに来てからというもの、楽しいことばかりさ。今までの私からは、考えられないくらいにね」
「……そうなんですか?」
「ああ。だから少し、1人で物思いに耽っていたんだ。気にしなくてもいい」
実際、ここに来てからは楽しいことがかなり増えた。前世のことを全て覚えているわけじゃないが、少なくとも楽しいものでなかったことは覚えている。
同僚との関わりすらほとんどなかった俺には、この子たちの笑顔が清涼剤だ。
「……そうですか。それなら、早く行きましょう!今日はごちそうですよ!」
「お、なんだい?」
「焼きそばです!!」
「おお、久しぶりの焼きそばじゃないか!行こう行こう!」
「ちょ、速いですって!」
その日は出前で頼んだ焼きそばを食べながら、ユメとシロコの突拍子もない発言の数々にホシノがツッコミを入れる様を、ノノミと笑いながら見ていた。
・・・・・
「……ふむ」
キヴォトスには、神秘が満ちているというわけじゃない。神秘を扱えるのは、生徒だけ。頭の上に浮かぶヘイローがその印だ。ヘイローを持つ生徒は、体も頑丈になり、より強くなる。
だが──
「私がここに来た影響か?なぜ呪力が……」
そう、なぜか呪力が薄ら漂っている。……というよりは、濃淡のある呪力の塊のようなものが、空気中にあふれている。
「調べてみる必要がありそうだけれど、今のアビドスじゃ厳しいだろうね」
私はアビドス所属じゃない。ただアビドスで居候させてもらっているだけの不法侵入者であり、得体の知れないキヴォトスの外からきた”大人”だ。
「……というわけで、ゲヘナに来たのだけれど」
ゲヘナには確か、情報部という他自治区の情報を集める部活があったはずだ。ここならは何かわかるかもしれない。
そう思いながら、銃撃戦を繰り広げる生徒の間を駆け巡る。
「はぁっ!?」
「おいおい、何だ今の!!」
「知るか!アタシたちの邪魔しやがって……!!あいつをやるぞ!」
「……マズいね」
生徒の怒りを買っちゃった。
ノノミのエミュってこんなに難しいの……???