さらっとライザーに連れ出され、現在地は冥界フェニックス領フェニックス邸、ライザーの部屋である。
ちなみに、リアスたちのフォローに分身体をドライグに明け渡して残してある。例のトレーニングスペースの管理と、同じドラゴン系の神器を持つ者としてアユムへのアドバイスも頼んでおいた。多少は助けになるだろう。
で、一誠はといえばライザーと雑談しながら格ゲーの対戦をしていた。
「で、何で君らの結婚が早まることになったの?正直、悪手だと思うんだけど」
「俺だってじっくり口説き落とす気はあるさ。だが、親父から式場の話が出て盛り上がっちまって…まあ、その親父も他の貴族連中のやつに勧められて断れなかったらしいが」
「へー…正直、100年ぐらい余裕持って口説けばリアスがライザーを受け入れる可能性もあったと思うんだけど…こうなるとどっちにしても禍根が残りそうだな。リアスが勝ったら延期じゃなくて婚約破棄だろうし」
「お前俺の味方か敵かどっちなのかはっきりしろよ。それ、応援なのか馬鹿にしてるのかどっちだ。お前がいる限り無理ってことか」
「いやあ、僕死ぬときは若死にするんじゃないかな、多分。…特にライザーさんの敵のつもりはないけど、どっちかといえば僕リアスの友達だから」
「よく言うぜ」
「人間は死ぬ時はあっさり死ぬものだからね」
さらっと言われたセリフにライザーは思わず沈黙する。
「そういえば、ライザーさんとリアスの婚姻って、ライザーさんがグレモリーに婿入りするんだよね」
「ああ。当然そうなるな」
「ライザーさんとリアスの子供ってさ、紅髪以外のグレモリー要素引き継げるのかな。正直、リアスもサーゼクスさんも、滅びの魔力を持ったグレモリーっていうより、紅髪のバアルって感じじゃん」
まあ、グレモリーの愛情深さは二人共持っているだろうが。
「はァ?そりゃ、どういう意味だよ」
「君らの遺伝子の優性劣性がどうなってるかは知らないけど、例えば、金髪碧眼、フェニックスの不死とバアルの滅びのハイブリッド悪魔が生まれる可能性もあるじゃん。でもその子って"グレモリー"なの?」
人間で言えば金髪碧眼はどちらも劣性遺伝で発現しづらい形質だが、紅髪ならぬ赤毛は更に劣性で珍しい色だったりするので難しい。…まあ、グレモリーの悪魔を見る限り、かなり紅髪の遺伝子は強そうだが。
「まあ、確かにその可能性も………やつら、俺のこと種馬扱いしてやがるのか!」
「うわっ。え、何突然」
「そうかそうか、不自然だとは思ったが、痺れを切らしたってわけだ、早漏共が」
ぶつぶつ恨み言のようなことを呟き始めたライザーに一誠は若干引く。ちゃんと頭を働かせれば賢いんだよなあ、と声に出さずに一誠は呟いた。
「…痺れを切らしたって、何か?」
「俺たちは婚約して5年経つが、正直仲が進展してないだろ」
「うん、正直ライザーさんは年上の包容力を発揮しきれてないよね」
「うるせえ。…でだ、このところの情勢…一応安定しちゃあいるが、逆に言えば何かでっかい事件が起きりゃあ幾らでも崩れる可能性がある。仮初の平穏ってやつだ」
「まあ、薄氷の上の安寧感はあるよねー。…何かあるとしたら多分駒王町だけど」
不発弾が多すぎる。
「滅びの魔力を持ったフェニックスでも不死を持ったバアルでも、いずれにしろ破格の能力を持った悪魔に違いはない…生まれれば期待のホープだろうな、間違いなく」
「そして、そもそも悪魔の出生率は低いし、生まれたとして戦士として前線に出られるまで最低でも15,6年はないと厳しい。となると、できる限り早く結婚してもらいたい、と」
一誠は首をすくめる。
「結婚そのものはともかくさ、この5年でミリキャス君が生まれて、一応リアスの次の当主は彼と暫定的に決まってる以上、君らの子供ってかなりデリケートな問題でもあるよね。女の子なら結婚させて丸く収めるかもしれないけど」
従兄弟は結婚できるのである。
「ああ。婚約の時点ではミリキャスは存在しなかったからな。生まれる子供に関する条文はない。生まれてからも、まずリアスを口説き落とさないことにはどうにもいかなかったから話し合いもされてないしな」
「…三男でもそういうのって勉強するんだね」
「ばーか、寧ろ三男だから要るんだよ。実家を継ぐ可能性がまずない以上、婿養子になるか分家として独立するかだからな。つぅかそういうお前は何で知ってるんだよ」
「人間だと婿養子はともかく、分家で独立ってのもなかなか難しかったりするけどねー。僕は……まあ、うん。"昔"、ちょっと色々あったんだよ。もう関わりたくないと思う程度には」
「そういえばお前、具体的には言わないが転生者だったか。貴族だったこともあるのか?」
「まあ、そんなところだね」
「僕としては、どっちに勝ってほしいとも言いづらいのが辛いところだね。なんだかんだ、家のことを抜きにしてもライザーさんはリアスのことを大切に思ってくれているし、時間をかけるか、何かをきっかけにするかで、歩み寄れば良い夫婦になれるだろうし、リアスを幸せにしてくれるだろうし」
しかし現状、リアスはライザーに対してツンドラである。
「
レイヴェルはそう言って紅茶で舌を湿らせた。
「まぁ、私はゲームで活躍するつもりはありませんけれど」
「女の子は特別扱いが好きだよね」
あはは、と一誠は笑う。
「僕は寧ろ、皆同じに扱う方が難しいと思うけど」
「…イッセー様にも特別な方がいますの?」
「家族として、友人として、の特別はいるけど、恋愛対象としての特別な相手は今のところいないかな。…リアスたちには、悪いとは思ってるけどね」
いっそ誰かを好きになってしまえば、はっきり拒絶して振り切らせることもできるかもしれないが、そうなれば関係性を変えざるをえないこともあり、無理にそうしようとは思えない。一誠はなんだかんだ、今の距離感が嫌いではないのだ。
「あまり、悪いとは思っていない顔をしていらっしゃいますわ」
「いっそ、愛想つかして吹っ切ってもらいたいと思ってるからね。自分から突き放すのは嫌だけど」
「意地が悪いんですのね」
「僕は結構性格が悪いんだよ。周りに思われているよりもね」
一誠はにっこりと笑ってカップを干した。すぐにメイドの代わりに控えていたイザベラが紅茶のお代わりを注ぐ。一誠はそれに小さく礼を言って微笑した。
「ライザーお兄様とイッセー様はリアス様を巡る恋のライバルであるはずですものね?」
「リアスがそれで幸せになるなら僕は身を引くけどね」
少なくとも一誠は、リアスが自分と結ばれた方が幸せになれるとは思っていない。寧ろ不幸にする可能性の方が高いとすら思う。
「本当にそう考えていらっしゃいますの?」
「僕は、彼女に恋することはできない」
一誠は、きっぱりと言い切った。
「彼女たちの恋情に僕は同じように恋情を返すことはできない。…覚悟を決めれば、愛情なら返せるだろうけど。だから、僕は恋する対象としては不適格なんだよ」
「…イッセー様は、ずるい方ですわ。そう思うのなら、女性に優しくするのはやめてくだされば良いのに」
「男だろうが女だろうが、相手が頑張ってるところを見つけたら応援したくなるものだろう。それに、人間関係は円満な方がいいからね。…っていうか、女の子にだけ冷たくしたらホモ扱いされそうだし」
それにそもそも一誠は他者に冷たくすることがあまり得意ではない。
「…まあ、わからないではありませんわ」
レイヴェルが神妙な顔で頷く。一誠は何故だか悪い予感らしきものを感じ取った。
「イッセー様を題材とした薄い本とやらが出回っていて、その内容はイッセー様と身近な殿方との恋愛もどきだそうですものね」
「何処からそんな情報仕入れて来たの君は」
「蛇の道は蛇、というやつですわ」
「君は不死鳥だろう」
その口ぶりからして実物を手に入れてはいないのだろうが、ある意味時間の問題のような気がする。とてもやめてほしい。
「言葉の綾、というものですわ。小耳に挟んだ程度の話ですし」
「ああいうのはまあ、所謂沼だから、レイヴェルちゃんは関わらない方がいいよ。世界にはもっと楽しいものが幾らでもあるからね、うん」
「イッセー様は実物を見たことがありますの?」
「頼まれてもやりたくないわそんな
あまつさえ描いたこともあるとかいうのは流石に言うつもりはないが。一誠は見えている地雷を踏みに行くマゾではない。
「…気になりますわ」
「…平たく言うならファンによる二次創作。原作とは設定が異なるものから原作で描かれなかった部分を補完するものまでまあ色々あるんだけど、大概は原作にはない恋愛関係を捏造するものだし、偶に最早原作のキャラ名しか残ってないレベルのもある。特に薄い本という場合、R18で引っかかるものも多い。つまりエロ本」
「大幅にイッセー様の主観な気がするのですけど」
「定義によってはハーレクインだってエロ本みたいなもんだろ。それに、"私に酷いことするつもりでしょう、薄い本みたいに!"みたいな定形ネタがネットにあるし。多分一般的に薄い本と言ったら大体そういう意味合い。同人誌、だとわからないけど」
とりあえずこの時空における設定である