あと何話で終わるんでしょうね。50話とかかかりそうで不安です。プロットを練れ()
「ふむ」
今のところ、ウトナピシュティムの本船は”一応”予定通りの挙動をしている。先生は乗り物酔いが来ているそうだ。
「……眺望は良好。……うん、演算もきちんとできているようだ」
現在、「ウトナピシュティムの本船」は、箱舟と同じ確率的な存在となっている。存在可能な時空に、無数の「私」が存在している、ということだ。それはつまり、可能性の存在。存在一つ一つが、別の挙動を可能にする。……まあ、思考も動作も全く一緒ではある。それぞれの世界線で結果が変わることはないのだが……いや、色彩が存在するこの世界がイレギュラーか?そもそも、他の世界は滅んでいる可能性が高いな。……最後に選ばれた世界、ということもあり得る。まあ、それは置いておこう。
「これより「アトラ・ハシースの箱舟」に向かって加速します!」
「尋常じゃない速度が出るはず!だからしっかり捕まってね!」
「最大出力……加速します!!」
・・・・・
「……?」
先生が倒れた?気を失っているだけか……息も脈もある。少し寝かせて──
「っ!?」
「なっ、何!?」
「多次元解釈システムにエラー発生!箱舟と状態が一致しません!」
「嘘!?システムの故障!?」
「変わったのは「箱舟」の方よ!私たちが認知している多次元ではなく、別の軸を作ったの!!」
「なるほど……二次元から三次元を知覚できないのと同じように、観測できない次元へと退避したのか」
「そんな……」
「多次元解析を凌駕する計算など、造作もない……ということですか」
「つまり──今までの分析は……全て、無駄であったと?」
……いや。
「畢竟、あれは1つの”概念”ということだ。ならば、同じ「箱舟」ならば干渉が行える。……私が聞いた情報によれば……天童アリスは「無もなき神々の王女」であり、箱舟と同じモノを扱えると言うが」
「っ、アリスはミレニアムの生徒よ!!そんな、兵器みたいな──」
「だとしても、実践の他に手立てはない。このまま放っておけば、待っているのは死そのものだ。……ユウカ。君が選ぶのは一人の意思か?はたまた世界の命運か?」
「……っ、でも……!」
……躊躇う気持ちもわかる。AL-1Sは既に”天童アリス”であり、キヴォトスの生徒。日々を共にしたゲーム開発部や、編入に携わったユウカ。そして先生は反対の声を上げている。
「……やあ、アリス」
「はじめま……いえ、ケイから聞いています。この状況は、「無もなき神々の王女」であるアリスのちからが必要なんですよね」
「そのとおりだ。……まずは、言いたいことを言ってくれ」
「はい。……モモイ、ミドリ、ユズ。そしてユウカ、ヒマリ先輩、リオ会長。……先生。先生は、アリスのなりたい存在はアリスが決めていい、と言いました。アリスは「無もなき神々の王女」で、「ゲーム開発部」のメンバーで……「ミレニアムの生徒」で、「シャーレの生徒」です。アリスは……「魔王」で「勇者」です。アリスは、アリスが望んでいる「アリス」です」
……彼女は、兵器として。兵器足りうる器として創造された。にもかかわらず、ゲーム開発部と出会い、先生と心を通わし、自らの辿る「魔王」の運命を否定し、障害を跳ね除けるべく、「仲間」とともに「勇者」として立ち上がった。
「だから、「無もなき神々の王女」として……「ケイ」にお願いをします」
アリスの裡で、ケイが狼狽する。そんな情動が、共鳴し流れ込んでくる。
「アリスの中にある「アトラ・ハシースの箱舟」で……今の問題を解決できるなら。それで世界を救えるのなら。「アトラ・ハシースの箱舟」は、世界を滅亡させる兵器ではなく、勇者の扱う武器になれます」
「……アリス、それは……」
自らに待つ未来に突き進むアリスを、リオが制する。だが、止まらない。
「それで世界を救えるのなら、アリスはそれを望みます。そうすれば、ヒマリ先輩はリオ会長を恨まなくて良くなります。そしてリオ先輩は、自分自身を恨まなくて良くて、隠れる必要もなくなります」
「私、自身を……?」
「……アリス」
「それがアリスの──「勇者」の、使命ですから」
そうして彼女は言い切った。1人の生徒として。勇者として、世界を救うと。
そうして、目を閉じた。ケイと話をしているのだろう。
「……はぁ、悪者は私ではない、ということか。全く、役者の皮を被ったというのに」
「ちょっと、そんな言い方──」
「──起動開始」
その一言で、空気は切り裂かれる。
「……アリ、ス?」
「いや、ケイだろう。……こうして目を合わせるのは2度目だね。覚悟は決まったかい?」
「……コードネーム「AL-1S」起動完了。プロトコルATRAHASISを実行します」
そう、言外に宣言した。