「…どうしよう、兵藤」
とても深刻そうな顔で告げられた言葉に、一誠は目を丸くする。
「俺、悪魔になってるかもしれない」
「士方、何かあったのか?」
「可愛い女の子にデートに誘われたけど最終的にお仕事だからって殺されたのに気付いたら自室のベッドで寝てた」
「夢オチ?」
と言いつつ、一誠は目の前の少年をじっと見返す。まあ確かに、人間ではなくなっている。この地区で彼を悪魔に転生させたんならリアスかソーナのどちらかが王である可能性が高いだろう。
「俺だって夢オチだと思いたいよ!でも、原作主人公が細部にズレはあるけど同じ目にあってんだよ!!」
「へー」
「本来なら、お前のポジションだって俺は言ってんの!」
半分ヤケになった調子で告げられた言葉に、一誠は少し嫌そうな顔をする。
「その"原作"にお前はいないし、他にも色々違ってるんだろ?んな細かいこと気にすんなよ」
「だって、リアス先輩は俺の
「はぁ?」
「原作のメインヒロインはリアス先輩で、最終的に"イッセー"はハーレム作りつつ部長とラブラブなんだよ!だから、変な誤解が起こったら困る!」
自説を熱く語る士方に一誠は溜息をついた。
「本当に先輩が君のヒロインじゃないなら別になびかねーんじゃないの。彼女、そんな惚れっぽいわけでもない…と思うし」
「…兵藤、知り合い済み?」
「初対面は12年ぐらい前になるかなー」
「なら大丈夫だな。ほぼ一目惚れらしいから」
「あー…」
勝手に納得して安心した顔をする士方に一誠は微妙な視線を向ける。
基本的に自分の現在生きている世界の"
ふむ、と考えて一誠は士方に釘を刺しておくことにした。
「士方、ジェイルオルタナティブとバックノズルって知ってるか?」
「え?あー…何か、どっかで聞いたような、気もする」
「とある世界で知人が言ってた理論なんだが、まあざっくり言うと、バックノズルが"時期がズレても起こるべきことならば起こる"ってことで、ジェイルオルタナティブは"重要な事項はキャストを変更してでも発生する"ってことだ。具体的に言うなら、爆弾はいずれ爆発するし、タイムマシンで過去に行ってヒトラーを殺したって、他の似たような条件を満たした人間が代わりにナチスのトップになる、ってところだな」
「…狐さんかよ!!」
「え、おう。…で、大体"世界の修正力"ってやつはこの二つで説明できるんだ。優先順位とか"ポジションに対する縛り"と"個人に対する縛り"とかあるから難しいんだが。…士方にジェイルオルタナティブが発動したって言うんなら、この世界の修正力はまだ生きてるってことだから…何らかの形で君の知る"原作"と同一か似たような出来事は起こるかも知れない」
そこで言葉を切り、一斉は真剣な目で士方を見る。
「だが、"原作"と全く同じ理由、経緯で発生するとは限らない。同じと決め付けるな、足元を掬われるぞ」
「お、おう…ちなみに狐さんとはどういう知り合いなんだ?十三階段とか?」
「いや、"俺"が出資してた組織の関係者で、何か勝手に親近感らしきものを持たれて色々吹き込まれてた程度の知人。相当のアホだったな」
「え、あの人一種の天才じゃないのか?」
「踊るのも見てるのもアホだろ。だったら、踊って舞台から勢いよく転げ落ちたアイツは間違いなくアホだろ」
「…へー」
『…その、"狐さん"というのはどういう人物、なんだ?妖狐か何かか?』
「いや、肉体的には普通の人間。本名は西東っつーんだけど、色々あって狐面をトレードマークにしてた時のあだ名が狐さんだったんだ。ちなみに眼鏡フェチでさっき士方が言ってた十三階段は取り巻きで、子持ち。異名は"人類最悪"」
「戯言シリーズのラスボスで"人類最強"の父親だな」
『碌でもない人間なのはわかった』
「寧ろあの作品碌でもない人間が跳梁跋扈してるから…ばんばん人が死ぬし、主人公の周りで人死にすぎだし。…って、どうした兵藤」
「すげーフォーティーンな世界だと思ってたけどあそこも観測世界から見た作品世界かよ!」
じたじたしている一誠に士方は微妙な視線を向ける。
「知らなかったのか。というか、何だその反応」
「だって、作品世界ってことは、観測世界の不特定多数の人間に"俺"の内心とか言動とかが"読まれ"てる可能性があるかもしれないってことじゃん恥ずかしい」
「…いや、お前が存在してたらそのものじゃなくて平行世界だろ?ないんじゃね」
「二次創作として存在しているかもしれない」
「なにそれこわい」