平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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夏休み


白き龍皇11

 

「やあ、しばらくぶりだな、イッセー、グレモリー、塔城」

ヴァーリはそう言ってにこりと笑う。

「ヴァーリ…」

「グレモリーと塔城は可愛らしい格好をしているな。よく似合っていると思うよ」

「あ、ありがとう…」

「ヴァーリ、何で"敵"を褒めてるんだよ」

「女性が見慣れない可愛らしい格好をしていたら、褒めるのは礼儀の内だろう?それに、俺は短い間とはいえ、"学友"だった相手にあまり手荒なことはしたくない。…今日は戦いに来たわけじゃあないしね」

アイコンタクトをして黒歌が一歩前に出る。

 

「…やっぱり、あの時ギャー君に言っていた言葉は私に向けての言葉でもあったんですか?ヴァーリさん」

「何のことだ?」

ヴァーリは平然と首を傾げてみせるが、その瞳は穏やかで優しい色をしている。

「グレモリー、うちの黒歌を暫く貸してやる。同じ猫魈同士、塔城の力を伸ばす手助けもできるだろう」

「…それで、そちらに何のメリットがあるのかしら、ヴァーリ=ルシファー」

「俺が駒王学園に通っている間、こいつらには苦労をさせたからな。部下の労をねぎらい、ご褒美を与えるのも"王"の役目だろう?」

「・・・」

「黒歌は少々(・・)痴女の気はあるが、己の力に傲らず努力のできる良い子だよ。基本的には、人格にも能力にも問題はない。…天龍の子が欲しいと盛ることは偶にあるが」

「ヴァーリ、本人を目の前にしてその評価は酷いにゃ!」

「俺は事実を言っただけだが」

くすり、とヴァーリは笑う。

「そうだ、イッセーも"天龍"だぞ。俺よりあちらに頼んだらどうだ?」

「~~~~ヴァーリのばか!!大好きぃぃぃ!!!」

ぽかぽかと胸を叩く黒歌にヴァーリはあはは、と笑ってぽんぽん、と頭を撫でる。美猴はそれに呆れた視線を向けている。

「グレモリー、もし黒歌をそちらに預けることに魔王がいい顔をせず、説得も難しいようであればこれを見せろ。絶対に関係者以外には見せないよう注意をした上でな」

ヴァーリはリアスに向けて台座にはめられた水晶玉のようなものを投げ渡す。

「何よ、これ」

「俺なりの誠意だ。使う必要がなければ"中身"を見ずに破棄しろ」

「・・・」

リアスは溜息をつく。

「準備万端、ってわけね。…それで?黒歌さんはどれくらいの間こちらに貸してくれるのかしら」

「とりあえず、夏休み中は構わない。それ以上は本人たちの間で決めてくれ」

「――ヴァーリ、美猴、迎えに来ましたよ。気分転換はできましたか?」

「ああ。良い気分転換になった。…ああ、どうせだから紹介しておこう。彼はアーサー。俺の部下であり聖剣使いだ」

「アーサー=ペンドラゴンです。以後お見知りおきを」

アーサーは優雅に礼をした後エスコートするようにヴァーリの手を取る。ヴァーリは空いている方の手を振り、静かな笑みを浮かべて言う。

「それじゃあ、またな」

男三人が姿を消した後、アザゼルが走ってくる。

「今、さっき、ヴァーリって言わなかったか?!」

「一体どんな地獄耳にゃ…」

一歩遅かったけど。

「ん?お前黒歌、何で此処に」

「ヴァーリに、休暇をやるから妹のところに行ってこいって言われたからきただけにゃ」

「何だ、夜這いのしすぎで遂に三行半突きつけられたのか?」

「違うにゃ。正当な労働の報酬にゃ!」

「アザゼル先生、彼女と知り合いなの?」

「ああ。七年くらい前にヴァーリが怪我した猫を拾ってきてな。何かやらかした時に自分で対処(・・)する事を約束させて保護する事を許した。それがこいつだ」

「それって、彼女がはぐれになって殆どすぐ、ってことじゃない。っていうか、堕天使的にありなんですか、それ」

「普段我儘を言わない"いい子"だったヴァーリがどうしても、って頼んできたんだぞ?できる限り便宜を図ってやらないわけにはいかないだろ。…それに、それまでアイツの傍に悪魔は一人もいなかったからな」

「・・・」

 

「…で、今、ヴァーリのやつはどうしてるんだ?」

「どうしてる、って言われても…正直、一人で頑張ってる、って感じにゃ。勿論、私たちもヴァーリを傍で支えようとはしてるんだけど…大人の顔して愚痴も泣き言も何も言わないし、なーんか一人で抱え込んでる感じにゃ。多分、あんまりこのままにしておくと心労(ストレス)でどうにかなっちゃうにゃ」

「そうか…」

渋い顔をするアザゼルに黒歌は肩をすくめてみせる。

「多分、ヴァーリにとって私たちは守るべき部下にゃから、甘えられる相手って言ったらあんたくらいしかいないにゃ。…両親は死んでたらしいし」

「って言っても、会えないことにはどうにもできないだろ」

「あー…そのへん、ヴァーリは態と避けてる感もあるしにゃ」

「何…だと…?」

「ヴァーリは実質オーフィス様と並ぶツートップみたいなものだし。旧魔王派には大魔王様とか呼ばれてるし、すっかり王様っぷりが板についてる感じにゃ」

 

 

幸か不幸か、サーゼクスは黒歌がグレモリー眷属のサポートをする事に反対はしなかった。非公式にするように、という注釈はあったが。そして、ヴァーリがリアスに渡した魔導具が不要になったわけだが、一誠が言及したそれにサーゼクスが興味を持った。

関係者以外には見せるな、とのことなので、サーゼクスとその女王であるグレイフィア、リアスとグレモリー眷属、黒歌、アザゼルというメンバーで見てみることになった。ちなみに、黒歌はそれがどんなものかは知っていても具体的な中身は知らないらしい。

魔道具を作動させると、水晶玉のような部分から、ヴァーリの姿が宙に映し出される。

『このような形で失礼する。俺はヴァーリ=ルシファー。白龍皇であり、黒歌の現在の(ほごしゃ)だ。建前と本音を使い分ける"俺"だが、この場では真実のみを語ると誓おう。俺は今回、偽りのない本心を話す』

『故に、その場にグレモリーとその眷属がいるのなら、席を外させてほしい。若者に必要以上の苦悩をさせて、彼らの拳が鈍るようなことになっては俺も困る』

グレイフィアが魔導具を一時停止させる。

「どうします?」

「これだけでは、彼が語ろうとしているのがどんな話なのかわからないからね…リアスはどうしたい?」

「あんな、意味有りげな言い方をされたら気になるわ。でも…」

ヴァーリは、一誠たちの敵を名乗りつつも、一度も殺意や害意、敵意すら向けてきたことがない。魔王以上とも思える威圧感は向けられたが、それだけだ。

「彼の本心を知った上で、彼と本気で戦えるかどうか、自信がないわ」

 

結局、彼らはサーゼクスたちが一度見て内容を判断した上で見るか決めることになった。魔導具を再び作動させる。

『…もう大丈夫だろうか?…それでは、俺が禍の団(カオス・ブリゲード)に与することになった経緯と目的、それに現在の立ち位置について話そうと思う』

『接触してきたのは、あちらからだ。何処からか俺がルシファーの血縁であることを聞きつけて、どちらが真に魔王か思い知らせよう、と誘いをかけてきた。その時は断ったのだが、あまりにもしつこいので、ひとまず話を飲んだ振りをすることにした』

『俺たちの平穏を脅かすテロ組織を内部から崩壊させるためにな。…だが』

ヴァーリははあ、と大きく溜息をつく。

『何をトチ狂ったのか、旧魔王派の悪魔たちは、ルシファーの血を引き、高い能力を持っているだけ(・・)の若輩者で、悪魔のしきたりや帝王学など殆ど知らない俺を大魔王と仰ぎ、中心人物と思っている。お飾りの象徴であり傀儡、という立場にしたいわけでもないようだが、かと言って俺が協調を訴えても聞きはしないだろう。曰く、俺以外にルシファーを名乗り魔王を務めるに相応しい悪魔はいないそうだ』

『…俺は別に魔王の座など望んではいないが…ああいう輩は一度痛い目を見ておくべきだろう。故に、止めても止まらない類のやつらを俺は止めない。煮るなり焼くなり好きにしろ』

『だが、行き場を失くした者や強引に組織に連れてこられた者たち、そちらに積極的な害意を持たずに参加している者たちには容赦をしてやってほしい。俺としては、彼らは禍の団から切り離して別の居場所を与えてやりたい。それをそちらに任せよう、というわけではないが…』

『カテレアがそちらの手に落ちた以上、クルゼレイとシャルバを失えば"旧魔王派"は崩れるだろう。俺はそれを止めるつもりはない。禍の団自体も大きなダメージを受けるか、少なくとも組織の変質は避けえまい。それでテロ組織でなくなるかはわからないが』

『シャルバはいずれかのレーティングゲームに干渉するつもりのようだ。おそらく、感化されやすい若者を唆しでもするのだろう。クルゼレイもその時動く可能性は高い』

『俺も最低限組織に与する者として動く必要があるだろう。双方に大きな被害を出すのは望むところではないので精々そちらの者たちには備えさせておいてくれ』

『ちなみに、オーフィスの目的はグレートレッドの排除にあるらしい。そいつが居ると、オーフィスは故郷に帰ることができないそうだ。一応、団のメンバーとは互いに利用し合う関係ということになっているが、俺にはオーフィスが一方的に搾取されているだけに思える』

『俺がある程度の確実性をもって話せるのはこれくらいだ。だが、未来を示唆した情報というのは人口に膾炙すれば現実を歪めていってしまう。これらの情報はあまり広めないようにして欲しい』

話終えようとしたところで、ヴァーリはふと何かに気づいた、とでもいうように少し困った顔をする。

『…後、できればでいいのだが、アザゼルに暫く顔を合わせられないと伝えてほしい。俺は多分、あの人の顔を見たら甘えたくなって、"王"をしていられなくなるから…色々と、困ったことになりそうな気がするんだ』

困ったように微笑し、そこで記録された映像が終わったのか、ヴァーリの姿が消える。

 

 

 

 




説得というより論点ずらす為の工作じゃね、これ
彼と周りの認識のずれは結構酷いのです
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