ゲヘナ学園は、「自由と混沌」を校風として掲げているなんともまあ
そんなゲヘナで生まれる呪霊とは……?
「……っ、数が多すぎる……!!」
「ふむ、銃で対処できるのか……これは興味深いね」
「呑気に実験してる場合じゃないのよ!?早く呪霊とやらを倒しなさい!」
「祓っているだろう、君の目は節穴かい?」
「〜〜っ、この……!」
そう。まさに多種多様で、低級とはいえ数も多く、それなりに厄介な呪霊だ。
ヒナとは少し離れたところの呪霊を対処しつつ、適宜小石などを投げてあっちの手助けをする。
「……おや?」
……どうやら、”呪霊操術が使える”らしい。
──なるほど、手持ちの呪霊がいなかったから、調伏と取り込む感覚が掴めなかったのか。反重力機構で、術式を使えるという先入観にも引っ張られていたみたいだね。
「ふう……こっちはもう大丈夫ね」
「お疲れ様。……どうやら、君たち生徒にも呪霊が視えるようだ」
「…普通は見えないの?」
「ああ。一般人は大抵、死に直面した場面くらいしか視えないものだから」
「ふうん……」
「例外は勿論ある。呪力を意識的に使える人物だ」
「意識的にって……あ、でも貴方、さっき”祓う”って……明らかに知ってる側のそれだった」
「ああ。私たちは呪術を使い、呪霊を祓う……そうやって、人知れず世の平穏を守る呪術師さ」
「呪術師……今まで呪霊とやらが発生しなかったのは、呪力そのものが存在してなかったから、かしら……?」
「それは私にもわからないね。こちらで調べてみるよ」
「ええ、風紀委員会でも調べてみるわ……これ、私のモモトーク。何かあったら連絡して」
「ああ、助かるよ」
空崎ヒナには缶コーヒーを奢って、その日は解散になった。
・・・・・
「お、今日はサンマがかなり安いね……」
「お、買ってくかい?ウチはいいの仕入れてるよ!」
「ふふ、5尾ほど買っていこうかな」
「まいどありー!!」
……キヴォトスの治安の悪さやゲヘナの混沌とした雰囲気に少し倒錯しかけていたが、キヴォトスにもこういった日常が存在している。
先程の魚屋の店主だったり、八百屋のバイトをしている百鬼夜行の生徒だったり、ここにも日常と非日常が交錯しているものなのだ。
「懐かしいな」
無意識にそんな言葉を呟き、アビドスへの帰路を辿る。
「邪魔だ」
時折寄り道して呪霊を祓い、取り込みつつ。時に呪霊を呼び出して、使役する感覚を掴んだり。
……寄り道して”邪魔”は、流石に理不尽だったかな?
「ところで」
先程から尾行している者がいるな。足音から鑑みて……これは間違いなく大人だ。間隔も開いていて音量も静かだ、間違いない。
「……何者だい?真っ黒な君は」
「クックック……漸く貴方と相見えることが出来ましたよ、夏油スグルさん」
「此方の問いに答えてもらおうか」
「おっと、これは失礼しました……私のことは黒服とお呼びください」
黒服。ブルーアーカイブ本編にて、先生や生徒と対峙する組織”ゲマトリア”の1人ということくらいしか俺は知らないが……十分だろう。
「黒服、ねえ……此方側のことは、それなりに調べ上げてるんだろ?なら話は早い……君に付いていこうか」
「おや、潔いですねぇ。暁のホルスとは大違いです。まあ、彼女も生徒……まだ子供ですから、当然のことではありますが」
……大人。それもとびっきり怪しい大人が2名。そんな2人が集まってすることなど決まっている。
「夏油スグルさん。貴方にとても興味深いお話を持って参りました。是非とも、私と少し話をしていただけませんか?」
「……」
暁のホルスは、確かホシノのことだったはずだ。神秘という、キヴォトスの生徒が持つエネルギー……そして、私の持つ呪力。
「フフ……お聞かせ願おうか、黒服」
「ええ。それではこちらに……おっと」
「?」
なんだ?まだ何か隠していることが──
「その前に、その荷物をアビドスへ持って帰ってはどうでしょう?予定はこちらで後日にずらせますので」
「……あ、そうだね。じゃあまた明日、ここに集合で」
「クックック……それでは、良い夜を」