「…感謝する、闘戦勝仏殿」
「おう、てめぇはきちんと礼儀ってもんがわかってるようだな、ヴァーリ=ルシファー」
「…?助けてもらった時に礼を言うのは、当然のことだろう」
「美猴のやつが血相抱えて頼みに来たからどんなやつかと思えば…こりゃ、到底悪人にゃ見えないなあ」
「…見えなくとも、それが必要な事なら悪事くらいやるさ。そもそも俺は善悪とやらには興味はない。俺は"自分が良ければ"それでいい」
「そりゃ勝手なことだな」
「俺も身の半分は悪魔だからな」
にぃ、とヴァーリは楽しそうに笑う。
「聖人君子ってわけじゃない」
「とか言って、一人で責任おっかぶろうとか考えてるわけじゃねぇよな?」
「そうだな…俺の部下たちは
「俺よりお前の方が人望あるだろうが」
「俺は人の上に立つのは苦手なんだ」
「嘘つけ」
ははは、とヴァーリは笑ってみせる。曹操は僅かに眉をしかめ、美猴はジト目で睨みつける。
「向き不向きと本人の嗜好は必ずしも一致しないぞ、曹操。俺が戦いを好まんことくらい君も知ってるだろうに」
「そんな事言ったらお前の得意と嗜好が一致してるのなんて料理ぐらいしかないだろ」
「学び研究開発し作り出すことも好きだぞ」
「知らねぇよ」
「…まあ、詳しい話は冥界を襲ってるっていう大怪獣?をどうにかしてからだろうが」
「
「…彼には恐ろしい思いをさせてしまっているな」
「ヴァーリはさっさと自分の体調を戻すことを考えてろ。情報はこっちも集めてる」
しょぼん、としてしまったヴァーリの頭を曹操がぽん、と撫でる。
「…迷惑をかける」
「友達を助けるのは当然のことなんだろ?そう気にするな」
「…ああ」
「ヴァーリ!!」
勢いよく抱きついてきた黒歌にヴァーリは苦笑する。
「どうした、黒歌。…病み上がりには少々キツいタックルだったが」
「ばか!無茶ばっかして、ヒトを心配させて、いいと思ってるわけ?!」
「あれぐらいじゃ俺は死んだりしない、とは思ってくれないのか?」
「そんなの、あなたがすごく苦しんでて、仙術もうまく働かないで。ずっと目を覚まさないで、って状況でずっと揺らがず信じてられるわけないじゃない!ばか、ばか、ばか!」
「あー…」
『だから、解呪が終わるまでは解呪だけに集中しておけと言っただろうが』
「いや、此処でいい機会だから一度じっくり鍛え直しておこうかと」
「…ヴァーリ?」
ずっと眠りっぱなしだった件に関する真相を白状したヴァーリは先程とは別の意味で黒歌に怒られていた。
「何なの?ヴァーリは戦うの嫌いって言っといて戦闘狂なの?馬鹿なの?死ぬの?」
「戦闘狂じゃない。だが…死ぬのかもな。俺は、俺の強さは、まだ"足りない"。俺はまだ、もっと、ずっと、強くならなきゃいけない」
「私たちが傍にいるのに、何で一人で頑張ろうとするのよ」
「…俺と一身同体で離れられないアルビオン以外は、ずっと傍にいられるとは限らない」
「っ…私たちが、ヴァーリから離れて、いなくなるって言うの?!」
「黒歌の一番は妹だろう?」
「ヴァーリのことだって、大切に思ってる」
「ありがとう。…だが、絶対はないし、ヒトは変わるものだ。離れたくなくても離れなきゃいけなくなるかもしれない」
「そんなのっ…離れないで傍にいられるかもしれないじゃない。何でそんな悲観的なことばっかり言うのよ、ばかっ…」
ぽろぽろと涙をこぼしながら訴える黒歌に、ヴァーリは少し困った顔をしてその頭を撫でる。
「だからこそ俺は、お前たちが傍にいる"今"が幸せで、嬉しいんだ」
苦笑いのような表情を浮かべてヴァーリは言う。
「…お前は、泣いていても綺麗だな」
「…ばか」
「…姉様を泣かせたんですか、ヴァーリさん」
「素直な気持ちを言ったら泣かせてしまった。正直、驚いている」
「そうですか、死んでください」
「遠慮する」
「白音、何言ってるにゃ」
「姉様は黙っててください」
「…だが、姉妹で仲直りどころか、元通り仲良しになっているようで良かった。家族は仲良くするのが一番だからな」
「なっ…こんなタイミングで何言ってるんですか」
「塔城が黒歌のことを大切に思っているのがわかったからな」
にこり、とヴァーリは笑う。
「あ、やっぱり小猫ちゃんと黒歌さんって仲良しですよね」
「ギャー君は黙って」
「きゃんっ」
ギャスパーを物理で黙らせた小猫にヴァーリは苦笑する。
「そうか…ということは、イッセーは今、狭間にいるのか」
「えっ」
「ん?」
「ヴァーリさん、イッセー先輩の悪魔の駒だけが戻ってきたんですよ。何故そうなるんですか?」
「いや…グレートレッドが夢を通じて、今イッセーと一緒にいる、と伝えてきていたから…てっきり、グレートレッドがグレモリーのところに来ているのかと思ったが、イッセーがグレートレッドの方に行ったのか、と」
絶句する小猫にヴァーリは不思議そうな顔をする。
「グレートレッドってあのグレートレッドですよね。何でヴァーリさんにそんなことを?」
「さあ。とても楽しそうにしていたが」
『あてつけというやつだろう、あれは』
「でも、つまりイッセーは無事ってことにゃ?」
「少なくとも、消滅はしていない。…だが、随分君たちを心配させているようだから、帰ってきたらとっちめてやらないとだな」
ふ、とヴァーリは微笑する。
「…それはあなたが言えるセリフじゃないです」
「…今日は随分客が多いな。君たちは俺が病み上がりだとわかっているのか?」
「悪いとは思ったが、こんな状況でもなければ顔を合わせて話をする機会がないと思ってな」
「私も同じです。…ディオドラが一目で心酔したというあなたに興味がありました」
「…俺が何故"危険人物"扱いされていると思っているんだ。君たち程度、操ることはわけもないぞ?」
ヴァーリは呆れたような目で二人の若者を見る。だが、サイラオーグもシークヴァイラも怯まなかった。
「そのような事を言う人は、余程無法はしないと思います」
「先程グレモリーの眷属と会ったが、特に何かされたという様子もなかったしな」
「…。塔城たちは元学友だからな」
はあ、とヴァーリは溜息をつく。
「まあ、俺は1を10にする事はできても、0を1にする事はできないからな…それで?何の話をしに来たんだ?バアルとアガレスの雛鳥は」
ああ、アガレスの方はディオドラの話をしに来たんだったか、と付け加え、ヴァーリは目を細めた。
「赤龍帝…イッセーは、お前が自分より格段に強いと言っていた。それに、とても優しい奴だとも。しかし、お前は
サイラオーグはヴァーリの胸のあたりで丸くなっているマナに視線を落とす。マナは完全にヴァーリを信頼し、その身を預けている。ヴァーリもマナに視線を落とし、優しい手つきで撫でる。
「ああ、こいつか?これはただの親をなくした淋しがりだ。ずっと満たされぬ渇きを抱えているのは哀れなので、満たされる方法を教えてやっているところだ」
その瞳は慈愛に満ちており、悪魔というよりは天使か聖者に見えた。ディオドラの悪名を思い出し、シークヴァイラは納得する。彼にとってヴァーリは、穢し堕としたい聖者でもあったのだろう。ハーフとはいえ、悪魔らしくない。
「…俺が悪魔らしくない、とでも思っている顔だな、アガレス。その
「そんなことはわかっています。でも、そうやって私たちに自然と助言を与えるのはあなたが善人だからではないのですか?」
「俺はただ嘘をつくのは好かんだけだ。別に善人じゃない。自己中で強欲な悪魔だよ」
小さく肩をすくめてヴァーリは二人を見る。
「こいつだって、後々利になるという計算が合って手元に置いている。…俺の可愛い神殺しの牙の一つだ」
「神殺し?」
「こいつの父親は
「それは…」
「欲しいか?…これが本当に望むものを与えてやれるのなら、譲ってやってもいいぞ」
手が掛かることを覚悟した上で、の話だが。そう言ってヴァーリは笑う。
「俺はこいつを力で屈服させたわけではない。だから、必要なものは力ではない」
「…満たされること、か」
マナは目を覚まして顔を上げる。
「マナはどう思う。そろそろ次の一歩を踏み出しても良いところだが」
くーん、と情けない声を上げるマナに、ヴァーリはくすり、と笑みをこぼす。
「嫌いになどならない。マナは"いい子"だよ。だから、ちゃんと世界を知ってほしい。そうして、マナにも好きなもの、大切なものを沢山作って欲しい。世界の"美しさ"を知ってほしい」
やさしく、無邪気な笑み。やはり彼は悪魔には見えない。強いて言えば、その"無償の愛"は恐ろしくもある。それも彼の求心力の一つなのだろう。
「マナ。
ああ、彼が優しくなければ、世界に優しさなど存在しない。
利点:超癒される。可愛い。
思いつきとその場のノリで言ってるので矛盾して見える