キヴォトスメロンパンモドキ   作:ただねこ

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慈悲の(けん)、救済の(さく)(5)

「シロコ」

「……シッテムの箱(それ)、貴方が持ってるんだ」

「ああ。先生は死んだよ」

「……そう」

 

箱の主は死んだ。

 

「色彩、か」

 

それは重力の塊であるブラックホールのように、そこに在って無いようなもの。

佇むそれは、傍に居るだけで中身が撹拌されそうだ。

 

「まあ、止まってはくれないよね」

「……」

「シロコ、君は止まってくれるかい?」

「……」

 

無言。代わり、白の装束を着た人物──「無名の司祭」が話しかけてくる。

 

「貴様は異端である」

「異端はこの世に存在し得ない筈である」

「理解できぬ」

「理解できぬ」

「理解できぬ」

「神秘とも恐怖とも違う、名もなき神々でもない異端。故に貴様が箱の主であろうとも、不要なのだ」

「貴様は異端であるが故に、この世界から追放してやろう」

 

刹那、視界が飛ぶ。

 

「!?」

「夏油さんっ!!」

 

シロコが放ったであろう声は聞こえなかった。

 

 

・・・・・

 

 

「ぐ……」

 

認識はできる。アビドス砂漠ではあるらしい。

あの一瞬、身体が引っ張られるような押し出されるような……引力と斥力の狭間のような、そんな力が働いた感覚がした。

……どれほど離れた?数十キロ?

わからない。とりあえずいまもたれかかっているものから身体を起こ──

 

「……は?」

 

【起きたか、呪いの申し子】

 

……ビナー?

 

 

・・・・・

 

 

【偶然だったな、羂索よ】

 

「喋れるのか!?」

 

【否。「シッテムの箱」を通じて、お前に語りかけている】

 

ああ、そういう……。てか預言者ってそんなことできるの?

 

【わからぬ。恐らく、我が特別なのだろうな。我は他の預言者と違い、数十年前からアビドス砂漠にて活動を開始していた】

 

「……君の特異性が、私を呼んだのか?」

 

【それもあるだろうが……羂索、お前の身体に刻まれている呪いだろう】

 

「呪い?」

 

【……先程からずっと、血が流れている】

 

「あ、ほんとだ」

 

左腕と右肘から先、右の脇腹が消し飛ばされている。ここにふっとばされる時に千切れたか?

 

【……そうだな、ここは1つ助けてやる】

 

「……どういうことだ」

 

【あの時……お前と戦った時に。領域と”うずまき”を食らった】

 

「そう、だね。それとこの行動にどんな関係が?」

 

ビナー曰く身体が消し飛ばされ頭部のみになった時、視界が暗くなったそうだ。

そしてそこに現れたのは、自身を蝕む私の呪力で満たされた空間と、そこで朧げながら視えた未来。

砕けた世界の残骸の一欠片。その上で、「無名の司祭」が他の預言者と本体……デカグラマトンを「失敗した」とかなんとか言って粉々にしていたらしい。

簡潔に言えば、逆恨み。

 

【お前は色彩と司祭に対抗しようとしている。……我もあやつが憎いのでな。手助けをしよう】

 

「助かるよ、ビナー。……で、何をすればいい?」

 

【我のコアを、呪霊操術で取り込んでもらおう】

 

……は?

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