2月14日はバレンタインである。
このバレンタインというイベント、土地によって多少振るまいが変わるものの、ざっくり説明すれば、親しい人間、親しくなりたい人間に贈り物をするイベント、ということになる。日本では、製菓会社の陰謀でチョコを贈るイベントになっているが(そして一月後のお返しもお菓子を贈り返すことになっているが)、ヨーロッパでは花を贈ったりもする。まあ、サンタクロースが赤い服なのも飲料会社の仕業だというし、現在のイベントなんてそんなもんである。資本主義と広告、経済効果という…まあ、要するに大人の事情というか、陰謀というか。土用の丑とかもそうだし。
つまりはまあ、何が言いたいかというと、
「お前何でそれをうちに持ってこようと思った」
「何故か今日に限って色んな人間に渡されたんだ。一度帰って置いてくるか、とも考えたが、消費しきれるか怪しいだろう?」
「つまり学校帰りに直接来たわけだな、お前は」
「なんだか甘い匂いがするな。イッセーも菓子を作っているのか?」
「まあね…」
ヴァーリが学校でモテているらしいことは一誠も聞き及んでいる。外見がいいし、基本的にポーカーフェイスでクールだからまあわからないではない。見ている分には普通にかっこいいばかりなので、寧ろモテなかったら不思議なくらいだ。
しかし、それと大量の
「…黒魔術とか仕掛けられていないといいけどな」
冗談抜きで、呪術的なものの篭められたものを贈られて、それ以降他者の手作りものが受け付けなくなった、という例を一誠は"知って"いる。まあ、それは極端な例だろうが、おまじないと称して異物混入するケース自体はままある。そういうおまじないをしたがるのは小学生から中学生くらいで、高校生くらいになると凝ったお菓子を作りたがることの方が多いが。そう思えば、よほどそういうえぐいのはないだろうが…。
「流石に俺も、魔術のかかっている品があれば気付くぞ」
「ちゃんと成立してればそうだろうが、"不完全なもの"だったらわからないだろ。隠蔽の術が優秀だったらわからないかもしれないし」
「む…」
『…そもそも、魔術を仕掛けられる理由があるかどうかに言及したらどうなんだ…』
アルビオンが何か言っているが一誠はスルーする。正直、本気で仕掛けられているとは思っていない。
「ていうか、本命を他の奴に食べさせるのはどうかと思う。義理ならともかく。…それ全部義理ってことはないだろ?」
「義理?」
僅かに不思議そうな顔をしたヴァーリに、一誠はジト目を向ける。
「…今日はバレンタインなわけだが、現代日本におけるバレンタインがどんなイベントかは知ってるか?」
「ああ、今日がそうだったのか」
「刺されろ」
一誠の言葉にヴァーリは納得がいかないという顔をする。
「しかし、ということは、君が今日菓子を作っているのはバレンタインだからなのか?」
「ああ。黒姉たちと、リアスたちのと。リクエストをもらったからな」
「俺も食べたい」
「何言ってるんだモテ男」
「君は料理上手だからな」
「まあ、味は保証されているようなものだが、それだけ貰っといてまだ欲しいのかよ」
「よく知らない人間に貰ったものと君の作ったものでは価値が違うだろう」
「刺されろ」
再び投げかけられた言葉にヴァーリは不満そうな顔をした。
『やつあたりかっこわるい』
「別に八つ当たりじゃない。個人的に何かイラっとしただけだ」
「何がいけなかったんだ」
「解説させようとするな」
キッチンの方からお菓子の焼きあがった音がして、一誠はそちらに向かう。
『…ヴァーリ、アレは女性相手に言っていたら殆ど口説き文句だったと思うぞ』
「そうか?俺は正直な気持ちを口にしただけなんだが」
『…お前もなんだかんだ、アイツの影響を受けているのだろうな…』
アルビオンがしみじみと呟いた。
「うふふ、やっぱりイッセーは料理上手ね」
「追いつくのは、難しそうですよね…」
「…敗北した気分、です」
「寧ろ、勝てる気がしないにゃん」
「教えてもらえば、少しは上達するかしら…」
「兄様はスパルタな上に教え下手だからあんまり役に立たないと思うけど」
女三人寄れば姦しいという言葉があるが、実際女子が集まれば話に花が咲く。そして盛り上がっている女の子たちに余計な口を出すもんじゃないのである。
「…お菓子なんてレシピ通りに作ればそれなりのものは作れるものだけどね」
「それなり以上のものを作るために技術とかが必要だってことでしょ。実際、これ美味しいし」
「まあ、好みにあったんならそれはいいんだけど…」
「イッセー先輩は、何でもできますよね…」
「何でもはできない。できることだけだ。…っていうか、誰だって相応の努力をすればこれぐらいできるようになる」
イチャイチャしてるバカップルとか書いても何ら楽しくないじゃん?(フラグ)