平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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リアス襲撃


秩序の破壊者33

 

 

夜十時、電話が鳴る。着信の相手はリアスだった。不思議に思いながら、一誠は電話に出る。

「もしもし…?」

『…イッセー、今からあなたのところに行ってもいいかしら』

「・・・」

いくら悪魔だからといって、未成年者が出歩く時間ではないし、夜に女性が男の元を訪ねるものではない、といつもの一誠ならば言っていただろう。だが、リアスの声は切羽詰まった、悲壮な響きをしていた。

一誠は小さく溜息をついて、言う。

「…緊急のことなんだね?僕に協力できることであれば、手を貸すよ」

『…ありがとう、イッセー』

すぐに、リアスは魔法陣を使って一誠の目の前に転移してくる。そして、勢いのまま、一誠に抱きついた。

「イッセー、私の初めてをもらって!」

「は?」

思いつめた様子のリアスに、一誠は目を瞬かせる。

「望んだ相手と結ばれることができないのなら、せめて一度、一番最初に抱かれるのは好きな相手(あなた)がいいの」

「処女と童貞のセックスとかただの苦行…じゃなくて、何を早まったことを言ってるんだ。リアス、君が悪魔だからといって、そんな貞操を擲つようなことはするべきじゃない。君が傷つくだけだ」

リアスが軽い気持ちで言っているわけではないことはわかっているものの、一誠もおいそれと頷くことはできなかった。

一誠は好きな人と性行為をして云々というのは幻想だと思っている。男も女もその気になれば愛がなくてもセックスはできるし、愛情を確かめる手段はそれ以外にもあるだろう。子供を作るためでなければする必要のないことなのだ。

故に、一誠はやんわりとその願いを突っぱねる。

「…確か、君とライザーさんの結婚は君の卒業後、って話になっていたよね?何かあったの?」

「…六月にでも、式を挙げよう、ってことになって…私、この婚約自体納得してないのに、何故か早められてしまって…」

「…それはちょっと妙だね。いくら何でも、あの(・・)公爵とシスコン魔王がそんなリアスの意思を無視して強引に進めることを良しとするかな」

二人共リアスとライザーの婚姻自体には反対していないものの、リアスが婚約を嫌がっていること自体は知っている。強引に進めるよりは、懐柔する方を選ぶだろう。

それに、急ぐ理由もないはずだ。サーゼクスの息子、リアスにとって甥にあたるミリキャスが生まれたこともあり、現状リアスに子供が生まれれば面倒なことになるのだし。

悪魔の出生率が低いこともあり、リアスが当主である内に生まれるとは限らないものの、まあやることやってればできるものである。そして、ライザーはどちらかといえば手が早い方だし、あまり深く考え込むタイプではない。

『…何か、進めざるを得ない事情でも出来た、と?』

「フェネクス卿も別に急く理由はなかったと思うし…何か横槍でも入ったのかな?」

「横槍…?」

情報が少なすぎて、具体的な推測はできない。しかし、何やらキナ臭いような気がした。

「…多分、あの二人は何かしら、君の我を通すチャンスを用意してくれていると思うよ。君が拒めば、だけど」

リアスが受け入れれば、それはそれで問題ない。だが、拒むのであれば一波乱起こるだろう。だが、ただリアスの意思を押さえつけるだけ、ということはあるまい。

「そう、かしら…?」

「君の父親と兄は君を大切にして可愛がっているからね」

平たく言えば、親馬鹿とシスコンである。

「あの二人がリアスの嫌がることを強行しきれるわけがない。嫌われて反抗期が伸びるのは嫌だろうしね」

とはいえ、家や立場の柵を突っぱねきることは難しいだろうが。…下手すると自分も一枚噛まされるかもしれないなあ、と一誠は思わず遠い目をする。一誠は赤龍帝だが、純粋な人間なのだが。

「グレイフィアさんもヴェネラナさんも、政略結婚を容認しつつ恋愛結婚派だし。…ですよね?」

「…イッセー様、お嬢様を宥めてくださったことは感謝いたしますが、夜に女性を部屋に招くのはどうかと」

「グレイフィア?!」

「イッセー、後でお仕置きね?」

「如何わしいことは何もしてないのにお仕置きって、厳しすぎない?黒姉」

一誠は肩をすくめる。

「ある意味、その状態でムラムラしないってのは逆にどうかと思うにゃん」

「してもしなくてもお仕置き、回避したければそもそも入室を許可するなと、はいはい、把握。…こういう話題とは思わなかったし、何やら切羽詰まった緊急事態だと思ったから許可したんだけどなぁ」

「…そういえば、ムラムラしてないの?イッセー」

「してないね。僕は責任も取れない状態で女性に無体はしないと決めている」

『朴念仁なだけだろう』

「イッセー」

唇に柔らかいものが触れる。

「ファーストキスくらいはもらってくれるわよね?」

「きっ…」

「き?」

「君はそれでいいのか?!」

「…イッセー、お仕置きは覚悟しておくのね?」

「…お嬢様、戻りましょう」

「…ええ、手間をかけさせたわね、グレイフィア」

リアスはすっかり本来の調子を取り戻したようだった。一誠は小さく溜息をつく。

 

 

 

 

 

 

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