ざっくりまとめると、
まあ正直、一誠と黒歌の心情的には敵陣に飛び込むようなものであるため、余計なお世話感があるのだが。しかし、ある程度牽制はしておくべきか、と結論している。
「白音も黒姉も絶対一人にならないように気をつけてね」
「それはわかってるわ。…イッセーも、あんまり一人にならないようにね?…アポロは傍を離れないだろうけど」
「わたしもにいさまといっしょがいい」
白音の言葉に黒歌は微妙な顔をする。
まあ、黒歌は戦闘力的な意味では全然頼りにならないだろうが。寧ろ、十歳にも満たないのに悪魔と渡り合える一誠が異常なのだ。
交流会というか、園遊会というか、そういう
男性陣はスーツ、女性陣はドレス着用である。ちなみにアポロは人型だが、クロウとカップル扱いされるのが嫌だと男性の姿を取っている。
どのような思惑によってか、一誠と同年代から少し年上くらいまでの貴族子女の何人かが参加している。それぞれでも駆け引きやら交流やらしているが。一誠に対しても一通り挨拶があった。一誠は途中で覚えるのを放棄したが。
「久しぶりね、イッセー」
「また会いましたね、イッセー君」
そう話しかけてきた二人の少女を、一誠は一拍考えた後、ああ、と思い出す。
「リアスとソーナ、だっけ。久しぶり」
と言っても、二人との面識は一度しかないのだが。
「こんな場だから、一応改めて名乗るわね。私はリアス=グレモリー。グレモリーの次期当主よ」
「同じく、私はソーナ=シトリー。シトリーの次期当主になります」
「"宝物"を見つけ出すグレモリーと、"秘密"を暴き出すシトリーか。隠し事をするのが大変そうだね。僕は兵藤一誠。赤龍帝だよ」
一誠の言葉に二人はぽかん、とする。一誠はうん?と首を傾げた。
「僕の"知識"だとそうなっているんだけど…"実際"は違うのかな。…七十二柱はあるみたいなのに」
まあ、世界によってはアザゼルが悪魔の一種のような扱いのこともあるので、別世界の知識は参考程度にするのが一番なのだが。名前しか残っていない、という場合もままあるし。
「…私は、母様の…バアルの滅びを受け継いでいるから…」
リアスの言葉に一誠は一瞬訝しげな顔をするが、特に口にすることなく簡単に流す。
「私は「あ、ソーナたんいた☆」!姉様?!」
駆け寄ってきた少女がソーナに抱きつく。どうやら、ソーナの姉であるらしい少女はドレスというよりはコスプレ衣装、それもアニメの魔法少女のような衣装を身に纏っていた。
「…我は知っているぞ、ああいうのをKYと呼ぶのだろう」
「アポロ、食べるか喋るかどっちかにしなさい」
そう言われてアポロは再び食事に戻る。
「あ、君が赤龍帝君だよね☆私はセラフォルー=レヴィアタン、レヴィアたんって呼んでね☆」
「僕は兵藤一誠といいます」
レヴィアタンって魔王じゃなかったっけ、と一誠は視線を泳がせる。
現在の魔王は血縁ではないというのは聞いていたが。…ああ、悪魔は実力重視なのか。じゃあしょうがないな。
「何か今不本意な納得のされ方をした気がする…」
「姉様、姉様は大人のお話が忙しいのではなかったんですか?」
「うん、でも魔王の中で私だけ赤龍帝君と面識ないから、挨拶くらいはしとかないと、って思って☆」
「…まあ、先日の件でルシファーさんとベルゼブブさんとは顔を合わせましたし、ファルビーさんとは随分前に会ってますからね」
「そうそう、ファルビーが珍しく仕事してたのよね。外交は私の担当なんだけど」
確かに、あの四人の中では彼女が外交担当になるというのはわからないではない。しかし、そこはかとなく不安感もあるのだが。
「…まあ、僕はファルビーさんの忠告を活かしきれませんでしたが」
「それは、私たちも他人のことを言えないのよねー…彼の懸念を正しく受け取れていれば、私たちにもできていたことがあったかもしれないもの」
セラフォルーと一誠のやり取りに入れないでいるリアスとソーナが少し不満げな顔をしているのを見て取り、一誠は苦笑する。
「過ぎたことを言ってもどうしようもありませんね。大切なのは、これからどうするのか、ということですし」
「それもそうね☆」
「そういえばイッセーは「いちにいさま、こっち!」
リアスが話しかけようとしたところで白音が乱入して一誠の腕を引っ張る。
「どうしたの?白音」
「いいから、こっち!」
一誠は苦笑する。
「ごめん、リアス、ソーナ、レヴィアたんさん。妹が何か用事があるみたいだから」
そう言った一誠の後ろで白音が勝ち誇った顔をしているのを見て取り、リアスとソーナは僅かにムッとした。というか、白音の行動の意図を理解した。女は幼い頃から女なのだ、とはよく言ったものである。
「その内ゆっくり、話がしたいものね」
「そうですね。じっくり聞かせてもらいたいです」
「え、うん、機会があれば」
戸惑う一誠に二人はにっこりと笑いかける。
「これは…修羅場?」
「ふん。我を差し置いてイッセーにちょっかいをかけようなどと、片腹痛い。我とイッセーの間には容易に断ち切れぬ繋がりがあるのだからな」
『話が面倒になるからお前は嘴を突っ込むんじゃない』
「そろそろ飽きてきたぞ」
アポロはそう言って欠伸をした。一誠はそれに肩をすくめる。
内心では肯定しているのだが、それを表に出せば不興を買うだろう。別にそれで困るとは言わないが、面倒なことになる可能性はある。
どうやら、事前の手回しでもあったのか、大っぴらに
「散歩に行くぞ、イッセー。此処はつまらんし息が詰まる」
「えっ…いや、それは…流石にどうなんだろう」
黒歌と白音を此処に置いていくのは心配だし、メインゲストに近い位置である一誠が途中で抜けるのは問題がありそうな気がする。かと言ってアポロ一人で抜けるというのはまず論外だろう。
「今ならあのヴァーリとかいう
「お前はまたわけのわからないことを…」
というか、イチャイチャってなんだ。子供だけど男同士だぞ。…ああ、
「イッセーはアレを気に入っているだろう」
「否定はしないけど…」
寧ろ、気に入っているというか、気になるというか。宿命的なライバルだからだろうか。同い年ぐらいだし。
「まあ、我の契約を破ることは許さぬがな」
「破らないって」
一体どういう心配だ。
「――やあ、イッセー君」
「ルシファーさん」
にこやかに笑うルシファーは銀髪のメイドとスーツの男性を伴っていた。
「この二人は私の眷属…
「グレイフィア=ルキフグスと申します」
「沖田総司だ」
「兵藤一誠です。こっちはアポロ」
名乗りながら、お互いを観察する。
ルキフグスも沖田も高い実力の持ち主であることは間違いない。加えて、どちらも一誠の知識に引っかかるものがあった。
新選組の一員、幕末の剣豪として沖田の名を聞いた覚えがあるし、ルキフグス…ルキフゲ・ロフォカレなどとも呼ぶ悪魔にも覚えがある。宰相として、ルシファーに富と宝物の管理を命じられている悪魔、だったか。その名は光を避ける者を意味する。…逆にルシファーとは光を掲げるものという意味だったりするが、閑話休題。
まあ、所詮"知識"は参考程度のものだ。実際に目にした情報以外が役に立つかどうかはわからない。
「…我の可愛いイッセーにちょっかいをかけようと言うのであれば、容赦はしないぞ」
アポロが一誠を抱き寄せてそんなことを言う。不審の目で見ていることからして、本気だろう。
「物騒なこと言わないの」
「我は間違っていない」
「別にそういうことは言ってないだろ」
牽制自体は当然だと思うし、アポロがピリピリしていることにもわからないではない。
「ところでイッセー君」
「何ですかルシファーさん」
「うちのリアスと知り合いだったようだね」
「ええ、まあ…顔見知りではありましたね」
「二年前、だね?」
「確かそれくらいですね」
ニコニコニコ。
「うちのリーアたんの初恋かっ攫っていった男が君だったとはね…」
「うわー、初耳ですー」
「…サーゼクス様、本人に無断でそのようなことを口にするのはどうかと」
「リアス様にバレたら大変なことになりますよ…」
「だって、父上とどちらがリーアたんに大きくなったらお嫁さんになるーって言われるか争ってたら彼にかっ攫われたんだよ?!大きくなったら兄様のお嫁さんになるの、って言われたかったのに!」
「何言ってんですか既婚者」
一誠は呆れた目でルシファーを見る。
酷いシスコンを見た。年の離れた妹が可愛いというのはわからないではないのだが。
「…悪魔って碌な人材いないんだなー…」
『いや、全部がそうとも限らないんじゃないか?…多分』
「まともな人材が居そうなのは…天界ぐらいか」
アポロが交ぜっ返す。
まあ、天使は優等生のいい子ちゃん、堕天使はそこからドロップアウトした不良、悪魔は雑多な精霊の集まり、と思えばわからないではない気もする。しかも、悪魔だけは同じ枠組みの中で子孫を作って混血が進んでいるようだ。"最初の性質"を喪失していっても何ら不思議ではない。もっとも…悪魔はおそらく成立からして…
「落ち着いてください」
スパン、とハリセンの音が響く。ルキフグスがルシファーの頭をはたいたのだ。
「…何だ、コスプレメイドか」
まあ、一誠は元から本職だと思っていなかったが。
外見から若干コスプレ臭がしていたし(お仕着せであれば主の趣味もあるかもしれないが)少なくとも古き良きハウスメイドには見えなかった。そして今、見えたところ、厳格な上下関係ではないようだ。恋人…否、既婚者らしいし妻だろうか。女王とは最も価値の高い駒なのだし。