一通り事態に収拾がついた後
「黒歌ちゃん、学校行ってないの?」
「え、うん」
「何故?通わせてもらえなかったの?」
「え、違うよ、私が、行きたくないって言ってたっていうか…白音が一人だと心配だし…」
「白音ちゃんも来年から小学生に通える年でしょう?そうしたらどうするつもりだったの?まさか一緒に通うわけにもいかないでしょう?」
「それは、そうだけど…」
「今年のことは私たちもいるんだから心配いらないわ。黒歌ちゃんも二学期から学校に通うことにしましょう」
「えっ」
黒歌が学校に通っていないことを知ったクレーリアの働きかけにより、夏休み明けから黒歌も小学校に通うことになり、その為に必要な勉強…というか、国語と算数を学ぶことになった。
流石に一年、二年に通うことはできないので、夏休み中にどれぐらい補習できるかで何年生に編入するかを決めるらしい。実年齢的には…うん。でもまあ、一応、これまでにも小一分くらいは学んでいるはずではあるのだが。
「やっほー、ヴァーリ、久しぶり」
「イッセー!」
ヴァーリは一誠に駆け寄って心配そうな顔をする。
「心配したんだよ。一体君に何があったの?僕、君のところに行きたかったんだけど、アザゼルがダメって言うから…」
「え、うーん……ちょっと、父さんと母さんが殺されちゃって…犯人への報復はもうやったんだけどねー」
「そうなんだ…イッセーのお父さんとお母さんが殺され…えっ」
「埋葬も終わってる」
静かな表情を浮かべる一誠に、ヴァーリの方が戸惑った顔をする。
「だから、イッセー泣いてたの?」
「うん」
ヴァーリは一誠の頭を撫でる。
「…?」
「イッセーは僕を助けてくれた。だから、僕もイッセーを助けたいんだ」
「…ありがとう、ヴァーリ。でも…」
『…一応
『空気を読め、白いの』
「ヴァーリ、神器を安定して発動させられるようになったのか?」
「うん。禁手にも一度だけどなったよ」
「へー。…ヴァーリみたいなのを天才って言うんだろうなぁ…」
一誠の場合は最早必然レベルなので天才には含まれない。
「君を助けに行きたかったんだ。止められちゃったけど」
「…へー」
『…ということは、今代はほぼ同時に禁手に至ったようなものというわけか』
『非情に複雑だが、そうなるな…』
「イッセーも禁手になったの?」
「うん。まあ…頭に血が昇ったというか、なんというか…」
『あの時は覇龍まで使ってぶっ倒れたからな。相棒は』
『…よく生きていたな』
「イッセー、一人で無茶してたってこと?」
「え、うーん…全面否定はできない、かなあ」
あの日は一人でぶちのめしたし、その後のアレも傍から見れば無茶だろう。一誠は無茶のつもりはなかったが。
ヴァーリは一誠の両頬を引っ張る。そして口を尖らせた。
「イッセーは一人で頑張ろうとしないで周りを頼りなよ。そりゃあ、僕たちはまだ頼りないだろうけど…君と一緒に泣くことくらいはできるよ」
その時、少女がその場に走り込んでくる。
「イッセー君は来てませんか!」
「「あ」」
「ヴァーリ君、何をしているんですか」
「イッセーが一人で無茶してたって言うから…」
朱乃に詰め寄られ、ヴァーリが手を離す。一誠は自分の頬を押さえた。
「朱乃、久しぶり」
「久しぶりですね、イッセー君。何故突然音信不通になっていたのかは当然教えてくれるんですよね?」
女の子って怖いな、と一誠は思った。
子供たちには知らされていなかったとはいえ。堕天使たちも先日の件についてはある程度の情報は得ていた。
「教会の保護は断ったらしいが、大丈夫なのか?なんなら、お前ら兄妹もこっちに来るか」
「ううん、大丈夫だよ、ありがとう。一応、クロウさんが保護者になってくれたから」
「クロウ?誰だそれ」
「んー…邪龍らしいよ?」
「は?邪龍?」
「うん」
「マジかよ…つーか、邪龍でクロウっつーと…死んでなかったのかよ、アイツ。そんなやつが保護者で大丈夫なのか?色々と」
「どの勢力についてるわけでもないし、アポロに任せるよりはマシだし。それに本人意外とノリノリで戸籍偽装して兵藤
「本当フリーダムだなドラゴンどもは」
アザゼルは僅かに呆れた顔になる。
「しかし…お前の家族に手ぇ出すとか、命知らずがいたもんだな」
「…うん、まあ…"一部の暴走"みたいだけどね。
「ガキの内からこんだけがっつり
普通なら、一誠の年頃の子供が親と無関係にオカルト側と深く関わることになる、なんてことは起こらないだろう。
「・・・」
「話しててもそう変わらなかったんじゃねぇか。どっかの勢力についてたりしたらまた別だろうが」
アザゼルは一度、一誠の両親と顔を合わせている。"善良な一般人"という言葉がよく似合う夫婦だった。そして、とても懐の深い人たちだった。あの二人だからこそ、一誠は善良な存在として育つことができたのだろう。だが、日本人らしい平和な頭をしていた。荒事には向いていないだろう。