アユムの神器を目覚めさせることになった。
「アユム、あなたが一番強くてかっこいいと思うものをイメージするのよ」
リアスにそう言われて、アユムは考える。強くて、かっこいいもの。
「…俺のこの手が真っ赤に燃える!勝利を掴めと轟き叫ぶ!爆熱!ゴッドフィンガー!石破天驚拳!!」
突き出した右腕が紫色の籠手に覆われる。
「これは…
「イッセー先輩とは、逆の腕なんですね」
「…それ、確かロボットものなのに寧ろ生身で戦った方が強そうなやつですよね…?」
「一発で成功して良かったですね」
「流石に綺麗なフォームだね」
見守っていたオカ研グレモリー眷属メンバーが口々に感想を述べた。アユムは己の右腕に現れた籠手を半分呆然と眺める。
なんとなく、躯に力が漲っているような感じがする。おそらく、神器のちからなのだろう。
「これが、俺の
一通り漫才じみたやり取りをした後、アユムは改めてフリードと一誠を見る。
「そういえば、お前らどういう状況なわけ?」
「僕は見ての通り、作業中」
「俺っちはイッセーきゅんを遊びに誘って振られてたとこ、みたいな?」
「そろそろ諦めていいと思うけど」
相変わらず一誠の視線は己の手元に向けられているし、PCのディスプレイに表示される文字列の動きも滞りなく一定の速さで流れている。
「未完了のタスクを積み重ねておくのは嫌いだし、さっさと終わらせたいんだよね」
「…何を?」
「取引材料、ってところかな」
それ以上詳しく説明するつもりは一誠にはないようだった。
「君は…」
「確か、アユムさんですよね」
「ああ。アーシア、だよな。何で兵藤の家に?」
「ええと…なんというか、私、どんくさくて、役立たずみたいで…」
アーシアは目を泳がせる。
「とりあえず、仮にこの家にホームステイさせていただくことになったんです」
「…言ったらなんだけど、この家、吸血鬼とか悪魔とか住んでるよな」
「ヴァレリーさんもギャスパー君も"良い人"ですよ」
「それは俺も知ってる。…後、俺も悪魔だし」
「えっ」
「元は人間だけど、ちょっと前に悪魔に転生したところなんだ」
困惑するアーシアにアユムは苦笑してみせる。
「悪魔の全員が全員、"悪い人"ってわけじゃないけど…少なくとも人間に悪い人がいるくらいのレベルで悪い悪魔がいるのは確かだから、あまり信じすぎない方がいいと思うよ」
まあ、ここと隣に住んでいるのは概ね"良い人"だろうけど、とアユムは付け加えた。
「・・・」
アーシアは考え込むように俯いた。
「――あら、アユム君、アーシアちゃんをいじめちゃダメよ?」
「…いじめてないです」
割と本気で言っているらしいヴァレリーに、アユムは肩をすくめてみせる。
「えっと、私はアユムさんにいじめられてたわけじゃないですよ。私が勝手に悩んでただけですから」
「悩み事なら、イッセーに相談したらいいと思うわ。…まあ、最近はちょっと忙しそうにしてるけど、イッセーは人助けが好きだから、喜んで相談に乗ってくれると思うから」
「…確かに、何か忙しそうだったな」
基本的に礼儀正しく、話をするときは相手の目を見てする、を徹底している印象のある一誠だ。それが一度もこちらに視線を向けもしなかったのだから相当だろう。…彼なら視線を向けずに"見る"こともできるのかもしれないが。
「…いえ、これ以上イッセーさんに迷惑をかけるのは心苦しいですから…」
「そういう心配は必要ないと思うけど…まあ、無理強いするわけにもいかないものね。でも、一人で悩んで思いつめちゃダメよ」
「…はい」
アーシアは困ったように笑う。
アユムも悪魔として契約取りをするようにはなったが、なかなかうまく契約が取れていなかった。まず、やたらと顧客に変人が多いのである。評判自体は悪くないのだが、魔法陣から跳ぶことはかろうじてできりものの、魔術は全く使えず、武術以外は殆ど一般人なアユムにはこなせることは常識的な範囲のことである。
「…向いてないのかな」
「…いや、聞いた感じ、士方君の受けた依頼は僕も叶えられなさそうなのがちらほらあったよ?」
祐斗がフォローするようにそう言うが、他の悪魔ならちゃんと叶えられたかもしれないものもあるのも確かだった。…"魔法少女"に魔法が使えるようにさせられるのは、アユムの知る範囲なら一誠くらいのものだろうが。寧ろ、一誠は大抵の依頼をこなしてしまいそうな気がする。
「…やっぱり、魔術とか使えるようになった方がいいよな、俺、出来ること少ないし」
ただし、それは独学ではどうにもならなさそうだが。
「誰でも得手不得手はあるから、そんな深刻にならなくても大丈夫だよ。士方君は悪魔になったところなんだし」
アユムはヒロインとラブラブ石破とかやるんだろうか…