「クックック……お早うございます、夏油スグルさん」
「細かい時刻までは伝えてなかったんだけどね……フフ、ストーカーは嫌われるよ?」
「いえいえ、私がこの時間に出向いたら、偶然あなたがいた、それだけのことですから……」
「……そうかい。じゃあ、行こうか」
黒服は、というよりゲマトリアの面々は、まさに異形と言ったほうが良い容姿をしているが……全員、何かとそれが様になる。
姿勢かな、口調かな?やはり、そのキャラクター性こそが、彼らの悪役としての魅力を数段引き上げているのは……言うまでもない。
「こちらです」
小鳥遊ホシノがいつも黒服と会っていた、某所オフィスビルだ。
「さて……話しましょうか。我々ゲマトリアの持つ目的についてを……」
・・・・・
「まず、私たちはあなたと同じ、キヴォトスの外からきた存在……まあ、貴方のいた領域とはまた異なります」
「……」
「とりあえず、私たちのことはゲマトリアとお呼びください。これが丁度いい名ですから」
「わかった」
名前や多少の目的は知っている……が、ここは拝聴に徹したほうがいいだろう。
「
「……それで?」
「ええ、ええ……結論を言いましょうか。我々ゲマトリアと……協力をしませんか?」
「断る」
「随分と食い気味ですね?」
「目的を聞いていないからね」
「そうでしたそうでした……」
黒服が俺に近づいてきた目的は、キヴォトス人の持つ”神秘”、それが反転した”恐怖”と呼ぶ力と、私の持つ”呪力”という力の差異……それらのデータを取りたいのだという。
「……そうだね。そのミメシスとやらで神秘を観測できるのなら……こいつも見えるんじゃないかい?」
「それは……!」
黒服に呪霊操術で取り込んだ呪霊を見せると、驚愕したような声色でそれを見つめる。一歩も動けず、冷や汗を頬に伝わせ、固唾を飲む。
「これは呪霊。呪力…負の感情が澱のように重なってできた、異形の霊的現象。私はそれを祓うことを生業としていた人さ……そうだね、夏油スグルという名は似合わないな」
どうか私のことは、”
・・・・・
「ふむ……その縛りとやらを結べば、協力をしてもいいと?」
「ああ。これは一種の契約……自分自身にかける縛りには、あまり強制力もない。なんなら、呪術の強化にも使われるほどにはありきたりなものさ。でも他者間の縛りは違う。誓約であり、破ればその身に不幸が堕ちる……そういうものなんだよ」
「ほう……では、それを結んでしまえば問題はないと?」
「ああ……それでは、縛りの内容を決めようか」
一、黒服と羂索は、この縛りを結んでいる間、互いへの攻撃行為、又はそれに準ずる意思を見せることを禁ずる。
一、この縛りを結んでいる間、黒服はキヴォトスの技術力や情報の提供、羂索は呪術の情報の提供や呪霊の対処をすること。
一、この縛りは、双方の同意を以て破棄することが出来る。
一、ゲマトリアのメンバーに詳細を聞かれた場合、縛りを結んだという事実のみを開示することとする。
「……こんなところでしょうか?」
「これは、私とゲマトリアじゃない。私と黒服の間に結ばれたものだ。だから君の仲間が私に危害を加えることは可能だし、逆も然りだからね」
「ええ、承知しています。……概要というのは、何処まででしょうか?」
「
「了解しました。……それで、契約はどのように?」
「それは……こどもでも知ってる、指切りげんまんだよ」
「クックック……!だいぶ古典的なものですねえ。いえ、それが呪術というものなのでしょうけれども……いやはや、実に興味深い」
「私も、神秘というものは興味があるからね。……反転した恐怖とやらも面白そうだ」
「……それについては、また今度お教えすることにしましょう。契約、ありがとうございました」
俺と黒服は、お互いの右手小指を引っ掛ける。
「……また会おう」
「ええ、またお会いしましょう……羂索さん」