「士方君、ちょっといいかい?」
「木場か。…もしかして、グレモリー先輩の言ってたのってお前か?」
「うん。僕もオカ研の部員だからね。じゃあ、行こうか」
部室にいたのは、リアス、朱乃、ギャスパー、更にアユムの知らないおそらく下級生の少女だった。ちなみに、朱乃は面識がないが、ギャスパーは知人である。
「あ、士方先輩。新しくオカ研に加わる人って、先輩のことだったんですね」
ギャスパーはあからさまにほっとした顔をする。アユムも彼の人見知りは知っているので、それでだろうと思った。
「じゃあ、改めて紹介するわね。私はリアス=グレモリー、オカルト研究部の部長で、
そしてリアスは順番に紹介する。
「本当はもう一人、
「サボり、ですね」
「彼はうちで一番の問題児ですからね」
「まあ、あの子のことはともかく…あなたは私の二人目の、そして最後の
部員全員の背に黒い翼が広がる。
「歓迎するわ、アユム。オカ研に、そして悪魔の世界へようこそ」
アユムは悪魔、悪魔の駒、そしてオカルトサイドのことについて説明を受けた。
「まあ、オカ研の部員は私の眷属だけじゃないのだけどね。三人、今日は呼んでいない子がいるの」
全員、オカルトサイドに関わりがある子よ、とリアスは付け加える。
なんとなく、予想はつく。おそらく、内二人は兵藤兄妹だろう。残り一人はわからないが。
「白音ちゃんは暫くお姉さんと戦術修行するから部活には顔を出さない、って言ってましたよ」
「…部長である私に直接言おうとは思わないのね、あの子は…」
リアスは頭痛がしているような顔をする。ギャスパーは若干怯えた顔をした。
「白音は、…自由だから」
手鞠がそんなことを言って僅かに目を泳がせる。何か、言おうとして言葉を濁したという感じだ。
「…まあ、その内ちゃんと顔合わせできると思うわ。今日サボったあの子も含めて、ね」
アユムが何らかの神器を所持していることはわかったものの、それを目覚めさせる儀式を行うなら準備が必要だから、とそれは後日ということになった。だからとりあえず、悪魔としての初仕事として、チラシ配りをすることになった。
契約のための前段階として、召喚してもらうための魔法陣の描かれたチラシ(使い捨て)を配るのだ。効率化のため、願いを持っている人間を探知するアプリがアユムの携帯に入れられた。
「…でも、兵藤は自前でもってそうだよな、これ」
どうやらアユムが知っているのは極一部に過ぎないようだが、一誠は困っている人を見つけて助けるということをよくやっているようだ。何かセンサーでも付いているのかもしれない。…散歩で外国まで行くことがあるらしいのがスケールが違いすぎてアレだが。
「――ん?お前、確かイッセーの同級生の、士方、だったか?」
「あ、クロウさん」
兵藤玄生、両親をなくした兵藤兄妹の保護者を務めている男だ。ただし、何か普通の人間じゃない気がする。
クロウはアユムをじっくりと見た後、面白がるように目を細めた。
「何だお前、人間辞めたのか。それに…」
意味ありげに呟き、クロウはにぃと笑う。
「まあ、折角悪魔になったんなら強くなれよ。俺と渡り合えるぐらいになると最高だな」
「え、あ、はい」
正体は知らないものの、クロウが強いことはわかる。自分の言いたいことだけ言って満足したのか立ち去ろうとするクロウをアユムは慌てて呼び止める。
「クロウさんも、オカルトサイドなんですよね」
「ああ。一般人だったことはないな」
「…"十年前"の件も?」
「俺もまあ、関わったと言えないこともないな」
「そうですか…」
「もし、あの件について調べようと思ってるなら、覚悟しておくんだな。教会とかじゃ、半分タブーみたいになってるらしいから」
「教会が…?」
アユムは、"十年前"に関して、兵藤夫妻が殺されて、玄生が後見に立つことになったとしか知らない。一誠が教会側の人間であるイリナたちと普通に仲がいいので教会がそれに関係しているとは思わなかった。面識はないが、オカルトサイドの人間だったということなのだろうか。
一誠に直接聞くことは、なんとなく今までしたことがなかった。それを聞くのは、無神経なことのような気がしたのだ。アユムには、どれだけの時があれば両親を喪った悲しみが癒えて、触れても大丈夫になるのかがわからない。
「あの件に関して、全て正しく認識してる人間は多分存在しないが、強いて言えば、一番詳しく把握している人間はイッセーだろうな」
「・・・」
今のところ、アユムには"十年前"の件についてどうしても知らなければならない理由はない。だから、聞くことはできないのだろう、と思う。アユムの知る限りの、おそらく最大にして最悪の原作乖離であるのだから、いずれは何らかの形で知る事になるのではないか、と思わないではないのだが。
クロウの言葉はレトリック込みである