帰宅した一誠は、家の雰囲気がいつもと違うことに気づく。
なんというか、若干、ピリピリしているような…。
「ただいまー」
「あ、おかえりなさい、イッセーさん」
「ただいま、ギャスパー。何かあったのか?」
ギャスパーは落ち着かなげに眼鏡をいじっていた。そして、一誠の問いに少し困ったような顔をする。
「あの…なんというか、教会の…怖いお姉さんが…」
「教会のお姉さん?」
教会関係で訪ねてくる女性、しかも怖がられるような人、とは誰だろう、と首を傾げながら、一誠はリビングに顔を出す。そして納得した顔をした。
「久しぶり、イッセー君」
「久しぶり、イリナ。思ってたより早く会えたね。もうエクソシストになれたの?」
「ええ。きちんとエクソシストとして認められて、駒王町に派遣されてきたわ。春からはイッセー君と同じ学校に通うつもりよ」
「…僕、駒王学園に通うつもりなんだけど」
理由は。近いのとリアスたちに誘われたのと黒歌たちが通っているので、である。多分、白音たちもそうだろう。
「えっ………ま、まあいいわ。まだ何とかできるし」
「悪魔だからって無闇に狩っちゃダメだよ」
「そ、そんなことしないわよ…」
こほん、とイリナは咳払いをする。
「ところでイッセー君、何か私がいない間にこの家の禍々しさが増してる気がするんだけど」
「あー…まあ、どっちかと言うと魔側の人の方が多いからなあ…」
というか、聖側と言える者がいるか怪しいところである。お隣さんも含めて。
「イッセー君を堕落へと誘う魔物が多くいるということね。主よ、イッセー君をお守りください…」
「ふん、神の力など借りずとも、我がイッセーを守るのだから何も不都合はないのだ」
「あはは…」
なんだか、イリナの信仰心が以前よりも上がっている感がある。それ自体は別に悪いことではないはずだが、どうにも嫌な予感がするのは、一誠が悪魔や堕天使とそれなりの親交があるからか。それに、イリナは思い込みが激しいところがある。
「…この街相当ヤバいんじゃないか?」
「…僕も正直そんな気がしてる」
一応オカルトサイドの
なんだろう、その内駒王町で終末のラッパでも吹き鳴らされるのだろうか。
「ドラゴンは争いを引き寄せるものとはいえ…流石に俺も此処まで
「日本の火薬庫(オカルトサイド)ってことですね、なにそれこわい」
「…まあ、大体相棒と
「否定できない…」
神滅具もドラゴンも、集めたのは実質一誠である。他も大体その関係と言えるだろう。
一誠は大きく溜息をついた。
「おかしいな、僕は平穏な暮らしを望んでるはずなのに」
「正直、無理だろう」
「諦めたら、そこで試合終了なんだよ…!」
ドライグは一誠のセリフに微妙な顔をする。それを見て一誠は口を尖らせた。
「何だよその顔。いいじゃん、平和を望んだって」
「…いや、それが悪いことだと言う気はないが…現状が平和だとイッセーは思うのか?」
「………へい、わ…?」
少なくとも、大きな争いはない。小競り合い(主に女の戦い的な意味で)とかは日常茶飯事だが。かなり複雑怪奇な人間関係が形成されかけているが。
「そういえば、お前の本命は誰なんだ」
「エ、ナンノコトデスカネー」
「イッセー…」
あからさまに目を泳がせる一誠にドライグは溜息をつく。
「ちゃんと回収していないだけで、フラグ自体は随分立てているようだが?」
「フラグなんてなかった」
「おい」
ドライグにジト目を向けられ、一誠は雨に降られた子犬のような目になる。
「…だって、僕、恋なんてこれまでの人生で一回しかしたことないし。相手のヒトは年上の…獣人のおっさんだったし。その時僕女の子だったけど」
「唐突に何をカミングアウトしてるんだお前は」
「その時は超アグレッシブにアタックして夜這いもかけたけどやんわり窘められて、思いが実らない内に若くして死んだんだよねー。恋をしないで絆されて夫婦になったりした経験は割と沢山あるけど、自分から恋愛的な意味でアタックしたのってそれぐらいだし」
「…引きずっているとでも?」
「引きずってないとはお世辞にも言えない。あの人と同じ声がするとつい探しちゃうし。シチュエーションが重なってたら恋しちゃうかもしれない」
「お前今生は男だろう」
「僕基本的にはAノンセクシャルだけどその気になればバイだし肉体的条件は気にしないからイケる。具体的にはドライグが人型にならなくてもイケる」
「おいやめろ」