キヴォトスメロンパンモドキ   作:ただねこ

33 / 61
慈悲の(けん)、救済の(さく)(6)

「いやいやいや、どういうことだい!?コア取り込んだら死ぬだろう君!!」

 

【それでいい。あの司祭の思い通りにいかないピースが、1つでも生まれてくれるのならば】

 

「……覚悟決まってるね。クックック」

 

【我の意識はコアにある。早くせねば死んでしまうぞ】

 

「はいはい。……ていうか、呪霊操術で取り込めるの?」

 

【お前の領域と極ノ番を食らい蝕まれた結果、今は神秘と呪いが隣り合っているような状態だ。機械でもあるが、呪霊にも近い。コアを”うずまき”で取り込めば、呪力に侵された神秘が毒となり牙を剥くだろう。だが、それしかない】

 

「ふーん。……それじゃ、やりますか」

 

呪霊操術を発動し、ビナーのコアを呪霊玉にする。

 

「呪霊操術、極ノ番。……”うずまき”」

 

私の持つ全ての呪霊と、ビナーが一体化した”うずまき”を、呪力を振り絞り小さくまとめる。

 

「……ッ!!」

 

その玉を飲み下す。瞬間、形容し難い吐き気が、痛みが、苦痛が降り注ぐ。

 

「シッテムの箱、が……!?」

 

先程、私が飛ばされてきたであろう方向に、シッテムの箱と大人のカードが飛んでいく。

 

【……取り込めたか】

 

「ビナー?シッテムの箱は私の手元から失くなったけど……ああ、融合していってるから聴こえるのか」

 

【そう、だな。シッテムの箱は今、先生とやらが持っている】

 

な……!?

 

「生きていたのか!!」

 

【殺さなかった自分を恨め。早く行くぞ】

 

先程欠損していた部位や身体の節々には、ビナーの装甲と同じ物質が私の身体と溶け合っていた。

 

「それじゃあ行こうか」

 

吐き気が止まらないほどの毒とは裏腹に、驚くほど軽い足で砂漠を駆け抜ける。ほんの6km程度しか離れていなかったらしく、比較的すぐに着いた。

 

それでも、遅かったらしい。

 

 

・・・・・

 

 

「「色彩」が、”元”箱の主と接触した」

「この事態は想定していない……色彩があの者の「苦しみ」に反応したのか、それとも──」

「不可能だ。あの者は「崇高」、「神秘」、「恐怖」のいずれも有していない。「色彩」が無価値な存在に接触する理由などない」

「つまり──何を意味する?」

「あの者が、死の神の代わりに「色彩の嚮導者」になるというのか?」

「理解できぬ」

「理解できぬ」

「理解できぬ」

「理解できぬ──だが、あの「箱」を我々が所有できるのなら、理解する必要もない」

「1度異端の手に渡ったが、心配は要らない」

「お前の望み通り、「色彩の嚮導者」の役割を与えよう」

「お前に「偽りの先生(プレナパテス)」の名を与える」

「「色彩の嚮導者」は、我々無名の司祭の意思を代弁するのみ。己の意思を持てると思うな」

「「箱」の力は、我々が預かる」

「お前はこの選択を……未来永劫、後悔するだろう──!!」

 

 

・・・・・

 

 

「……世界を渡るには?」

 

【あの「色彩」の中に入れ。アレは意思の介在しないただの現象。故に、撹拌される。我とお前が溶け合い、最終的に我の意思だけが消えるだろう】

 

「……そうか。ありがとう、ビナー」

 

【礼には及ばん。死の神と嚮導者……そして無名の司祭が色彩へ入れば、二度と入口は開かないだろう。早く!!】

 

一矢報いんと、走る。走る。走る。

ビナーと融合しかけているこの身体は、よく動く。

色彩が縮み、扉が閉まろうとしたその時。

 

ほんの一瞬、指先が掠った。

 

意識が乱れる。

 

「……さあ、出発だ。行こう、奇跡の世界(原作)へ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。