「………どこだ、ここ?」
目が覚めた時、まず俺が感じたものは違和感だった。寝ている場所がおかしい。俺は布団派のはずなのにベットで寝ていた。てか俺が今いる部屋も知っている部屋じゃない。
拉致か?いや、だったらもうちょっとこう手とか拘束とかするんじゃないのか?部屋には鍵もかけられていなかったし……かなり怖いが、ちょっとここを探索するかな。
まずは情報を得るために自室にあったテレビや置いてあった新聞を見た……そしたら出る人間が全員天使の輪っかが生えてかつ銃火器を携帯していやがった。天使×銃とか誰得だよ、大サバゲーブーム到来か?と思って見ていたら俺はあることに気づいた。
テレビに出てくる人間が学生しかいない。ニュース番組の取材が学生ばっかという意味じゃない、コメンテーターやらADやらが全員10代くらいの少女がやっていた。大人っぽいのもいたにはいたが、そいつらは全員モッフモフの二足歩行の動物だった。
その光景に頭痛がした俺はテレビを消して、顔を洗うために洗面台に行った。多分今俺は漫画やらゲームでよくある異世界に来ていると思う。
もしかしたらと思って鏡に写った俺を見た。鏡の俺は毎朝見ている俺と変わりはなく転生じゃないらしく落胆した。
でも俺の頭の上には彼女達の浮いていた天使の輪っかが浮いていなかった。いつもの俺が佇んでいてちょっと安心した。あとこの家はユニットバスじゃないところは高評価だ。
次にリビングの方で、もしものために食料を探していたら、机の上に“学生証”と“入学届”が置いてあった。学生証には撮った覚えのない俺の顔写真と隣には見慣れない言葉があった。
「竜頼……あぁ“りゅうらい”って読むのね。んでリュカ、竜頼リュカね」
そのキラキラネームに思わず失笑した。振り仮名のおかげでギリギリ読めた可笑しな名前、なんの悪戯か知らないが俺の名前は───
「────なんだっけ?」
俺には普通の名前があったはずだ。それこそ一目見て簡単に読めるようなそんな名前、でもそれがなんだったのかわからなくなった。それどころか自分の名前が分からないと知ると、竜頼リュカが俺の本名に思え初めて来た。
この不思議仰天怪現象について俺は考えても分からなかった。分からないので本名を覚えるまで俺はこの仮初の竜頼リュカの名前を名乗ることにしよう。
「しっかしリュカね、トンヌラとかの名前じゃなくて良かった……」
トンヌラっていうのはドラクエ5に登場する主人公の名前を付けようとパパス考案の名前だ。小説版の主人公の名前がリュカだったので思わず連想してしまった。そう考えると竜という苗字も何か因果を感じる。
学生証について調べられる点はないな、次は“入学届”だな
なるほど、どうやらこの入学届によれば俺は“アビドス高校”というところに明日から通うことになるらしい……明日ぁ!?
「おまっ!?嘘だろ!?」
俺まだこの辺りの地理やら制服すらも知らんのだぞ!?…一応こんな異常事態ではあるが学校には通おうと思っている。だって何か情報がわかるかもしれないからな。
次にクローゼットに行った。外に出かけるのは朝飯食ってからにしよう。冷蔵庫にあるかしらねーけど。
俺の部屋に茶色いクローゼットが置かれており、そこを開くと。何着かの私服の他に
「おぉ!」
黒いジャケットに水色のネクタイが中央に目立つ制服が置かれていた。3着ほどあり、そのうち2着は夏服だった。
しかし困った俺は中学の時、学ランだった。これどうやって着るんだ?特にネクタイとか付け方分かんねー……とりあえずこれは封印、あとでネットとか検索すれば……いや、そういえばスマホってあるのか?
お!あった!あった!ベットのところで充電してあった!でも俺が使ってたのと型が違うな、なんか全体的にスタイリッシュだ。俺が使ってたよりも高性能だ。ええっと、どう操作して……あっこれ顔認証か
中の画面は非常に簡素でスマホ買ったばかりですって感じだった。特に目ぼしいものとかはなかったが、一旦だけ気になるものがあった。
「
開いて中を確認すると、どうやらこれはメッセージアプリらしい。顔写真と誕生日と一言メッセージを入力するらしい…えっこれアイコンまじの写真じゃないとダメなの?……これプライバシー的に大丈夫そ?あとトークを交換したやつはいないらしい、よかったいた方が怖かった……
あとネット検索等は可能っぽい、おぉ!文明の力じゃあ!
「じゃああとは外だな」
「………はは、マジかー」
冷蔵庫にあった食材で簡易的な朝飯を作って食った後外に出て俺は呟いた。リビングに置いてあった財布の中の通貨が円だった事もあって、ここは日本のパラレルワールドとか未来の日本とか?と考えていた。
だが空に浮かんでいる巨大な輪っかを見てその考えは甘ちゃんだったことが証明された。
「もしかして今俺は巨大な人間の頭の上にいんのかな……」
何十にも重なっている神秘的なそれを見て俺はくだらない感想しか言えなかった。
道を歩くこと数分、俺はある事態に直面した。
「オラオラ、ここを通りたけりゃあ金置いてけよ!」
「いや、あの……その」
「あぁん!?なんだぁ?」
「ヒィ!」
俺氏カツアゲにあってるでござる。いや笑い事じゃねぇよ、歩いていたらいきなり後ろから突き飛ばされて囲まれた。敵は3人、俺を囲むようにいる。
さて、ここは中学時代テロリスト撃退妄想通算100回の俺が華麗に行きたいところですが、銃を突きつけられて動かないでござる。
「あ、あの。か、カッコいいですねその銃、まるで本物みたいダー」
「……何言ってんだ?テメェ、本物みたい?」
俺の秘技「煽てて曖昧にして逃げよう作戦!」を実行していたら、突如目の前の不良の感じが変わった。俺のことを金づるから頭のおかしいやつって見るみたいに
「えっと、何かお気に……」
「こ!れ!が!ニセモンに見えるのか!テメェ!」
何が地雷だったのか、先ほどまでふざけ半分な感じの不良が落下の如く怒り出して俺に突きつけていた銃の引き金を引いた。
「お、おい!そいつヘイローねぇから撃つな……!」
仲間の言うヘイローってのが良く分からなかったが、とにかくもう時すでに遅く、銃口から弾丸が発射された。ここでやっと気づいたこれ本物の銃だってことに
ゾーン状態ってやつかなぁ、自分に飛んでくる弾丸がスローに見える。スローに見えるけど動かないから意味ないけどなぁ!あーくそ、異世界来て昔ながらの不良(天使)に銃殺されておしまいってシュールすぎんだろ!
て、1人で内心アレコレ言ってても時間は止まらず、着々と俺の元へ弾丸は加速している。
あーらら、せめて制服に袖通したかったぜ。ま、来世があるんだったら来世に期待……
「ピキー!」
次に俺が感じた痛みは銃弾ではなく、サッカーボールのようなものが腹にぶつかった痛みだった。
「ぐふっ!?」
その衝撃で3メートルほど吹き飛ばされて、ろくに受け身も受けられずに地面にぶち当たった。恥ずかし………くはないな、もう十分恥ずかしい間に合ってる。
何が俺の腹に当たったんだ?めちゃくちゃ腹痛いし口の中に砂入っているけど、それのおかげで銃弾は避けられたからいいけど。
「プルプル」
「ん?」
「ピキキー」
「え?」
「ピキー!」
「ゑ?」
俺の腹の上にいたのは青い雫状の身体をプルプルと揺らしながら文字通り貼り付けたような笑みを浮かべた軟体生物が佇んでいた。
「な、なんだ!?そのバケモンは!」
「どっから現れた!?」
「っ!ヘイローが無ぇ奴が歩いているわ、変な化け物が現れるわなんなんだ今日は!」
不良の反応は三者三様だった。その生物としてあり得ない肉体を持ったことに対しての驚愕、どこから現れたのかという疑問やらであった。
当然俺も驚いたが、それはこの不良たちとは違う。俺が最初に遊んだゲームの雑魚敵、日本のRPGの歴史を変えた存在、子供の頃に化学教室で作ったはいいものの数日後固まってガチ泣きした思い出がある。
ある意味向こうでの俺の人生を共に歩いていたと言っても過言ではない
「スライム……?」
かつて画面の中で戦っていた愛すべき存在の名前を俺は呆然と呟いた。
そいつは目の前にいる不良たちの存在に気づくと、俺の身を守るかのように前に立った。ここからは見えなかったが「ピキー!」と威嚇するように唸った。
「く、喰らえ化け物!」
銃を構えて撃とうとするが、スライムがそれを察知して空高く飛び上がる。
「っ!眩し!」
宙に飛んだスライムに釘付けになったことにより、太陽の光に目が眩んだ不良達、その隙をついて体当たりを喰らわせる。
「グハッ!」
おそらく俺を銃弾から守ったのと同じ、いやそれよりも数段強いタックルをぶちかます。
「くそっ!当たらねぇ!」
ライフル?を構えた不良が銃を乱射しているが、スライムは回避しつつ近づいてカウンターのタックルを喰らわす。ってかスライム強くね?このままあの不良倒せるんじゃね?
と思っていたら
「これならどうだ!!」
不良がポケットから何かを出して地面に叩きつけたと思ったら凄まじい音と光で周りが見えなくなってしまった。次に俺の目が見えるようになった時には
「なっ……」
スライムは不良に捕まっていた。先ほどよりも力弱いピキーという鳴き声を発しながら
「ハッ、これで形成逆転だな」
「散々てこずらせやがって……覚悟はできたんだろうなぁ?」
あぁそっか、スライムが不良に圧倒していた理由はすばしっこさと体の小ささで弾丸が当たらなかったからだ。日光の目潰しも時間が経って慣れた時に不良の閃光弾を喰らえばその有利性も失われるからだ。
マジで今度こそ死ぬんじゃねえの?俺、いきなりスライムが出てきて驚いたけどそれもここまでかぁ。
……そう思っていた時、俺の脳内で妙なものが現れた。特徴的なデザインのキャラがプリントされた絵に上には数字、下にはそのキャラの名前が書かれた図鑑のようなものが
そのほとんどのキャラが薄暗くなっているが、数少ない数体は明るくなっている。そのキャラ達に見覚えがある。
もしかして、と思い俺はコウモリをデフォルメしたようなキャラクターを選んでみる。
「ドラッキュー!」
俺の脳内の図鑑と記憶の中と寸分違わぬ姿のコウモリ型のモンスターが俺の目の前でパタパタと羽を動かしながら飛んでいる。そして後ろを振り向いて俺の方を見てくる、どうやら俺の指示が欲しいらしい
「ドラキー……よ、よし!スライムを助けてくれ!」
ドラキーにそう命じると、コクンと頷きまだ目を白黒させている不良達に突撃した。
後はもう簡単に終わった。スライムにもビックリしていた不良達は新手にビビって逃げていった。ただ逃げる際に悲鳴上げながら逃げたのは解せないな。そんなに怖いか?コイツら、可愛いのに
「ふぅ……とりあえず危機はさったな。ふりょうのむれは いなくなった!ってか」
「ドラキュッキュ!」
「ホント、お前らのおかげだぜ。ありがとうなぁ……しっかしなんでお前らこんな所にいるんだ?もしかしてここドラクエの世界か?」
ドラクエモンスターズジョーカー3じゃ、確かに荒廃した都市はあったし、天使って種族もいたが……こんな砂漠に覆われた都市ドラクエにあったか?それに天使も確か本来頭に浮かんでいる光輪のおかげでただの人間には見えないはず
というよりもそもそもあんな銃火器ドラクエにあったか?あったとしてももうちょっと古めかしいと言うか中世!って感じの見た目のはずなのに……あれじゃまるで
「お前達はなんか知らないのか?」
「ピキー!」
「いやピキー!じゃなくて」
ドラクエ大辞典
スライム
ご存知世界で一番有名なモンスターであり雑魚敵界を代表するモンスター、コイツを倒さなければドラクエは始まらないと言ってもいい、ある意味先生のような存在、戦闘能力、報酬はシリーズ最弱……なおシリーズによっては序盤の敵の座を譲ってるケースもあり、攻撃方法はタックルが基本。初登場はドラクエ1
ドラキー
デフォルメされたコウモリの姿のモンスター、戦闘能力はスライムよりも一回り高いが、それでも最弱クラスではある。攻撃方法は噛みつき。同じく初登場はドラクエ1
総じて今回の不良に勝てたのは偶々であり、存在の異質さによるハッタリに近く、何かが噛み合ってなければリュカはやられていただろう。