「先生!!」
リンの言葉で、我に返る。……彼が聞いた、あの言葉。聞き間違いじゃなければ──。
「……え」
モモカが、無意識に音を漏らした。
「また、キヴォトス全域で超高濃度エネルギー体が観測されてるんだけど……」
「そ、そんな……また、例のタワーが出現するということですよね……?」
「今までやってきたこと、全部水の泡……ってこと?」
”っ……そんな……”
「いえ、以前とは少し様相が違います」
「あー、うん。エネルギーの反応がある場所は違うけどさ」
「アユム。前回この現象を確認してから何時間後にサンクトゥムが出現したか覚えていますか?」
「ええと……24時間ほど、です」
「ってことは、私たちに残された時間はそれくらいか……」
「いえ、もっと短いかもしれません。エネルギーの値が、以前より38%ほど高くなっています」
「リン先輩、覚えてたの……?やっば」
「あと1日、もしくはもっと短時間で……」
”……ごめん皆。私のせいだ。私は事前にこうなることを知っていて、準備ができていなかったから”
「違います、先生。あなたのせいではありません!」
”でも。……シロコも、キヴォトスのことも、敵の忠告も。全て、知っていたというのに……”
「それは違います。先生は最善を尽くしてくれました。根拠のない予言だとしても、私たちを頼った。こちらで打てる策は、全て尽くしています」
”リンちゃん……”
「それ以外は、私の責任です。……私は、連邦生徒会長じゃないから……」
「それは違うよ!!」
「っ、モモカ……?」
声を荒げる。
「リン先輩だって、最善を尽くした!みんなそうだよ!それでもこの自体が予測できなかったんだ……仕方がないこと!」
「今は、この事態への対処を考えましょう、先輩!」
連邦生徒会長の失踪後、それらを支えてきたのはリンだ。そこに、非も何もあるまい。
「……っ、ありがとうございます……」
『悪い、少し報告がある』
「っ、夏油さん……!?」
『砂狼シロコと接触した。話の内容は──』
キヴォトスの終焉は、私が齎す。
”……そんなこと、させない”
1人の、ヘイローを持たぬ人間として。1人の大人として。1人の先生として。
”シロコは、連れ戻す”
『それでこそ、先生だ。……あー、そっちの誰か。キヴォトス上空を調べてくれないかい?エネルギーの元を辿ろう』
「うん、ちょっと待ってて。…………見つけた。全部のエネルギーが1つの場所に繋がってる」
『……場所は?』
「キヴォトス上空、75,000m。そこに、今までの虚妄のサンクトゥムよりも密度の高いエネルギーがある」
”そこに、シロコがいるのかな”
『……いるだろ、きっと。君の身にも何かしらの事が起こったはずだ』
「そうです!先生、先程ぼーっとしていましたけど……何かあったんですか?」
”うん。……色彩の嚮導者、「プレナパテス」と会ったんだ。場所は……よく覚えてない。なんだか凄く曖昧な場所だった”
プレナパテス。そして、シッテムの箱。
彼にとって、予想外のことが混雑しすぎている。いくら多忙な業務で情報処理に慣れていても、ここまで緊急に急かされると少し厳しい。
『……ならば、そこに行かなければね』
「でも、方法なんて……」
『……先生。君に少し依頼を頼みたい』
”え?”
『上空に浮かぶアレは箱舟。要塞だ』
「箱舟、ですか?」
『ああ。名を「アトラ・ハシースの箱舟」というのだけど……キヴォトスのオーパーツだ。そしてその周りを覆う黒い膜は、恐らく一種のバリアのようなものだろうね。探知が利かない』
夏油は語る。その情報を何故知っているのか、今は問うべきではない。ただ、今は聞くことに徹する。
『そして、それに対処できるモノが──アビドスにある』
”……アビ、ドス?”