奮戦せよ!ダイゴロウ!   作:クォーターシェル

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第13話 新時代だ!ダイゴロウ!

『5代目ゴジラ襲撃事件(シン・ゴジラ)』より数年後、ゴジラが残した放射性物質を除染し、大きな復興を遂げた冬の東京。そんな東京の銀座に突如として巨大な『門』(ゲート)が開き、多種多様のモンスターを引き連れた中世ヨーロッパの騎士や歩兵のような軍勢(約6万)が現れた。

 

彼らは民間人を発見すると無差別に殺害し、その屍で銀座に屍山を築いた。しかし、現場より通報を受けた陸・海・空・特生自衛隊や機動警察、在日米軍の応戦により敵軍勢は壊滅、兵の1割を捕虜とすることで事態は2日で収束を迎えた(通称:銀座事件)。

 

そしてこの銀座事件を発端に門の向こうの異世界を巡る物語が幕を開けたが、それはまた別の話。門の向こう(特別地域=特地)関係でごたごたする本土に対し、月見島では野生化したプリカーサーの怪獣の迎撃が時折行われたりしていたが、ダイゴロウや特生自衛隊によって大事にはなっていなかった。

 

「ダイゴロウ~、今日のご飯だよ~!」

 

ダイゴロウに今日も餌が与えられる。大学を卒業したばかりの新人女性飼育員の八木山満美(やきやま みつみ)がダイゴロウに近づき餌を与えようとすると……

 

「……おやぁ?」

 

突然、月見島に強烈な風が吹き荒れ周りの樹木がザワつく。

 

「これは……嵐?いや台風かしら……?」

 

するとモニターを確認していた吉井が全員に向かって言い放つ。

 

「みんな大変だ!竜巻が接近してる!この島に激突するコースだ!!」

 

斉藤と三浦達は驚いて島の中心部の養護棟へ避難する。

 

「全員建物内に避難しろ!今すぐに!」

 

斉藤の怒号が響く。島中に緊急サイレンが鳴り響き、観光客も職員も養護棟へと走り出した。

 

「何が起きてるんだ?」

 

一般職員の佐々木が息を切らせながら尋ねる。

 

「巨大な竜巻だ!過去最大級の規模らしい」

 

吉井がモニターを見つめながら答える。画面には高速で接近する黒い渦が映し出されていた。島の気象観測班によると、中心風速は推定140m/s。通常の台風を遥かに超える規模だ。

 

「避難して良かった」

 

三浦がほっとした顔で呟く。しかし八木山は青ざめたままだった。

 

「ダイゴロウは……?」

「彼なら大丈夫だ」

 

斉藤が即答する。「彼は嵐なんか怖がらない」

 

竜巻が島に迫る。直径1km以上ある巨大な渦が海岸線を飲み込むように接近していた。

 

「グオオオッ!!」

 

ダイゴロウが立ち上がり、両腕を大きく広げる。彼の身体が赤く発光し始めた。体内の熱エネルギーが高速で循環している証拠だ。

 

「彼は一体何をする気だ?」

観測ドローンからの映像を見ていた特生自衛隊の岩崎准尉が首を傾げる。

 

その時だ。

 

ダイゴロウの体が淡く発光し続け、彼の周囲の空気が振動し始めた。

「……?」

 

岩崎は目を疑った。ダイゴロウの発する波動が大気中の水分を集め始めている。

「彼は竜巻と……対抗しようとしている!?」

 

島の中心

 

「ダイゴロウが……!」

八木山がモニターに釘付けになる。

 

画面には信じられない光景が映っていた。ダイゴロウの周囲に小さな水滴が集まり始め、それが螺旋を描くように回転し始める。やがてそれは小さな竜巻となり、徐々に巨大化していく。

 

「あのサイズの竜巻を作り出すなんて……」

 

島の科学者の白石博士が感嘆の声を上げる。通常の竜巻形成理論では説明不能な現象だ。

 

海上でついに二つの竜巻が接触した。

 

島に迫る自然の猛威と、ダイゴロウが作り出した人工の螺旋。二つの力がぶつかり合う瞬間、巨大な衝撃波が発生した。

 

「伏せろ!」

 

斉藤が叫ぶ。窓ガラスが一斉に震え、壁が軋む音が響く。

 

次の瞬間、外界の轟音が突然止んだ。

 

5分後

 

「外を見てみましょう」

 

岩崎がおそるおそる扉を開ける。眩しい太陽の光が差し込む。空は一点の曇りもなく晴れ渡っていた。先ほどまでの暴風雨が嘘のようだ。

 

「あれは……」

 

窓の外には平穏を取り戻した海と、その沖合でゆっくりと海に浸かっていくダイゴロウの姿があった。彼は竜巻と衝突し、その力を利用して大気の流れを変えたのだ。

 

「グオォ……」

 

疲れ果てた様子で呻きながらも、彼は満足げな表情を浮かべていた。

 

「ダイゴロウ!」

 

八木山が飛び出して彼の元へ駆け寄る。

 

「すごいよダイゴロウ!みんな助かったんだ!」

 

ダイゴロウは一瞥し、軽く頷いた。しかしすぐに力尽きたように膝をつき、そのまま眠りにつく。

 

「三日は起きないだろうね」

白石博士が肩を竦める。

「でも今の彼の姿を見ただろう?明らかに以前よりも強い力を使えるようになってる」

 

「確かに……」

 

島の皆が沈黙する中、斉藤がポツリと言った。「きっと五代目ゴジラとの戦いで何か学んだんだろう」

 

窓の外では静かな潮騒だけが聞こえていた。まるで何事もなかったかのような穏やかな午後の光景。しかしその裏では、一つの小さな島で今なお成長し続ける存在が確かにあった。

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

特地を巡るごたごたが終息して1年くらい経った日、日本のある小学校はにぎわっていた。教室の一つでとある話題が盛り上がっていた。それはどの怪獣が一番カッコいいかというものだ。

 

「絶対にゴジラだよ!最強じゃん!」

 

六年一組の教室で健太が机を叩いた。窓際の席ではタケシがひとり頬杖をついている。

 

「でもガメラだって負けないよ!正義の味方だし」

ユミが反論する。

「いやいや!ゴジラの方が迫力あるって!」

「ガメラの方がかっこいいよ!」

 

議論は白熱し、クラスのほとんどの子が参加していた。タケシは静かに見守っているだけだ。

 

「あんな古い怪獣なんて……」

ユミがゴジラ派の子たちを挑発する。

「じゃあ何が一番かっこいいっていうんだよ?」

 

タケシが口を開いた。

「ダイゴロウ」

 

「ダイゴロウ?」

「あんなのカッコ悪いだろ!」

 

男子たちが一斉に笑い出す。

 

「ダイゴロウなんてダサい名前!誰が考えたんだよ!」

「でも、父ちゃんが子供の頃ダイゴロウに助けられたって……」

 

タケシが反論しようとする。しかしそれは火に油を注いだだけだった。

 

「うそつけ!ダイゴロウみたいな雑魚怪獣が誰を助けるんだよ!」

「そうだ!ゴジラなら分かるけど!」

「ゴジラこそ最強だぜ!」

 

盛り上がる男子たちとは対照的に女子たちは冷ややかな目で見ている。タケシは黙ってしまった。

 

「あなたたち!」

 

鋭い声が教室に響いた。六年一組の担任、岡崎先生だ。五十代半ばの彼女は両手を腰に当てて教壇に立っている。

 

「休み時間とはいえ廊下まで騒ぎを聞こえさせて!しかも授業時間が始まってるわよ!」

 

その一喝に室内は一瞬にして静まり返った。さっきまでの喧騒が嘘のように消える。

 

「早く席に着きなさい。今日は社会科の続きよ」

 

健太とユミは互いにそっぽを向きながら席に戻る。タケシは窓際で小さく溜息をついた。

 

「あのさ……」

 

机の横を通った女子が小声で呼びかけた。

 

「さっきタケシ君が言ってたの本当?ダイゴロウって怪獣が……」

 

「父ちゃんが言ってただけだよ」

タケシも小さな声で返す。

「二十年前怪獣が襲ってきた時に……」

 

突然、教室全体が薄暗くなった。

 

「?」

岡崎先生が窓を見る。

「何?」

 

空は一面の濃い灰色の雲に覆われていた。しかし普通の雲ではなく、まるで巨大な何かの影が差しているかのようだ。

 

「なんだろう……?」

 

その瞬間だった。窓から巨大な影が差し込み、教室全体を覆った。

 

「キャア!」

 

「なにこれ!?」

 

生徒たちが慌てて席を立つ。窓辺に駆け寄った数人が見たものは—

 

「何あれ……!?」

 

「鳥……じゃないよね?」

 

巨大な翼を持つ生き物が校舎の上空を低く飛んでいた。そのシルエットは伝説上のドラゴンに似ているが……

 

「まさか怪獣!?」

 

「先生!警察に連絡を!」

岡崎が叫んだその時だ。

 

「ギャアアアアア!!」

 

耳を劈くような悲鳴が廊下から聞こえた。

 

「何の音!?」

 

岡崎が教室のドアに駆け寄る。しかしドアの向こうは—誰もいない。ただ静寂だけが広がっていた。

 

「みんな……?」

 

彼女は廊下に出た。しかし生徒たちの姿が見当たらない。

 

「おかしい……」

 

振り返ると教室は静まり返っていた。六年一組の子供達の姿も消え去っていたのだ……

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

その現象はそこだけではなく、全国の小学校で起こっていた。それは1億2千万年前に恐竜を滅ぼしたギドラ族の一体、宇宙超怪獣『キングギドラ』(通称:グランドギドラ)の仕業であった。グランドギドラは地球へ飛来し、市街地から子供達を青木ヶ原樹海に出現させたドームへ攫ってしまったのである。それは当時喰らっていた恐竜の代わりとして数万人の子供達を一度に捕食し、自分のエネルギーにする為であった。

 

麻生総理はこの事態を重く受け止め非常事態宣言を発令し、自衛隊を青木ヶ原樹海へと派遣することを決定。富士山麓に黒木指揮の陸・空・特生自衛隊による絶対防衛線が敷かれる。更にこの危機を察知した、モスラとガメラが飛来しグランドギドラに攻撃を加えるが、バリアを張るグランドギドラに攻撃が通用せず、更にグランドギドラが子供達を人質に取った事によりモスラ&ガメラ、並びに加勢した自衛隊の部隊は敗走した。そんな中、この事態を人間から知らされたダイゴロウも月見島から青木ヶ原樹海へ向かうのだったが……、

 

「ギシャアアアッ!」

 

静岡県、浜名湖湖畔でグランドギドラとは別口の怪獣が出現していた。後に判明するこの怪獣の名前はインセクタント。外見に様々な虫の特徴を持つ昆虫型怪獣だ。インセクタントは鎌状の前足でビルを両断したり、腹部からプラズマ弾を発射して街を破壊していく。

 

「自衛隊の応援はまだか!」

 

浜松市の防災本部に緊張が走る。テレビ画面には、巨大な鎌のような前足を持つ怪獣がビルを薙ぎ倒す映像が映し出されていた。

 

「静岡基地から報告!グランドギドラ掃討作戦により戦力の8割を投入中とのこと!」

 

「馬鹿な!一体だけで精一杯なのに……」

 

その時だった。

 

「新たな怪獣出現地点確認!浜名湖湖畔です!」

 

「ギシャアアッ!」

 

「逃げろ!建物の中に隠れろ!」

 

住民たちが必死で避難する中、警戒に当たっていた地元警察がインセクタントの前に立ちはだかる。

 

「ここから先は行かせん!」

 

しかし蟻酸のような液体が放たれ、パトカーは一瞬で溶け落ちた。

 

「ぐわぁっ!」

 

警官たちは叫び声をあげる。

 

富士山麓

 

「こちらつくば本部!静岡市にも怪獣出現との情報!」

 

自衛隊の指揮所で通信が飛び交う。

 

「現在の戦力はグランドギドラとの戦闘で半減状態……これ以上の分散は……」

 

「総理の判断を仰がねば……」

 

そんな中、ある一つの通信が入る。

 

「浜名湖湖畔にダイゴロウ出現!昆虫型怪獣と交戦に入りました!」

 

「ギシャアアアッ!」

 

インセクタントの前足がビルを貫いた刹那、上空から影が舞い降りる。

 

「グオオオッ!!」

 

巨大な咆哮と共に着地したのはダイゴロウ。体長100メートルに迫る体躯が地面を揺らす。

 

「ダイゴロウだ!」

 

避難中の人々が歓声を上げる。だが同時に疑問も湧き上がる。

 

「なぜここに……?」

 

富士山麓・防衛司令部

 

「ダイゴロウの位置情報を確認。現在地は静岡県浜松市」

 

モニターに映るデータに全員が注目する。

 

「やはり奴は二体目の怪獣に反応したのか」

 

黒木特佐が腕を組む。

 

「ダイゴロウ単独で昆虫型怪獣を抑えられるでしょうか?」

 

副官が問いかけると黒木は重々しく答えた。

 

「可能性はあります。だが我々は依然としてグランドギドラへの対処が最優先です。子供たちの救出がなければ意味がない」

 

「しかしダイゴロウが負傷すれば……」

 

「わかっている。だが今は彼を信じるしかない」

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

「グオオッ!!」

 

ダイゴロウが右腕を振り上げてインセクタントに叩きつける。鈍い打撃音が響くが—

 

「ギシャアッ!」

 

鎌状の前足がダイゴロウの胸部を掠めた。

 

「グアァッ!」

 

鱗状の皮膚が裂け、赤い血が噴き出す。

 

「ダイゴロウが……!」

 

観衆から悲鳴が上がる。しかしダイゴロウは怯まず再び襲いかかる。

 

「ウオオオッ!!」

 

インセクタントの腹から放たれる青いプラズマ弾が命中する。熱線を帯びた閃光がダイゴロウの背中で炸裂した。

 

「グオオォォォ……!」

 

巨体が大きく揺らぐ。しかしダイゴロウは踏みとどまり、逆にインセクタントを押し返した。

 

「凄い……」

 

「やっぱりダイゴロウは強い!」

 

観衆の声援が大きくなる。ダイゴロウの目が炎のように赤く輝き始める。

 

「ガアァァッ!!」

 

全身が赤熱化し、体内エネルギーが解放された。火炎放射器のような熱線が口から迸る。

 

「ギシャアッ!?」

 

インセクタントの硬い甲殻が焼け焦げていく。

 

「チャンスだ!」

 

ダイゴロウは隙を逃さず飛び掛かり、両腕でインセクタントの前足を掴み上げた。

 

「ウオオオオッ!!」

 

強烈な力で押し潰していく。金属が軋むような悲鳴が響く。

 

「グアァァッ!」

 

しかしインセクタントも素早かった。尻部から毒針のような器官が伸び、ダイゴロウの腹部に突き刺さった。

 

「グオオオオッ!!」

 

劇痛に顔を歪めながらもダイゴロウは諦めない。むしろ更に力強くインセクタントを抱き寄せ、

 

「ガアァァァ!!」

 

火炎放射を至近距離で浴びせた。インセクタントの内部機構が過熱し破裂音を上げる。

 

「ギシャアアア……!」

 

巨大な昆虫怪獣は痙攣しながら崩れ落ちていった。

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

「チッ……、まさかゴジラやガメラならいざ知らずインセクタントがあの様な怪獣に敗れるとは……」

 

何処とも知れぬ多数のモニターが供えられた部屋。そこで1人の不気味な老人がダイゴロウとインセクタントの戦いの一部始終を見ていた。老人の名前はマッド鬼山、怪獣を使い、世界征服を企む悪の野望を持った科学者である。

 

インセクタントもカマキラスやメガギラス等の地球の昆虫怪獣、更には特地で出現した蟲獣等の細胞を元に鬼山が誕生させた怪獣兵器だ。今回はインセクタントの試運転の為に街を襲わせていたのだ。だが鬼山の計算違いはそこに偶然にもダイゴロウが居合わせてインセクタントを倒してしまった事であった。

 

「まあ良いだろう。しかし想定外の問題も起きたな……、宇宙怪獣とは厄介なものが出て来たものだ」

 

グランドギドラのニュースも見ていた鬼山。鬼山の野望にとってグランドギドラの存在は目の上のたん瘤だった。しかし鬼山は余裕そうだった。

 

「取り敢えずギドラは自衛隊と他の怪獣達に任せるとするか。どちらが勝っても疲弊した勝者を潰せば良いだけの話だ」

 

マッド鬼山はアジトの一室で不敵な笑みを浮かべるのだった……

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

ダイゴロウがインセクタント戦で消耗しつつも青木ヶ原樹海へ到着した時にはもう全てが終わっていた。超兵器を駆使する自衛隊。人類に加勢したゴジラジュニアと古代ゴジラ。更に復活を遂げ日本の脅威であるグランドギドラを排除しに来た護国聖獣の3体。新形態『鎧モスラ』へのパワーアップを遂げたモスラ。地球のマナによって強化されたガメラ。これらの戦力の総攻撃によってグランドギドラは死亡・消滅し、子供達を捕らえていたドームは消失。一人の犠牲者もなくこの事件は解決していたのだった。

 

「……」

 

自衛隊が子供達を保護する中、完全に出遅れたと感じたダイゴロウはトボトボと踵を返して月見島の方角に向かうのだった。

 

月明かりに照らされた海岸の縁を、巨大な影が静かに歩く。ダイゴロウだ。彼の体にはインセクタントとの戦いで負った傷がまだ痛々しく残っている。

 

「ガア……」

 

小さな呻き声を漏らしながら、彼は自分が出遅れたことに少しばかりの後悔を感じていた。他の怪獣たちと自衛隊が力を合わせてグランドギドラを倒したという噂はすでに島にも届いていた。

 

「ダイゴロウさん!」

 

声に振り向くと、島の若き科学者・白石が走ってくるのが見えた。

 

「無事でよかった……インセクタントを倒した後すぐに引き返すなんて思わなくて」

 

ダイゴロウは黙って頭を下げた。誇らしげな顔ではない。むしろ少し落ち込んでいる様子だ。

 

「どうしたんですか?」

 

ダイゴロウは答えずに天を仰いだ。星空の下、遠くの富士山の稜線が見える。あそこで起きた壮絶な戦いを思うと胸が痛む。

 

「あそこに……行けなかったことですか?」

 

白石が察したように言った。ダイゴロウは静かに頷いた。

 

「でも考えてみてください。もしもあなたがグランドギドラと戦っていたら、浜名湖や静岡の人たちはどうなっていたでしょう?インセクタントはきっともっと多くの被害を出していました」

 

ダイゴロウはまた空を見上げる。白石の言葉は理解できる。だが心の奥底には拭えない悔しさがあった。

 

「それに……」

 

白石が少し考えるような表情になる。

 

「あなたの戦いが、他の戦いを支えたかもしれませんよ」

 

「?」

 

「つまりですね」

 

白石は両手を使って説明を始めた。

 

「あなたがインセクタントと戦っていたからモスラ達もグランドギドラと全力で戦えた……。そう思います」

 

ダイゴロウの瞳が少しだけ輝きを取り戻した。

 

「……グオ」

 

低い唸り声が肯定を意味していた。

 

「さあ、戻りましょう。あなたの傷を治療しなければなりません」

 

白石の導きに従い、ダイゴロウは歩を進めた。心の中の靄はまだ晴れていなかったが、少なくとも前よりは軽くなっていた。

 




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