日本某県の郊外にて、ダイゴロウは傷が癒えてリハビリをしていた。そんなダイゴロウのお見舞いに来た者達が居た。高木や全国の子供達などダイゴロウに友好的な人々だ。
因みに高木が番組で獲得した賞金の使い道だが、200万円のうち150万円がダイゴロウの餌代に使われる事になり、残りの50万円は瞬間雨降りミサイルの改良に使われる事となった。ダイゴロウの元に向かう道中、高木はこう考えていた。
(あのゴリアスには周囲の熱エネルギーを食料にして辺りを寒冷化させる生態があるらしい。あの日雪が降ったのはそのせいでは……?)
高木や子供達、ダイゴロウに友好的な人々がダイゴロウの近くまで来て手をふる。それを見たダイゴロウも手を振り返したのだった。そんな中、斉藤が鈴木にある話を持ち掛けられていた。
「なに?ダイゴロウに餌をたっぷり与えて成長させてゴリアスにぶつける?」
「はい。政府がそう判断したんです。ダイゴロウはキングコングや沖縄のキングシーサーのように人類に友好的な怪獣です。政府はダイゴロウがゴリアスに立ち向かったのに目をつけて、ダイゴロウをフルパワーにすればゴリアスに勝てるんじゃないかと」
「……勝手な話だ。この間まで小さくなれ、成長するなと言っておいて今度は大きくなれ、成長しろだなんて」
斉藤は怒りを滲ませていた。斉藤自身もダイゴロウを使ってゴリアスに対抗するのは反対だった。ダイゴロウを兵器のように利用することは彼にとっては許せなかったのだ。
「気持ちは分かりますが、決まった事ですから……それに餌に関してもダイゴロウが日本を守ってくれると言うならと、予算を大幅に増やすことになりましてね」
鈴木が申し訳なさそうに言いながら資料を机に置く。すると斉藤は
「……わかりました。ですがダイゴロウを無理矢理ゴリアスに戦わせる気はありません。ダイゴロウが自分から戦うと言ったら応じます」
と答えを出すのだった。その後ダイゴロウが歩けるくらいにまで回復し、斉藤が話しかける。
「ダイゴロウ、お前を試そうという政府がいる。ゴリアスに勝てるかどうかってな……」
斉藤がそういうとダイゴロウは自分から怪獣ポーズをとり始める。斉藤はそれを見て理解した。
「やるつもりなんだなダイゴロウ?」
斉藤が問いかけるとダイゴロウは頷きながら唸った。斉藤は鈴木に電話をし、ダイゴロウがやる気だと告げるのであった。
◇ ◇ ◇
「ダイゴロウに火炎能力がある可能性だって?」
斉藤は目を丸くした。高木の提案は意外だった。
「はい!」
高木が熱弁する。
「ダイゴロウの母親の資料を見たんです。あの母怪獣が戦う時に炎を吐いていたのを。ダイゴロウの遺伝子データを見せていただければ……」
鈴木が眉をひそめる。
「個人の意見でそんな重大な変更ができるわけがないでしょう」
しかし斉藤の心は動いた。ダイゴロウが母親と同じ技を使えるなら……
「一度試してみる価値はあるかもしれない」
「みんな!ダイゴロウが炎の練習をするよ!」
高木の声に子供たちが集まる。彼らの手作り応援旗が風に揺れる。
「頑張ってダイゴロウ!」
「お母さんみたいにできるよ!」
ダイゴロウは照れくさそうに尻尾を振った。
「肺胞に酸素を取り込んで……」
指導を受けながらダイゴロウが息を吸い込む。しかし……
「ブフッ!」
吹き出したのは白い煙だけだった。
「まだまだだな……」
鈴木が腕を組む。
「焦っちゃダメだよ」
高木が励ます。
「私の発明だってすぐには成功しなかったんだから」
ダイゴロウは高木の手を舐めた。共感できる相手だと悟ったのだろう。
「もう一度」
その夜遅くまで訓練は続いた。ついに……
「ガァーーー!!」
火花が散った!
「やりましたね!」
子供たちが歓声を上げる。
完璧ではないが確かに一瞬の炎。ダイゴロウの目が自信に満ちていく。
「これで……戦えるかもしれない」
斉藤の胸に熱いものが込み上げた。それは友情という名の小さな灯だった。
◇ ◇ ◇
それから一週間後、自衛隊は日本各地の工業地帯に出現しては暴れて熱エネルギーを奪った末に逃走するゴリアスの潜伏場所を嗅ぎつけた。現在ゴリアスは能登の海辺で休息しているらしかった。その報は斉藤達にも届いた。そんな中斉藤がダイゴロウのとこに行くと高木がダイゴロウに話しかけていた。
「なあダイゴロウ。俺は未だに親のすねをかじって生活してる。発明で何とか一山当てようと思っているけど現実は中々うまくいかない。そんな俺をお前に重ねてお前の餌代を寄付したんだ。しかし、お前凄いじゃないか。一度自分を打ち負かしたゴリアスの奴に再び挑もうとするなんて」
高木はダイゴロウの頭を撫でて優しく語りかけていた。そんな中で斉藤が高木に話しかける。
「高木さん、ありがとうございます。しかしダイゴロウはあなたの発明同様に苦戦が続いています」
「ええ……でも根拠のない自信を信じてみてもいいと思いますよ。私だって根拠のない自信で成功しようとしたんです。だから私も一緒に戦おうと思います」
「えっ?どういう事ですか?」
斉藤が尋ねると高木はニヤリと笑いながら鞄からあるものを取り出した。それは……シートの様なものだった。
「何ですかそれは?」
「私が発明した遮電シートです。これをゴリアスの角にかぶせてしまえば奴は光線を撃てなくなるという訳ですよ」
「ほう……あなたは自分の発明にプライドを持っているようですね」
斉藤がそう言うと高木は笑みを浮かべた。
「勿論です。私はこれでもプロですから」
「分かりました。ダイゴロウは我々のチームと一緒に行動します。あなたも一緒に行ってください」
こうしてダイゴロウは高木を乗せてゴリアスのいる能登に急行することになった。能登に到着した時、高木は自衛隊員達と共に休息しているゴリアスの元に先行した。ゴリアスは海岸に寝そべり、いびきをかきながら眠っていた。
「よし、今のうちに遮電シートを奴の角に被せましょう」
高木はゴリアスにそろりそろりと近づく。危険な作戦だが、成功すれば後に戦うダイゴロウが楽になるのだ。ダイゴロウは陸地に着くと森に隠れながら様子を伺っていた。自衛隊のヘリから双眼鏡で高木を見守る斉藤。慎重に進む高木。遂にゴリアスの角に手が届く。そして……
「今だ!」
高木は遮電シートをゴリアスの角に被せることに成功した。遮電シートはシールの様になっており、ゴリアスの角にぴたりと貼り付いた。これでゴリアスは光線を撃つことは不可能になったのだ。その時……
「グオオオオッ!?」
ゴリアスが起き上がり驚きながら高木を見やる。
「高木さん!危険です早く退避を!」
無線で斉藤がそう言う中、ゴリアスは角に貼り付けられた遮電シートを剥がそうと暴れ出した。その際足を滑らせてしまったゴリアスは海にどぼんと落下する。それは大きなチャンスだった。斉藤は無線機でダイゴロウに呼びかける。
「ダイゴロウ!今だ!」
「了解しました!ゴリアスが落下した付近に飛行して!」
斉藤はヘリのパイロットに指示を出す。斉藤達が乗るヘリがゴリアスが落下した付近に飛ぶと同時にダイゴロウが駆け出してきた。水しぶきをあげながら水中から這い出ようとしているゴリアス。ダイゴロウはゴリアス目掛けてタックルする。不意を突かれたゴリアスは呆気に取られながら波に飲まれていくのであった。
「うおお……凄い威力だ!」
斉藤はダイゴロウの強烈なタックルに圧倒される。ダイゴロウはゴリアスの巨体を掴むと砂浜まで引きずった。そして……ダイゴロウは再びゴリアスと激突するのだった。
「フゴォーーー!」
ゴリアスの咆哮が海岸に響き渡る。体勢を立て直した青い巨獣は両腕を広げ、ダイゴロウを迎え撃つ姿勢をとった。
「前回とは違うぞダイゴロウ!」
斉藤が双眼鏡を握りしめる。
ダイゴロウは慎重に距離を計った。巨体を活かしたヒット&アウェイ戦法。彼の目は以前の敗北を糧にしていた。
「来た!」
ゴリアスの剛腕が横薙ぎに振られる。鈍重な動作だが破壊力は絶大だ。
ダイゴロウは僅かなステップで回避。砂塵が舞う中、素早く懐に潜り込んだ。
「ガルッ!」
腹部への鋭いパンチ。効果は薄いが確実に敵の注意を分散させる。
「右!」
斉藤の指示通りに方向転換。背後から足首への低空タックル。
「グモォ!?」
ゴリアスがよろめく。この隙を逃さずダイゴロウは跳躍。
「頭頂部!」
爪の一撃が角の付け根を捉えた。遮電シートの接着部分が軋む音。
「やった!」
高木が拳を握る。
ゴリアスの動きが鈍り始めた。ダイゴロウの計算された攻撃パターンが効いている。
「決めてやれダイゴロウ!」
その時—ゴリアスの目が赤く光った。
「まずい!」
怒り狂った巨獣が地面を殴りつける。振動が大地を揺るがし、ダイゴロウの足元が崩れた。
「避けろぉ!」
斉藤の絶叫と同時に……
ズドンッ!
巨腕が砂を掘り起こす。辛うじて躱したダイゴロウだが、砂埃の中からゴリアスの尻尾がダイゴロウの殴打する。
「!!」
思わず尻餅をついてしまうダイゴロウ。逆転したゴリアスはダイゴロウに追撃しようと迫るが――、
ダイゴロウは切り札である火炎放射を放った!火炎はゴリアスの角に命中しゴリアスの角を破壊した。
「!?」
角を破壊されたゴリアスはその場に倒れこみ、気絶してしまった。その一方ダイゴロウも全身ボロボロであり体力も限界だった。
「ダイゴロウ!しっかりしろ!」
斉藤達の呼びかけで再び目を覚ましたダイゴロウは斉藤達を安心させるために拳を上に掲げた。
「やったなダイゴロウ!君の勝ちだ!」
ダイゴロウとゴリアスの戦いの一部始終はカメラを通じて全国に中継されており、全国の子供達がテレビの前でダイゴロウの勝利を喜んでいた。
それから一ヶ月後ダイゴロウは月見島に帰ることになった。当然ながらダイゴロウの餌代は無償で賄われることとなり、成長抑制剤の投与も中止された。
ちなみにダイゴロウに敗北したゴリアスは完全に戦意を喪失しロケットにくくりつけられて宇宙に送り返されることになった。月見島の施設に移動する日、子供達がダイゴロウの見送りに来ておりダイゴロウの周りで別れを惜しんでいた。そんな中一人の子供が斉藤に尋ねる。
「ダイゴロウ行っちゃうの?」
「そうだよ。でもまたいつか会えるさ」
子供達はダイゴロウに沢山のプレゼントを渡し別れを惜しんだ。ダイゴロウが帰る日の朝、見送りの人達が来た。特に鈴木と高木が見送りに来ていた。
「行ってこい!ダイゴロウ!」
「君ならもっと強くなれるさ」
ダイゴロウは一礼し月見島に向かって泳いでいった。子供達は歓声を上げ手を振った。子供達が居なくなった後斉藤は鈴木と高木と対峙した。
「ダイゴロウに会えないのが寂しいですね」
「しかし良かったんじゃないですか?子供達があんなに喜んでいるんですから」
「ええ……」
そんな中高木はこう言う。
「しかしまあ私も良かったですよ。これでダイゴロウを助けた英雄として本の出版依頼が来たりしてねえ」
高木が冗談っぽくそう言うと斉藤は真面目な表情で高木に言った。
「そういう事でしたら結構ですよ。こちらとしても感謝していますしダイゴロウの為なら何なりとさせてもらいます」
高木はその言葉を聞いて笑みを浮かべるのだった。斉藤は、
「さて、俺も月見島に向かわないと。何せダイゴロウの飼育係だからね」
踵を返す。鈴木は斉藤に、
「これからも仲良くやりましょう」
そう声を掛ける。斉藤は
「ダイゴロウへの無茶ぶりはやめてくださいね」
と冗談めかして答える。斉藤はそのまま月見島に帰っていった。
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