「会うのは2度目だね。……結局、君の役割は放棄されることになるだろうけど、いいのかい?」
「……もう、決まったことですので」
「そうか。それじゃ、さっさとアレぶっ壊してよ。ここでうだうだ話してるのも時間の無駄だし。……あ、私もそっちで見ていいかい?」
「わあ……」
「ご、合理的というか、効率的というか……」
「世界を救うという偉業を成すのなら、思考は0.1秒でも早くしたほうがいいだろう」
「……たしかに」
話などいらない。ここに居るという事実。ここに在るという事実。それだけで、天童アリスの意思は確立されている。調月リオがそれを理解しているかが疑問ではあるが。
「……では。現時刻をもって、プロトコルATRAHASIS稼働。コード名「アトラ・ハシースの箱舟」起動プロセスを開始します」
私には、機械やプログラミングのことは明星ヒマリ程理解していない。……それも当然ではあるのだが。私は何方かといえば、秀才の側だろう。万年あっても、天才に届くことはない。そしてその天才をもってしても理解の及ばない領域があるという存在が、無もなき神々の王女だろう。少なくとも、生徒ではなく兵器として。
「王女は鍵を手に入れ、箱舟は用意された」
「無もなき神々の王女、AL-1Sが承認します──ここに、新たな
……なるほど。あの「光の剣」が、天童アリスの勇気を基盤として構築された「武器」なのか。
「ターゲット確認。出力臨界点突破……!魔力充填100%!!行きます!!」
「悪を打ち砕く正義の一撃……!!」
「光よ!!!!」
……光の剣から放たれた超高密度のエネルギー。それが箱舟へと一直線に向かう。それを阻むのは、多次元バリア。如何なる干渉を受け付けない、世界を上から見下ろす目のような。
だが──その程度の壁に阻まれるほど、勇者というものは甘くはない。
「はは……」
多次元バリアは破壊され、状態の共存を維持できずに崩壊。そのまま箱舟の外殻が露わになる……直前に、アリスが倒れる。撃った場所から落ちると洒落にならないので、抱き寄せゲートを閉じておく。すぐに衝撃も来るはずなので、アリスをかばうように備えておこう。
『約5秒後、こちらに衝撃波が来ます!みなさん衝撃に備えてください!!』
『多次元バリアの「状態の共存」が消失!最終機能の停止を確認したよ!』
『……ウトナピシュティム、最大出力で加速します!!』
え、今?嘘でしょ?
ちょっと待ってまだ神秘での身体強化まだ間に合ってな──痛っっっっった!!!!
「……七神リン、後で殴るか」
アリスの保護は間に合っていたけど、私の身体はアリスほど頑丈じゃないんだよ。お陰で右腕がひしゃげたじゃないか。反転で戻しておこ……ゲーム開発部に見られなくてよかったよ、本当に。
・・・・・
「ようやく、内部に侵入できました……」
「全く、アリスの保護をした私を少しは労ってくれないかい?勿論ことが終わった後に」
「……すみません」
アリスをゲーム開発部に任せ、オペレーターに少しだけ文句を──
「……ふむ」
「どうしたの?」
「感傷に浸れる時間は今くらいだろうね。今くらいは安堵しておきな」
「なんであなたはそう上から目線なんですか……!?」
悪いね、アコ。正直君の扱いに関してはこっちのほうが面白……じゃなくて扱いやすい。
「……対策委員会」
「はい、どうかしましたか?」
「準備だけしておくように。すぐに敵襲される」
「うん、わかった」
……それと、先生。
”どうしたの?”
「気をつけなよ。アヌビスは確かにシロコだけどさ、それでも、先生が邪魔になることさえあるからね」
”覚悟はとっくに出来てるよ”
「じゃあ、私が警護をするよ」
”ありがとう”
あとは、ほんの数秒の安堵と弛緩を眺めるだけだった。