百合園セイアが居た。1人で行動していたのを見るに、どうやらここはトリニティらしい。
「……さて、話を聞かせてもらおう。君の名前は何だい?」
……名前。別にここで本名を名乗ってもいい。だが、シロコと先生との再会が控えている。色彩の件もあるが……。
「そうだね……夏油スグルという名で活動している」
「活動?本名ではないのかい?」
「真名は忘れた。この身体も借り物だしね」
「……教えてくれ」
爽やかかつ重みのあるセイアの声に気圧され、私の選択肢は身に起こった事件を話すことしかなかった。
「……なるほど。クズノハの言っていたこととだいぶ重なるな」
「クズノハ?」
「百鬼夜行の預言者と名乗っていた。自身は生徒ではないということも」
「ふぅん……で、私はとある機械の力を借りて、色彩と接触。この世界に来ていたら女性に変わっていたんだよ」
「……待て、元は男性だったのか?」
「あー……まあ女性の身体にも入ったことはあるよ。戦争があった時は、よく死体を漁っていたね」
「……少し、時間をくれ。情報量が多い」
「構わないよ」
流石に、「違う世界線のキヴォトスで、この世界に存在しない霊的現象を相手にして、色彩が現れたから生徒たちを殺して回っていました」なんてことを情報として出されたら、流石の私でも混乱する。
「この世界の先生に、一度会わせてくれ。それか、どこかで銃を貰いたい」
「それもそうだね。だが……すまない。ティーパーティーの招集がかかってしまった」
「いってらっしゃい。私はそれなりに戦える。心配はいらないよ」
「……ここから出るなよ」
「過保護だね、お嬢さん」
・・・・・
「ただいま」
「おかえり、セイア」
「……本当に何もしていないな?」
「するわけないだろ」
着ていた袈裟は、破けずにこちらに持ってこれた。もうこの服でないと違和感が凄まじい。
「……羂索」
結局、流れでつい本名を言ってしまった。過ぎたことはしょうがないので、2人きりの時だけ呼んでほしいと言っておいた。
「ああ……来たね」
空が、赤く染まる。これを見るのは、2度目。セイアは何度目だろうか。
とりあえず、早めに先生の場所に向かわないと。
「……羂索、君は先生から見たら怪しさ満点の要注意人物だ。それでも行くのか?」
「勿論。キヴォトス未曾有の災害だ。先生にも伝えてるのなら、連邦生徒会にも予言のことは知れている筈。……先生の身に何かあったらまずい。すぐに行ってくるよ」
「わかった。……死ぬなよ」
「誰に言ってると思ってるんだ、セイア。私は1000年生きた呪術師だよ」
「ふふっ……幸運を祈る」
・・・・・
「……ヴァルキューレのヘリ」
にしては、飛ぶ方角がおかしいな。シャーレとは違うほうに飛んでいる。……ヴァルキューレ警察学校でもない。
「ふむ……ついていけるか?」
なけなしだが、金は持っている。ハンドガン1つくらいなら買えるだろう。
「追跡開始だ」
神秘を用いて、帳を「纏う」。神秘はミメシスでしか観測できないと黒服(別世界)が言っていた。
帳は認識を阻害する結界。呪霊を祓う際には帳を張り、民間人に呪霊の存在を悟らせないために運用されてきた。
「……雲の中は、「外」の飛行機の航路のようなものでもない限り通ることはない」
雲に入られたとしても、この身体は目が良い。方角の予測ができるから、追跡は比較的楽だ。
「……あっちだね」
着陸態勢に入っている。場所はもうわかった。後は走るだけ。
・・・・・
とある監獄。先生が収監されている監獄に、どうやら襲撃があったようだ。
「撃て、撃てー!」
「くっ……!」
襲撃をかけたのは、尾刃カンナ。ヴァルキューレの公安局長である。
「先生……!!」
基地へは、まだ遠い。
「っ!?」
「今だ!」
銃を弾かれた。まずい。盾もない。
目を閉じる。
「くそっ!」
前方から放たれた弾丸は、彼女に当たることはなかった。
「……?」
「やあ、お嬢さん。助太刀しようか」
「……!?」
「何者だ!」
「救いを齎す者さ、烏合よ」
羂索である。
・・・・・
「……すぐ終わってしまった……やはり弱いね」
安物のハンドガンを携えたとしても、千年の年の功が形作る経験と、神の混ざった身体の硬さに、雑兵が勝てるはずもないのだ。
「えっと、助けてくれてありがとうございます。ヴァルキューレ警察学校の公安局長、尾刃カンナです」
「夏油だ。この空の件で先生を探しに来ていたんだが、少々ヴァルキューレのヘリの航路に違和感があってね。追跡してきた」
「わかりました。突入しましょう」
「了解」
「上だ!」
「くそっ、何故バレた……!?」
「ぐあっ!」
……やはり、弱い。
「先生、ご無事ですか?」
”……カンナ?”
「はい、カンナです。突破には苦労しましたが……助っ人の手を借りて、なんとか来れました。早く出ましょう」
”ありがとう、カンナ。でも傷が酷いよ”
「大丈夫ですよ、先生。ここを出て少しした場所で落ち合う予定なので」
”……?”
・・・・・
「おや、早かったね」
「貴女のおかげで、スムーズに来れました本当に感謝してもし足りない」
「今はいいだろう。……生活安全局は?」
「ちょうど合流しますよ」
「先生!!」
”……えっと、君は?”
「私は夏油。今は貴方を連邦生徒会に早く連れて行かなければならない。乗って」
生活安全局が乗ってきた車に、先生とヴァルキューレの3人を乗せる。
「カンナは他の2人に手当てを頼む。飛ばすよ!」
夏油は、思いっきりアクセルを踏んだ。
あいにく私には絵心がありません。ばにたす。誰か夏油ちゃん描いてくださいお願いします(哀れ)。