反転術式。色彩に吹っ飛ばされた時の欠損がかなり危なかったのか、色彩による界間移動が臨死判定を食らったのかわからないが、いつのまにか使えるようになっていた。
術式反転を何度も用いているから慣れている。精々30秒で事足りるだろう。
「はぁ、はぁ……!」
「流石はビナーだね……数十年前から活動し始め、そして討伐じゃなく撃退しか出来なかった預言者。それを色彩で強化してるんだから、強いに決まってるよ」
「ホシノ先輩、ミサイル来ます!!」
「っと、危ない危ない……時間を稼ごう皆!夏油ちゃんの戦線復帰を待つ!」
……はは、信頼してるのかい?いや、私じゃなきゃ倒せないと確信しているのか。
攻撃力は確かに足りるが、決定打がない。ビナーが色彩によって強固になっているからだろう。
……そして、私の存在も少なからず起因しているだろうから。
今の私は、ビナーだ。ビナーと融合した、新しい状態。
デカグラマトン、その預言者が何を意味するのかはわからないが、少なくともキヴォトスで過去のものにしていい事柄ではないのは確かだ。
……ビナー、お前は今何を思う?
位相の異なる自分を、色彩という「未知」に侵された自分を見て、何を感じる?
まあ、わかるわけもないか。
結局は機械。人の心など知る由もない。
「さて、治ったね」
……色彩に綴じられた預言者。1度目の生でブルーアーカイブをやっていた友人からは、「ビナーはかっこいいけどよくわからない」と言い聞かされていた……ような。
そのよくわからないが重要だ。ビナーのみか、それとも他の預言者も設定が開示されていないのか。
取り敢えずビナーのみと仮定する。……通用するか?色彩に綴じられたビナーに”虚式”が。
「まずは、やってみようか」
指向性の補助と、呪詞の詠唱。
「夏油さん!」
「策があるんですね!?」
アヤネの通信と、ノノミの声。
「……勿論」
「──信じますから!!」
……ずるいなあ。
そう言われたら、やらないわけにはいかないじゃないか。
「”捻れ”、”涅槃”、”無作為な三毒”。術式順転、”乱奔重”」
周りの情報が、空気のように処理される。
「”捻れ”、”五戒”、”裏返りの因果”。術式反転、”重星”」
今なら、何か起こる。そんな確信がある。
ホシノの顔がよく見える。ただただ此方を見据えるだけの、その目線が訴えてくる。
ここは信じる、と。
「”夜雷”、”無明”、”虎と龍”、”相反する証明”」
重力。反転しても、同じ重力。変わらないのに反転する、その特異な性質。それこそ、虚ろに相応しい。
これは2つの性質が合わさった、未知なる力の塊を打ち出すモノ。
「虚式──”
虚無の奔流が、綴じられた蛇へと抉り襲う。
「……あれ、何かしら?」
「おじさんもわからないよ。でも……あれは何か、ヤバい。おじさんの勘がそう言ってる」
再び、ビナーの胴が弾けた。
ああああああああああ推しが出ないよおおおおおおおおおお