奮戦せよ!ダイゴロウ!   作:クォーターシェル

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第16話 侵略者を迎え撃て!ダイゴロウ!

ジャイガーの事件から3年程後、宇宙では嘗て地球侵略に失敗したバイラス星人とジグラ星人が同盟を結び、再びの地球侵攻を企んでいた。彼らは自分達が作り出した怪獣、グレートワイバーンを中核とした怪獣軍団や宇宙船よる編隊を編成し、着々と準備を整えていた。

 

その頃、アドノア島ではジュニアと古代ゴジラが、インファント島ではモスラが、太平洋ではガメラとトト、その他の地域でも人類に友好的な怪獣達がそれぞれ宇宙空間より進撃をしてくる大軍隊とグレートワイバーンの存在を感じ取り、いつでも迎撃に出られるように牙を着々と研いでいた。

 

アドノア島の未希やエリアスやガメラ交信者、トトと親交の深い透からの怪獣達からの連絡や、宇宙レーダーにもその存在が確認されており、国連は各国にここ数日中に侵略者による大規模な軍事行動がある可能性が高いと警戒を促した。そんな中、月見島では……。

 

月見島の夕暮れ時。穏やかな波音が浜辺に響く。砂浜に立つ老人・斉藤は、水平線に沈む夕陽を静かに眺めていた。傍らには吉井をはじめとする月見島職員たちと、少し離れた岩場からダイゴロウが見守っている。

 

「もう十分だよ……」

 

斉藤が柔らかな微笑みを浮かべる。その顔には数十年の歳月が刻まれていた。

 

「斉藤さん……」

八木山が涙ぐみながら近づく。

 

「赤ん坊のダイゴロウの世話をしてからどれくらい経ったか……」

 

斉藤は遠い目をした。「君のような若い飼育員を見ると時の流れを感じるよ」

 

「はい……」

「私はダイゴロウが来てからずっと彼の世話をしてきた。時には厳しく叱ったりもしたけどね」

 

斉藤の目が優しく細められる。

 

「あの子は素晴らしいパートナーでした」

 

彼はゆっくりとダイゴロウの方を向き直った。

 

「ダイゴロウ……君は私の誇りだよ」

 

岩場にいるダイゴロウが小さく「グルル……」と鳴く。その眼差しは老練な戦士に対する尊敬に満ちていた。

 

「八木山くん」

斉藤が振り返る。「これからもあの子のことを頼んだよ」

 

「はい!」

八木山は涙をぬぐいながら答える。

 

「彼はただの怪獣じゃない。友だちであり、戦士でもある」

 

斉藤の手が八木山の肩に置かれる。「だから……」

 

その言葉は途切れかけたが、老人の目は強い光を湛えていた。

 

「だから何があっても守っておくれ。例え相手が宇宙人だろうとね」

 

八木山は目を丸くした。「知ってらしたんですか……」

 

「噂程度だけどね」斉藤は苦笑いする。「人類と怪獣の未来がかかっているからね」

 

その時—

ダイゴロウが突然大きく吠えた。空を見上げている。

「グオオーン!!」

 

「何か感じたようです!」

若手職員が叫ぶ。

 

「もう時間だね……」

斉藤がつぶやく。彼は最後の力を振り絞ってダイゴロウの方を見つめた。

 

「君たちなら大丈夫だ」

老人は穏やかに微笑んだ。その目が静かに閉じられる。

 

「斉藤さん……!」

吉井が呼びかけるが、応えはない。

 

波の音だけが浜辺に響く中、ダイゴロウが低く哀しげに鳴いた。

「グルル……」

 

職員たちの嗚咽が混じる中、吉井が静かに言った。

「さあ皆……葬儀の準備を」

 

八木山は決意を新たにしたように頷いた。斉藤の遺志を継ぎ、怪獣と人類の平和を守るために。宇宙からの脅威が迫る中、月見島の空は不穏な雲に覆われ始めていた。

 

次の日、斉藤の葬儀が月見島で行われた。葬儀には大勢の人が集まった。ダイゴロウも特別に許可を得て葬儀に参加する。斉藤の棺が運ばれてくるとダイゴロウは悲しそうに泣いた。

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

斉藤の葬儀が行われてから数日後、いよいよバイラス・ジグラ連合軍の地球侵略の日は来た。決行日には全世界でジグラによる大地震が引き起こされ、各国の国会議事堂や防衛局と言った政府関係機関が崩壊。その隙を突くかのように地球の上空にはバイラスとジグラ星人の数千に及ぶ円盤郡が襲来する。

 

そして円盤から放たれた怪獣軍団が地球を蹂躙し始める。これにより各国政府は大混乱に陥り、軍が全く出動出来ない事態に陥ってしまう。

 

そして、東京にはワイバーンが現れトトと戦うが、トトは『トト・インパクト』をバリアにより弾かれた上、脳細胞停止光線により行動不能に陥り、連合軍が仕掛けた爆弾で発生した地割れに落とされ、埋められてしまう。

 

トトを倒したことで士気の上がったバイラス・ジグラ連合軍の猛攻によって地球が連合軍に征服されるのは時間の問題かに見えた。そんな中、東京上空に一機の飛行物体が飛来した。それは『パイラ星人』の宇宙空母『バンシーⅤ』だった。

 

1万2000年前、古代文明同士の覇権争いに嫌気が差し地球を離れていた地球人類の子孫であるパイラ星人は、同じ存在である地球人類や嘗ての故郷である地球の危機を救うべく宇宙空母から地球の核に向かってミサイルを放つ。

 

これは彼らの母星『パイラ星』にて生み出された特殊物質『ウリウム101』を利用した『惑星活性弾ミサイル』だった。数々の星々を救ってきた活性弾によって地球は不思議なオーラ(マナ)に包まれ、その光は各地に奇跡をもたらして行った。

 

アドノア島では地層の中で卵として眠っていた新たなラドン(通称:3代目ラドン、ラドン)、アンギラス(通称:2代目アンギラス、アンギラス)が誕生する。そしてとある島ではヘビ型怪獣『ガラシャープ』が誕生する。そして、これまで眠りについていた4体目の護国聖獣『曼陀(マンダ)』も覚醒した。

 

これらの怪獣(曼陀は除く)は非常に穏やかな性格で誕生し、人類や他地球怪獣に対し友好的な感情があることが確認される。

 

同時にマントルを漂っていたトトもガメラによってガラシャープの目覚めた島の地割れから救出される。この際、トトの姿を初めて見たガラシャープはトトを兄弟だと認識。更には曼陀の覚醒を感じ取った護国聖獣達も出現し、戦いは佳境へと収束していくのだった。

 

世界各地で地球怪獣や地球防衛軍とバイラス・ジグラ連合軍の戦闘が行われる中、ダイゴロウは上海にてトカゲ型怪獣バルゴンと戦っていた。

 

中国・上海。廃墟と化した高層ビル群の中で、ダイゴロウは灰色の霧を纏う異形の怪獣と対峙していた。バルゴンと呼ばれるトカゲ型怪獣は冷たく光る目でダイゴロウを見据えている。

 

「グオオ……」ダイゴロウが低く唸る。

 

惑星活性弾ミサイルの影響か、いつもより体が軽い。四肢からは淡い紅蓮の光が脈打つように漏れ出ている。これは通常の火焔結節によるものではない。星そのものの生命力が怪獣に与えた新たな力だった。

 

バルゴンが動く。高速で接近しながら、口から青白い凍結ガスを吐き出した。

「シュワアアッ!」

 

「グルル!」

 

ダイゴロウは素早く横転し、避けながら反撃に転じる。拳に集まった炎が渦を巻き—

 

「バゴオォン!」

火炎放射ではなく、純粋な熱量の塊が放出された。それは凍結ガスを一瞬で蒸発させ、バルゴンの胸部に命中した。

 

「ギシャアッ!」

苦悶の声を上げるバルゴン。その鱗がわずかに溶け始める。

 

「なんという威力だ……!」

上海防衛部隊の指揮官が双眼鏡で驚きの表情を浮かべる。

 

「普段のダイゴロウの火焔結節とは桁違いの火力ですよ」

 

ダイゴロウ自身も戸惑いを見せつつ、新たな力を制御し始めていた。かつての赤熱化攻撃よりも効率的に熱エネルギーを放出できるようになったのだ。

 

「グルオッ!」

 

跳躍したダイゴロウが空中で身を翻すと、その動きに合わせて赤い残像が宙を切る。そのままバルゴンの背後に着地すると、鋭い爪で尾を切り裂いた。

 

「キィィッ!」

バルゴンが振り返るが、すでに遅い。ダイゴロウの熱線砲が喉元を狙っていた。

 

「ガオォン!」

閃光が走り、トカゲ怪獣の首が断たれる。倒れ伏したバルゴンの体は灰になっていく。

 

バルゴンを倒したダイゴロウは上海に飛来していた連合軍の円盤を撃ち落とすとそのままバイラス・ジグラ連合怪獣軍団の要であるグレートワイバーンがいる東京の方へ向かうのだった。

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

大気圏で鎧モスラ、ラドン、機鷲隊、ごうてん、新・轟天号、対ギャオス・ハイパー、ソルジャー編隊の空中戦、ニューヨーク市街ではジュニア、古代ゴジラ、ジラ、MOGERA、地球防衛軍対ジグラ、ギロン、ジャイガー、バルゴンの果てしない死闘、東京ではトト、ガメラ、護国4聖獣、アンギラス、壱式機龍・改、スーパーXⅢ対ワイバーン、マザー、イリスとの壮絶な戦いが繰り広げられる。

 

その他の場所でもキングシーサー、コング兄弟、ガッパ、プルガサリと言った友好的な怪獣がこの脅威に対し立ち向かっていった。そしてパイラ星の防衛軍である『フェアリィ空軍(FAF)』も参戦、大気圏に存在するバイラス・ジグラ連合軍の掃討作戦を展開していく。

 

ジュニアの放射熱線をも弾くとも言われるワイバーンのバリアに対し苦戦を強いられる人類と怪獣達。更に尻尾を変形させ、ビルを一瞬にして溶解させる破壊光線を放ち機龍を転倒させ、マザーの放つマイクロ波シェル、イリスの触手から放つ放射熱線と共にメーサー部隊を見る見る内に壊滅させていく。

 

護国聖獣達も連携を組みながら攻めを見せるもワイバーンに対する決定打にはならず次第に消耗していく。遂には回転ジェットと『暴龍怪球烈弾』を叩き込んでいたトトとアンギラスが変形した尻尾に捕まり瓦礫の中へと叩き込まれてしまい、そのまま両者は事切れてしまったかのように動かなくなる。

 

調子に乗ったワイバーンは護国聖獣達も同様に片付けると、アンギラスへと近づき、踏みつけ攻撃を連続して行っていく。それでも動かないアンギラス。

 

完全に死んだと思い込んでいたワイバーンは火炎放射と冷凍光線を放とうとした瞬間、アンギラスが覚醒し放射冷線『ポーラー・ブレス』をワイバーンの口元へ放っていく。これにより完全に不意を突かれたワイバーンは思わず転倒してしまう。

 

そして同じく復活したトトにより火炎放射の首を踏みつけられバリアを張ることが一時的に不可能となり、火球を叩き込まれて大ダメージを負ってしまう。この隙に体勢を立て直した機龍は即座に6連ハイパーメーサーを発射、バリアの無い状態のワイバーンに対して追い打ちをかけていく。

 

その時、地中から出現しワイバーンの全身へと巻き付き、噛み付いて襲い掛かるガラシャープ。ガラシャープの牙から放たれる神経性の猛毒を噛み付かれて体内に流し込まれたことによりバリアを発生させる器官を溶かされてしまい、ワイバーンに動揺が走る。そこへ敵を片付けた2体のゴジラ達、ラドン、鎧モスラが参戦する。

 

ワイバーンはガラシャープを振りほどきながら起き上がり、両方の首から『火炎放射』と『冷凍光線』を放つが火炎放射はパワーアップしたトトのエネルギーとして吸収され、冷凍光線もモスラのバリアとアンギラスにより無効化される。そして尻尾を切り落とされた上にラドンに目潰しを食らいアンギラスの暴龍怪球烈弾を再び受ける。

 

地面に倒れ込みのたうち回った所にトトの火球噴射、モスラの鎧・クロスヒートレーザー、ラドンのウラニウム熱線の追撃、そしてボロボロのワイバーンに全体重をかけながら伸し掛かるトト。これまでの言い様にやられてきた報復をするかのように何度もボディプレスを加えていった。

 

そして再びガラシャープの毒牙がワイバーンへと襲い掛かり、次第に痺れ始めてきたのか首が見当違い方向に向いてしまい遂には首同士が同士討ちを始めてしまう。

 

マザーレギオンも2体のゴジラに、イリスもガメラと護国聖獣に倒され、追い詰められるワイバーン。その時、進路上のバイラス・ジグラ連合軍を倒しながら進撃したダイゴロウも到着する。

 

「グウウ……」

 

戦況が圧倒的にこちらの有利と見たダイゴロウはまた遅かったか……、と内心思っていたがその時、

 

『ええい!使えん奴らめ!!』

 

状況を俯瞰していたバイラスが、ワイバーン等の生き残りの操っていた怪獣達を取り込み、巨大化した合体怪獣『ネオバイラス』となった。これによりバイラスの知性は獣同然となり喋ることも出来ない奥の手であったが、地球への憎悪で辛うじて自我を保つネオバイラスはそのまま地球人類や怪獣達を襲う。触手から指定座標に泡状のフィールドを発生させて破壊する『バニシング・フィールド』や触手の先から様々な光線を放って攻撃するネオバイラスに対し、地球防衛軍や怪獣は臆さずに立ち向かう。

 

「オオオオォォォ……!」

バニシング・フィールドと各種光線で攻め立てるネオバイラスだったが、数の上では地球側が有利。モスラとラドンが高速飛行してかく乱し、その隙にジュニアやガメラ、ダイゴロウ達が熱線や火球を叩き込んでいき、地球防衛軍の各兵器もメーサー砲や冷凍光線でネオバイラスの触手を破壊していく。

 

更に特生自衛隊は新兵器であるMFS-2『弐式機人』(通称:特生メカニコング、機人)、MFS-3『参式機玄』(通称:メカガメラ、機玄)を実戦投入させる。機玄が放つ『XX式2連装冷凍メーサー砲』や、機龍が所持していたものの強化型である『XX式絶対零度砲』(ネオ・アブソリュート・ゼロ)により摂氏-273.15度を遥かに超える極超低温に晒されたネオバイラスは凍り付き、そこへ機人の『ロケットパンチ』や新兵器『メーサーミサイル』が炸裂、次第に組織崩壊を起こしていく。

 

最期は氷漬けから何とか抜け出した瞬間に鎧モスラによって月へと転移させられ、追ってきた怪獣達の総必殺技、特生自衛隊や地球防衛軍の超兵器による総攻撃に晒されながら塵も残さず消滅させられてしまった。

 

月面から青い地球が見えた瞬間、全員の安堵の溜息が宇宙に漂った。バイラスの巨大怪獣を殲滅した疲労感と達成感が入り混じる。ジュニアが最初に口を開いた。

 

(戻ろう。みんなが待ってる)

 

古代ゴジラが頷く。(家へ帰ろう)

 

鎧モスラの能力によって地球に帰る刹那、ダイゴロウの心に妙な温もりが広がった。それは単なる勝利の喜びではなく、生命の連帯感だった。星を救ったのは自分たちだけではない。すべての生物が共に戦ったのだ。

 

亜空間通路を突破した怪獣たちが地上に姿を現すと、人類は歓喜に沸いた。傷つきながらも生き延びた街並みに、彼らの勇姿が映える。

 

「ゴオォオオオン!!」

 

一斉に上がる勝利の咆哮は、世界中の空を震わせた。ダイゴロウの熱線、ジュニアの放射熱線、ラドンの熱風、モスラの銀色の光輝が夕焼けに溶け合う。

 

「グオオッ!」ガラシャープが螺旋を描きながら空へ舞い上がる。

「ギャオン!」トトは喜びを表現するかのように空中で踊る。

 

彼らの凱旋に呼応するかのように、生き残った人々が街頭に溢れ出す。ビルの屋上からも、公園からも、橋の欄干からも——すべての人々が手を振っていた。

 

「英雄だ……」誰かが呟く。

「俺たちの地球の守護神だ!」

 

祝賀の熱狂が収まると、それぞれの怪獣たちは自然と帰り道を選んだ。まるで本能に導かれるように。

 

ゴジラジュニアやアンギラス、ラドン達はアドノア島、モスラはインファント島といったように各々の住処へ戻っていく。

 

ダイゴロウは海を悠々と渡り、懐かしい月見島が見えると速度を緩めた。職員達が海岸で手を振っているのが見える。

 

「グルル……」彼は低く唸り、感謝の意を込めて島に近づいた。

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

後日、半年に及ぶ調査の末に国連は『怪獣保護条約』に『3代目ラドン』『2代目アンギラス』『ガラシャープ』を加えることを決定し、国連加盟国全てがこれを承認した。

 

そして今回の一件で協力してくれたパイラ星とは友好条約を始めとした様々な条約を結び、以後永きに渡って交流を深めていくこととなる。

 




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