『ヴァーリ、我の名前を考えてくれ』
突然現れてそんなことを言い放ったグレートレッドをヴァーリはきょとんと見返す。
「お前の名前?」
『グレートレッド、アポカリュプスドラゴン、ドラゴンオブドラゴン、我を示す
「…確かにそうだな。グレートレッドは名ではなく
『構わない。我はお前がいい』
「そうか…」
ヴァーリはグレートレッドをじっくりと眺めて考え込む。
「…紅蓮…グレン、というのはどうだ?お前のその紅い躯と、グレートレッドの響きから考えてみたんだが」
『
グレートレッドはそう言ってヴァーリに鼻先をすり寄せる。
『…何が
「えっ」
『ちっ』
「…いや、現在の俺の立場は色々と微妙だから契約はしたくないんだが」
申し訳なさそうにヴァーリがそう言うと、グレートレッドは悲しそうにしょぼんとする。
『仮契約でも、良いのだが。…独りは寂しい』
「うっ…じゃあ、仮契約なら」
『では、我はヴァーリのグレンで、お前は我の契約者だな!』
『ヴァーリ…』
非難するようにアルビオンが名を呼ぶと、ヴァーリは肩をすくめた。
「しかしグレン、お前は少々躯が大きすぎるから、俺の傍にいる時はもうちょっと手頃なサイズになれないか?…目立つし」
認識阻害を使えば多少は誤魔化せるとは言っても、流石に大きすぎるからなあ、とヴァーリは呟く。グレンはふむ、と呟いて己の躯を縮ませる。
『こんなものでどうだ?』
大型犬程の大きさになり、グレンはふふん、と胸を張る。
「いいんじゃないか。…中途半端な気もするが」
グレンはヴァーリに尾を巻き付ける。
『あまり長時間狭間から離れると差し障りがあるが…暫く傍に居させろ』
「ああ…お前の好きにするといい」
ヴァーリはそう言ってグレンを撫でた。
「グレートレッド、何故ヴァーリと一緒にいる?」
『我はヴァーリと契約を結んだのだ。だから、我はヴァーリのグレンだ』
『契約といっても仮契約に過ぎないがな…』
グレンの発言を聞いてオーフィスは非難するような視線をヴァーリに向ける。ヴァーリは苦笑するしかできない。
「…ずるい」
『我から見れば後から見つけた癖にヴァーリにベタベタするお前の方が腹立たしい』
「ヴァーリ、我と契約する事はできないと言った」
「オーフィスと契約したら禍の団から絶対離れられなくなると思ったからな」
『そもそもヴァーリは私の相棒なのだということをわかっているか?お前たちは。契約するまでもなく、ヴァーリの魂は私と共にあるのだぞ』
『「アルビオンより我の方が強い」』
「…別に、俺は傍にいる者に強さを求めてないんだが」
ヴァーリは肩をすくめる。彼自身が強く、守る側だと思っているので、相手の強さは気にならないのである。強かろうと、弱かろうと。
『だが弱いよりは強い方がいいだろう?』
「強さを求め続ければ傍に誰もいなくなる…それに、俺の相棒はアルビオンだ」
『ヴァーリ…』
きっぱりと言い切ったヴァーリにグレンとオーフィスは面白くなさそうな顔をする。それを見てヴァーリは少し困った顔をした。
「アルビオンは俺が幼い頃からずっと俺と共にいてくれた。俺の掛け替えのない相棒で、家族なんだ。それは否定しないでくれ」
ヴァーリはグレンとオーフィスを撫でる。
「…ヴァーリ、やはり誰にでもやさしくするのはどうかと思うのだが」
「別に誰にでも、ってわけじゃない。求められると応えたくなるだけだ」
「それは誰にでも何処が違うのだ」
「俺以外にも可能性があるのなら、そちらに任せる」
俺以外に手を差し伸べることができないのなら、それを躊躇うことはできない、とヴァーリは言う。アルビオンは溜息をついた。
「お前は本当に、悪魔とは思えないくらいお人好しだな」
「それは褒め言葉か?」
ニィ、とヴァーリは笑う。アルビオンは苦笑のような表情を浮かべる。
「褒め言葉であり、苦言でもある、というところだな。相棒はお人好しすぎて損をしていると私は思う」
「俺は、自分の性分に後悔はないよ」
そう言い切ったヴァーリは、常と変わらない柔らかい笑みを浮かべている。心からの言葉なのだろう。まあそもそも、ヴァーリが心にもない言葉を吐くことなどそうそうないのだが。建前を取り繕うことさえも、どうしても必要でなければしない。