「はじめまして、シャーレの先生。私は夏油。1年半ほど前から、ここアビドスにいさせてもらってる不審者さ」
”ふ、不審者……?”
「こんなところに大人がいるのも不思議だろう?」
”確かに”
「あ、夏油さん!先生!」
戸惑う先生とにやりと笑う夏油。その2人の間に割り込んできたのはセリカだった。
”セリカ……!?”
「やあ、セリカ。先程は不在ですまなかった。……先生の手腕はどうだった?」
「凄くやりやすかった!」
「そうか……彼も嬉しがっているよ」
”あ、あはは……”
「皆が2人を呼んでるんです。挨拶がしたいって」
「ああ、まだ自己紹介をしていなかったね。セリカ、案内頼むよ」
「はい!」
……先生は、限りなくお人好しだ。ヘイローの無い一般人は、銃弾1つで死に至る。それでも生徒を守りたいという思いがあるからこそ、生徒はみな、先生を全力で信頼し、守り通し、日常を謳歌する。
斯く言う私も、先生の人柄には惹かれた1人だと自負している。
「さて、行こうか」
”うん、行こう。……えっと、夏油さん?”
「一応言っておくけど、私は28だよ」
”年上!?”
・・・・・
「少し遅れちゃいましたけど、改めてご挨拶します、先生。私は、アビドス対策委員会で書記とオペレーターを担当している、1年のアヤネです。手紙を読んでくれて、ありがとうございました」
「私は同じ1年の黒見セリカ。よろしく、先生」
「2年の砂狼シロコ。こっちが同じ2年の十六夜ノノミ」
「よろしくお願いします、先生!」
「で、おじさんが委員長の小鳥遊ホシノだよ。よろしくね」
”お、おじさん?”
「ホシノは数年前から雰囲気が変わったね。髪も伸びた」
「あ、それは言わないって言ったじゃーん」
「すまない。つい」
「はぁ……で、この人はおじさんが1年の時に出会った、夏油スグルさん。凄く強いんだよ〜」
「私は後方支援には疎くてね。時折直に叩くこともある」
”叩くって、言い方……”
実際、俺は指揮能力があまりない。先生という天才ならまだしも、オペレーターのアヤネがいるんだ、十分学校の防衛が出来ている。
「アビドスだけじゃなく、他の自治区にもよく行くんだ。その分、あまり会うことは無い……と、思ってはいたんだけれどね」
「?」
”?”
「フフ、その話は後にしておこうか」
その後はホシノからの提案でカタカタヘルメット団の前哨基地を襲撃することになり、武装を整えて出発した。
・・・・・
『敵の退却を確認しました!並びに、カタカタヘルメット団の補給所、アジト弾薬庫の破壊も確認しました!』
「ん、これで暫くは大人しくなるはず」
「ふいー、疲れたー…」
「ささ、帰りましょ!」
”みんなお疲れ様。夏油さんも”
「敬称は付けなくてもいいのだけれど」
「先生より歳上だもんね。……ほら、また怪我してる。治すよ」
私はまだ反転術式が使えない。……一刻も早く、黒閃を経験しなければいけないというのに……そもそも、生徒のみんなが少し過保護なんだ。思うような行動をさせてくれない。
「ん、おしまい。無茶はしないでほしいけど……言っても無駄か」
「よくわかったじゃないかシロコ。百点をあげよう」
「いらない」
・・・・・
”そういえば夏油さん、戦闘前に言ってた話って、何だい?”
「ああ、それかい?そろそろ連邦生徒会から連絡も来ている頃合いだし、端末を確認してみたらどうだい?」
”え?ああ、うん……えっ!?”
先生がタブレット端末……「シッテムの箱」を確認する。しばらく操作していると、驚嘆とともに目を見開いた。
”げ、夏油スグルをシャーレに派遣……!?”
「え、夏油さんシャーレに行っちゃうの!?」
「夏油さんには世話になってたんだけどなあ……でも、先生と一緒なら大丈夫そう」
「夏油さん、強いですもんね」
”……ん?連邦生徒会本部からも1名、助っ人を派遣?”
「私の活動の関係で、連邦生徒会とは懇意にしていてね。各学園の治安維持組織と共に、その対処をすることもある。……シャーレは超法規的機関、私としても行動がしやすいのさ。詳しい話は、向こうでしようか」
”……うん、わかった。行こう”
「行っちゃうのかー……」
「夏油さん……」
「……ホシノ」
「?」
「くれぐれも無理はするなよ。借金のこともね」
「……うん、勿論」
校門の外まで見送りに来てくれた対策委員会の子たちに手を振って、私は先生とともにシャーレへと赴く。
「さて、話をしようか。私が担当している超特殊霊的現象……”呪霊”の存在について」