「…意外とアザゼルさんってヴァーリを溺愛してるようなところあるよね。甘やかしてるっていうか、過保護っていうか」
「…悪いか」
「いや別に。ヴァーリに反抗期が来たらどうなるんだろうなー、と思ってるだけで、悪いとは思ってはいないよ。寧ろ、アイツが大切にされてて安心するくらい」
ヴァーリが神滅具持ちで半魔というのもあるのだろうが、それでも義息子として可愛がられているのは見ていればわかる。…自分の元を離れて一人暮らしをさせるのが心配だからといって、学校やアパートに手を回すというのは正直どうかと思わないではないが。
…いやでも、サーゼクスさんとかも似たようなことやってそうだよなあ、と一誠は思い直す。親馬鹿もシスコンブラコンも本質的には同じようなものだろう、多分。
「は、反抗期なんて、うちの子に来るわけないだろ、ははは」
「いや、反抗期来ない方が寧ろ問題だからね?自主性と自立心と自我がちゃんと育ってないと反抗期にならないんだから。…まあ、反抗する相手がいなきゃ反抗期になりようがないけど」
親としては寂しい限りだろうが、子供はちゃんと育てば反抗期を迎えて一個人としての明確な人格や独り立ち出来るだけの能力を獲得するものである。親がすべきはそれを適度に見守り受け入れサポートし、反抗期が終わった後の良好な関係を模索することくらいだ。間違っても子供の自立の芽を摘み取るようなことはしてはならない。
「…っていうか、ハーレム作ったんなら子供の一人や二人いないの?もしくは居てもちゃんと育てたことないとか?」
「うるせえ」
まあ伝承上、堕天使と人間の間に生まれたのは
…そういえば、朱乃はハーフだがネフィリムではないのだよな、と一誠は思う。一誠は朱乃に堕天使の黒い翼と雷光が受け継がれているのを知っている。
ネフィリムは空から落とされた者、というような意味であり、英雄であったという伝承もあるが、
朱乃は少なくとも巨人ではないし、言うほどの大食いではない。この世界では巨人としてのネフィリムはいないのか、何らかの条件でもあるのか…まあ、一誠も然程強い興味があるわけではないが。
「…で、お前は態々うちに茶をしばきに来たのか?」
「いや、人工神器について、ちょっとアザゼルさんの意見を聞きたいな、と思って」
「ん?何だ、また何か作ったのか?」
「作ってないわけじゃないけど、聞きたいのは神器そのものじゃなくて…誰に渡すか、使わせるか、ってことに関してなんだけど」
「あ?お前は自分が使うか、最初から特定の誰かに使わせることを想定して作ってるんだと思ってたんだが、違うのか?」
「それはそのとおりなんだけど」
一誠は歯切れ悪くそう言った後、悩むように唸る。アザゼルはそんな一誠を訝しげに見た。
「…アザゼルさんの場合はどうなの?」
「俺か?俺は自分で使うためのもあるが、基本的に"作るために作ってる"からなー。誰に渡すことも想定してねぇな。そもそも"武器"を渡す必要があるのか、って話でもあるが」
「あー…微妙な情勢だよね。冷戦状態っていうか。三勢力のトップはいずれも本格的な戦争には乗り気じゃないけど、かといって和平が結ばれる感じでもない、っていう」
「和平、ねぇ…まあ、開戦派もいるからなぁ」
アザゼルは具体的な相手でも思い浮かべたのかうんざりした顔をした。
「っていうか、今更開戦とかなったら駒王町とかうちとか大変なことになる気しかしない」
「そりゃなるだろうな、確実に」
一誠はあくまでも武装中立勢力である。いずれの勢力ともそれなりに繋がりがある以上、無関係ではいられないだろう。
「…で、何で俺の意見を聞こうと思ったんだ?」
「…ちょい、天界が作った人工神器を見たのと、自分に作って欲しいって頼まれたのと、さ。自分から提案したことはあっても、完全に相手方から頼まれたことはなかったから、軽く引き受けて大丈夫かなー、って気がしてきてるんだよね」
そもそも、自衛手段の一種として渡していたので、"上昇志向"みたいなのは縁がなかったのである。
「誰に頼まれたんだか知らないが、そういうのは対価を求めるくらいのことはしねぇと、いいように使われる羽目になるんじゃないか?お前、なんだかんだお人好しで世話焼きだし」
「否定できない…」
だからこその現状でもある。言い訳のしようもない意見だ。
「…まあ、幾つか条件出すくらいはした方がいいよなあ。便利屋扱いされてもアレだし」