最強吸血鬼でオバロ 作:Revak
陽光聖典を殲滅し死体をトブの大森林に投げ捨てたディはカルネ村を出ていった。
向かう先はエ・ランテルという城塞都市だ。
そこに行けば冒険者という誰でもなれる仕事があるので仕事して食っていけるだろと思っての行動である。
そうしてエ・ランテルに辿り着き、門前の検査の列にディは並んでいた。
そして当然──めちゃくちゃみられる。
何せ絶世の美女だ。傾国の美女といっていい容姿をしており勝る女など早々いない。
そのために注目を集めるのは当然で、ディはそんな視線を受け内心喜んでいいやら落ち込めばいいのかわからないでいた。
そうして待っているとついにディの番がくる。
門横の検問所にディは通された。
入った途端。空気が変わったのを兵士たちは感じた。
美女である。これまで人生で一度も見たことがなく見ることも出来ないはずの美女である。
この体だけで一生食っていけるだろう美を持つ女に兵士は固まった。
「……なにか?」
いつまでも動かぬ兵士にそう問いかけるとようやく兵士が動き出した。
「え、えっと。エ・ランテルには何の用で?」
「仕事を探しに。冒険者になりにきました」
その回答に兵士は疑問を抱いた。
この体なら娼婦なりメイドなりやりようがあるはずなのによりにもよって冒険者とは。その美貌が削られたらどうするのかといらぬ心配を抱いた。
「そ、そうですか……えっと、もう大丈夫です」
「わかりました。それでは」
そうしてディは検問所を出てエ・ランテルに入っていった。
その後検問所内で話題になったのは言うまでもないだろう。
■
(ここがエ・ランテルか。テーマパークに来たみたいだぜ。テンション上がるな~)
などと考えながらディはエ・ランテル内を歩く。
当然周囲から注目を集めまくる。そのことにディは内心自尊心を満たされつつある。
少し歩くことで目的地である冒険者組合に到着し、ドアを開けて中に入る。
入ると中に居た冒険者と受付嬢たちからものすごい目線を受ける。圧倒的美を持つ存在であるために仕方がないことだ。
それに対しディは自尊心が満たされていく。
受付に行く。
「すまないが、冒険者として登録したいのだが」
その台詞に一瞬受付嬢は固まった。これほどの美貌を持つ女が冒険者なんて言う荒事をする仕事に就くとは思えなかったのだ。
だが一瞬経って前例が居ることを思い出し受け入れた。青の薔薇のラキュースは貴族令嬢にもあるにもかかわらず冒険者として大成している。
「新規登録ですね、わかりました。銀貨一枚かかります」
「これを」
ディはアイテムボックスからこの世界の銀貨を取り出した。カルネ村で貰った数少ない銀貨である。
「ありがとうございます。こちらに名前を書いてください」
「わかった」
ディが装備している指輪には低位言語の理解の魔法が込められたものがある。これは読み書きが可能になるという物だ。
それがあるために王国語を問題なく読めて書ける。名前を書いた。
「はい、ありがとうございます。講習がありますが受けますか?」
「受けます」
「わかりました。では二階で講習をするのでついてきてください」
そうしてディは二階に上がっていった。
その姿を冒険者たちは見ていた。主に階段を上がるときにケツを見ていた。
ドレス着たお嬢様が冒険者かよ。道楽か? 実力はあるのか? 貴族令嬢が没落してなったとかか?
けどエロイ体してるよな。冒険者してるぐらいだし頼めば一発やれそう。
などと下品な話を冒険者たちはしていた。なお土下座して頼み込めばしょうがないにゃあと一発ヤらせてもらえるのは間違ってない。
講習を受けたディは組合から出てくる。
組合から美女が出たことで周囲を歩いていた者たちは固まり、ディの胸に輝く銅のプレートを見て二度固まった。
なんであんな美女が冒険者なんて、と思うのだ。ディは周囲の視線を感じながらも教えられた宿屋に向かった。
暫く歩くことで目的地の宿に着いた。
(ここか)
着いた宿のウェスタンドアを開けて中に入る。
中は一言でいうと汚かった。
食べかすやらなんやらが床の木と木の合間に挟まってるし窓枠は埃っぽい。
周囲の目線を受けながらディはカウンターに進む。
ディが口を開く前にカウンターの店主が口を開いた。
「宿だな。相部屋で一日五銅貨だ。飯は──」
「一人部屋を希望したい」
「……悪いが一人部屋なんてものはない」
店主はじろりとディを睨んだ。そのにらみに対しディは微笑みで返した。
「なら二人部屋は?」
「あるが……あんた、銅級だろう。なんで相部屋を進められたかわからないのか?」
「……他の冒険者と仲良くなってチームを組ませるためだろう? けど、私には必要ないね」
「ほう、なんでだ」
「私が強すぎて──他のものとパーティなんて組めないからさ」
その台詞にどっと笑いが起こった。
女が言う自分強いですよ、なんて笑い話にしかならない。
店主も苦笑いをした。
「まぁ、それでも一人がいいってんなら二人部屋でいいぞ。七銅貨だ」
「わかった」
ディはアイテムボックスから七銅貨出した。
虚空から銅貨を出したことに店主は驚いたが即座に納得した。この世界にも似たようなことが出来る魔法はあるのである。
ディは支払いを済ませ部屋の鍵を受け取ると二階への階段に向かう。
歩いてると途中、鉄級の冒険者の男が足を出した。
面倒だしそのまま踏みつぶそうかな、と思ったがエレガントではないのでそれはやめた。
相手に乗ってやろうとわざと足をぶつけた。
「おいおいいてぇじゃねぇか! こりゃ慰謝料もんだな!」
「悪いね。小さすぎて見えなかったよ」
「あぁ?! こりゃその体でどうにかしてもらわねぇとなぁ?!」
男たちは三人ほどでディを取り囲んだ。
男はそういうも本当にそうしたいわけじゃない。嘘だ。八割ぐらいワンちゃんないかと願っている。
本当の狙いはこういったチンピラもいますよ、冒険者は危ない仕事だと美女に教えているのだ。命の危機だってある。
それぐらいならばその容姿で娼婦でもした方が千倍ましだろう。モンスターのクソになりたくなければ。
そう言ったことを言外に伝えようとしているのだ。
「ふふ、若いね」
「あぁ?」
ディは男の頭を掴んで持ち上げた。
そのことに酒場の者たちが驚く。圧倒的パワーがないとできないことだからだ。
ディはそのまま男を適当に放り投げた。
ガシャン、という音がした。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
甲高い叫び声が響いた。
「そ、そこのあんた! 何してくれるのよ!」
そう詰め寄るのは赤い髪の女の冒険者だ。
「あんたのせいで私のポーションが割れちゃったじゃない! 弁償しなさいよ!」
「……ポーション程度、また買えばいいだろう?」
「程度ですって?! 私が倹約に倹約を重ねようやく買った物をよくも! 金貨一枚と銀貨十枚もしたのよ!」
「そうか……」
(あかんそんなに金もってねぇ)
ディは慌てた。
「……私に絡んだのはそこの人間だ。こいつらに払わせるのが筋だろう?」
「とはいっても……あんたらいつも飲んだくれてるから金なんてもってないでしょ?」
その問いかけに男たちは苦笑いで返した。図星であった。
「現物でも構わないからさ、あんたそんな身なりしてるし金は持ってるでしょ?」
ドレスを着た冒険者など早々いない。ゼロとは言えないが、それでも金を持ってるのは確かだろう。
「わかった。現物でいいのなら」
そういうとディはアイテムボックスからポーションを取り出した。
赤いポーションである。
それを女冒険者に渡すと女は怪訝な目をしながらも受け取った。
では、とディはそそくさと二階に上がっていった。