キヴォトスメロンパンモドキ   作:ただねこ

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「前提として、キヴォトスでの怪死者、行方不明者数は、年間で数千人。……その殆どを占めるのが、負の感情と呼ばれるもの、「呪い」による被害だ」

 

”……呪い?”

 

「ただ、ずっと前からそうだったわけじゃない。近年……もっと細かく言えば、2年以内で急増している」

 

”!”

 

「それらは、人間の負の感情から生まれる呪いの力。呪力と呼ばれるエネルギーが澱のように重なり生まれる、呪霊が齎すものなんだよ」

 

今のところ、先生は呪力を無意識に体内で廻らせている。彼は非術師の筈だったんだが……後々、調べる必要がありそうだ。

 

「そして学校や病院といった、大勢の思い出に残りやすい建物は、呪いの受け皿として働く」

 

”え、でもキヴォトスは学園都市だから……”

 

「そう、呪霊が生まれるスピードなんて、半端じゃない。だから学校ごとに、魔除けとなるものを置いていたんだ」

 

”魔除け?”

 

「毒を以て毒を制す。より強力な呪いを置くことで、近寄らせない。……それが必要ない学校もあるけれどね」

 

例えば、トリニティやアビドスが該当する。アビドスはそもそも全校生徒数や人口が少なく、呪いが湧くほど負の感情が満ちているわけでもない。

トリニティはその逆。綺羅びやかな見た目とは裏腹に、腹の奥底では蹴落とし合いや嫉妬など、悪どい呪いが常に渦巻いている。そんなものだから、トリニティ総合学園自体が、巨大な呪いの倉庫として働いている。

そんなものだから、トリニティは魔除けを置く必要もないのだけれど……その分呪いが溜まりやすいから、他校より高い頻度で呪霊を祓う。大体1ヶ月に1度かな。

 

「まあ長ったらしく話したけど、要は呪いの力で死者が増えていることだけ知っておいてほしい」

 

”……うん、それで?”

 

「呪いは呪いでしか祓えない。だから、その呪力を意識的に扱える呪術師という人々が、呪霊を祓っているんだよ」

 

”へー……なんだかかっこいい!”

 

「呪術師は私1人だけどね」

 

”少なっ!?”

 

「……呪霊は、普通の人間には感知できない。…死に直面してたりすると別だけど。霊的現象なんだ、そもそも視える奴は、呪いに憑かれていたりするものだからね」

 

だからこそ、連邦生徒会は対策を打った。唯一呪いの力を扱える人間……”呪術師”夏油スグルを雇い、各校のトップに呪霊の対処方法、呪霊に関しての知識を教えるなどをしている。

 

「ただし、生徒は別さ。ヘイローと呼ばれる、頭の輪っかを持つ者は呪いを認識できる。生徒が強ければ強いほど、呪霊の対処もしやすいんだ。だから各校のトップには呪霊の存在を公表し、対処の手助けをしてもらっている」

 

”…それは、私でも出来るのかい?”

 

「完全に無理……とは言い切れないな。先生に刻まれているものが視えれば別なんだけど……。まあ、今は私と各校で事足りている。気にしないでいいよ」

 

”そっか”

 

……”強い生徒”と言ったのは、先生がこの段階で”神秘”を知らないからだ。黒服にも出会っていない。

 

そう、神秘の量が多い生徒……例えばゲヘナの空崎ヒナ。例えばアビドスの小鳥遊ホシノ。例えばミレニアムの美甘ネル。例えばトリニティの剣先ツルギ。このあたりの生徒は呪霊を祓える。

神秘は、どちらかというと反転術式に近しいものだ。呪いへの効果も段違い。

 

……恐怖は、まだわからないな。

 

「先生、貴方に呪いを教えたのは、これからキヴォトス内のいざこざに紛れて、その呪いも顔を見せる可能性が限りなく高いからだ。何かあれば、すぐに私に加えて各校のトップ層……生徒会や最高戦力に連絡してくれ。私は常駐だから、シャーレ近辺は対処できるだろう」

 

”ありがとう、夏油さん”

 

「礼には及ばないよ。呪術師は、非術師を守るためにあるからね」

 

……何処かで聞き覚えのある台詞を言いながら、私と先生はシャーレ部室へと足を運んだ。

 

 

・・・・・

 

 

1週間後。新しく連邦生徒会から来た助っ人を迎えながら、先生不在の中で、2人きりでの書類仕事をこなしていた。

 

「ユメ、確かそっちに呪霊の書類があったはずだ。こっちに寄越してくれるかい?」

「どうぞ!……呪霊に関しては、スグルく……夏油、さん…が、適任ですし」

「……無理に苗字で呼ばなくてもいいのだけど」

「いえ、歳上ですから……!」

 

昨年度にアビドスを卒業したユメは、連邦生徒会にてアビドスの砂漠化、人口減少の対策を考えつつ、新人としてめきめきと成長を見せている。新人研修も兼ねて、シャーレに配属されたというわけだ。

今頃、セリカは。「柴関ラーメン」というラーメン屋でバイトをしている時間帯だろう。ユメも私も、あそこは世話になることも多いからね。大将とはそれなりに関係を築いている。

 

「……すまない電話だ。出てくるよ」

「はい!」

 

 

廊下に出て、携帯を開く。

 

「……へえ、これは珍しい。彼女から連絡が来るとはね」

 

携帯には、「ベアトリーチェ」という文字列が光っていた。




先生は一体何者なんでしょうかね。
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