最強吸血鬼でオバロ 作:Revak
翌日の朝。ディは冒険者組合に来ていた。
ボード前でじーと依頼を見る。
(うーん。いい依頼ないな)
あるのはどぶ掃除やゴミ拾いばかりでモンスター退治の依頼どころか薬草採取すらない。
そう言った依頼は鉄級からになるらしい。
(あ、そうだ)
いいことが思いついた、とディは受付に進んだ。
「聞きたいんだが、ランクが上の依頼を受ける方法はあるか?」
「ありません。決められたランクの仕事しか受けることは出来ません」
「そうか……なら、銅級で受けれる依頼で最も難易度が高い依頼を見繕ってもらおう事は出来るか?」
「それならば可能です。お探ししますね」
「頼む」
「──でしたら私たちの話を聞くのはどうでしょう?」
そうディに話しかける者が現れた。
金髪碧眼の若者だ。
「あなたは?」
「私はペテル・モークです。少し仕事の話があるので、二階まで着いて行っていいですか?」
「……いいでしょう」
そういうとディは面白くなってきたとペテルの後ろをついて行った。
二階に上がり適当なテーブル席に座る。
そこには既にペテルの仲間だろう冒険者たちが居た。
「えっと、改めまして。私がチーム漆黒の剣のリーダーペテル・モークです。戦士を生業としています。こちらがルクルット・ボルブ。チームの耳と目、レンジャーです。ダイン・ウッドワンダー。
軽く紹介をされる。
「ディ・フランケリヒだ。よろしく」
「はい! 質問です!」
そうルクルットが手を挙げた。
どうぞ、とディが返すと席を立って手を向けて頭を下げてきた。
「惚れました! 一目ぼれです! 付き合ってください!」
「お断りします」
「ではお友達からどうでしょう!」
「初対面の人に告白する人と友達にはなりたくありません」
ディの本心だ。
告白とは段階を踏んでからするものであり初対面の相手や一方的に相手を知っている相手にするものではない。それらはコミックだから許されるのだ。
「おきついお返事ありがとうございます! それでも俺は──ぎゃ!」
何か言いかけたところでペテルがルクルットの頭を叩いた。
「仲間がご迷惑を……」
「……お気になさらず」
そうディは微笑みで返した。
二人とも席に座ってペテルが咳払いと共に話を戻した。
「えっと、仕事の話に戻ります。モンスターを倒せばその討伐数に応じて組合から報酬金が出ますよね? 今回はそれが狙いとなります」
「なるほど。依頼を受けている訳ではないと?」
「はい。トブの大森林外周を回り出てきたモンスターを狩る形になります」
「いいね。期間は?」
「三日ほどを予定しています。準備は必要ですか?」
「しゅぞ……マジックアイテムを装備しているから食事も睡眠も必要ないよ。もう出発できる」
「わかりました! ではさっそく行きましょうか!」
「その前に、なぜ私に声をかけたの?」
「それは宿屋の一件を耳にしたんです。鉄級の冒険者を吹っ飛ばしたと話題になっていましたよ」
「なるほど、納得した……では行こうか」
「はい!」
そうして一行は席を立って階段を降りていく。
完全に降りる直前。受付嬢がやってきた。
「フランケリヒさん。ご指名の依頼が入っています」
その言葉に組合に居た者たちが驚いた。
銅級への指名依頼など早々ない。一体何なのか、と。
「どなたから?」
「ンフィーレア・バレアレさんからです」
横からすっとンフィーレアが出てきた。
金髪碧眼の長い髪で目元を隠している少年だ。薬師の格好をしている。
「初めまして、僕がンフィーレア・バレアレです。ディさんに依頼を持ってきました」
「悪いけど、その依頼を受けることは出来ない。ほかをあたってくれ」
その台詞に驚いた声を上げるのはペテルだ。
「ディさん! 指名の依頼ですよ!」
「だとしても、私は既にあなた達と仕事の話を決めている。先に受けた方を優先するのは当然でしょう」
その台詞に冒険者たちの好感度が少し上がった。
「……せめて話を聞くぐらいはしてもいいんじゃないですか?」
ペテルがそういうのでディはそこまで言うのなら、と話を聞く姿勢を見せた。
さっきまで座っていたテーブル席に座って話を聞く。
「今回の依頼はトブの大森林への薬草採取です。そのためにカルネ村で一晩泊まります」
(薬草採取か……苦手な依頼だな……断る……いや)
「でしたらペテルさん。私に雇われるのはどう?」
「え?」
「私は戦闘力こそ高いけど護衛が出来るかと言えば微妙。守るには人手が居るし、薬草採取なら
「願ってもない申し出です。良ければですがトブの大森林外周近くを進むことで出現したモンスターを討伐するというのも居れていいですか?」
「構いませんよ」
「なら決まりです。受けさせていただきます」
「ありがとうございます!」
こうして依頼を受けることが決まった。
■
エ・ランテルの外をディと漆黒の剣、ンフィーレアは進む。
ンフィーレアは荷馬車に乗って、その周囲をディたちが囲うように立って歩いている。
一行は少し雑談を交わしながら進む。
「なぁ、ディちゃんはどこから来たの?」
そう問いかけるのはルクルットだ。
「遠い遠いところから……ユグドラシルという国から来た」
「ユグドラシル……聞いたことないなぁ。南方の方かな」
「そこよりもきっと遠い場所だね」
「そっかぁ。なんでこっち来たの?」
「うーん。事故のような形できたからね。何とも言えないよ」
「そっかぁ……元居た場所には帰らないの?」
「帰れないね。故郷はなくなったから」
その台詞に少し重い空気が流れた。
「それは……すみません」
「ああ、気にしなくていい。もう割り切ってるから」
そういわれても重い空気はなくならない。
ディは気を使って話題を振った。
「君たちの漆黒の剣というチーム名には何か理由があったりするの?」
「ああ……十三英雄の物語に出てくる暗黒騎士の四大魔剣をモチーフにしてます」
「……暗黒騎士?」
「ディさんは知らないの? 魔神を打倒した英雄の一人で──」
そのあと重い空気を振り払うように一行は楽しい楽しい会話を繰り広げるのだった。