平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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アジュカとの対面
時期はとりあえず仮契約以降


数式を操る者

 

「何が面白いんだ?」

「君はゼロなんだな。それも、絶対的なゼロ」

アジュカはそう言って目を細める。

彼には見えていた。ありとあらゆる数式が、ヴァーリの元に達した途端に全て一つの結果へと収束していくのが。

それはまさに、"全てを律する力"。どんな数式も0を掛けてしまえば全て0になる。それは絶対的な真理だ。彼を現す数式そのものはゼロではないが、その性質はまさに0だった。

「………ああ。俺の属性は虚無であるらしいから、それでも全くの間違いではないのだろうな」

あるはずなのにないもの、とヴァーリは呟く。

そういう意味で言ったわけではないが、アジュカは訂正しない。説明する気がないからだ。

だが、ヴァーリは僅かに眉をしかめる。

「どうやら、見当違いのことを言ったらしいな。…だが、それ以外に俺にゼロと表すべきものがあるのか…?」

「…君の律する力、だよ」

「…ああ。だがこれはゼロではないぞ?」

ヴァーリの手のひらの上でピンポン玉大の魔力球が形成される。数式が、法則を無視した動きを見せる。

それはゼロではない。ゼロなどという生易しいものではなかった。ただ、彼の意志に従って書き換えられているだけだ。今までゼロに見えていたのは、それが一つの値に書き換えられていたからに過ぎないのだ。

「…確かに、それをゼロと思ったのは俺の勘違いのようだ」

ヴァーリには、一体世界がどう見えているのだろう、と思う。アジュカと違うのは確実だが、普通の悪魔と同じということもあるまい。

全てを見透かすような紫水晶(アメジスト)の瞳。そこに映るのはおそらく、単なる物理的な現象を伴う事象だけではない。そう、きっと彼には、己の力の及ぶものの全てが見えている。

アジュカが数式を見るように、ヴァーリにも何か(・・)が見えている。そして、彼はおそらくアジュカの感情が見えている。だとするなら、彼の力は…

「あなたは、俺の力を警戒してくれるんだな」

「だが、その気になればその警戒心もなかったことに出来てしまうのだろう?」

「…不可能ではないな」

消極的な肯定。

成程、サーゼクスの評価はあながち間違っていないらしい。曰く、その力、実力自体は警戒に値するが、人格的性格的な意味で脅威になりがたい。

ヴァーリ=ルシファーは他者と争うことを望んでいない。

旧魔王派は何故それが分かっていなかったのだろう。彼にとっては煩わしく迷惑なばかりだったはずだ。第一、彼にその気があれば禍の団(カオス・ブリゲード)を使うまでもなく革命は成っていたはずだ。そういう力なのだ、彼が持っているのは。

"世界の法則を書き換えられるのだから、他者の精神を書き換えることぐらいは造作もない"はずだ。

 

「アジュカ殿は「何だ、その妙な呼び方は。今は公的な場ではないのだぞ?」と言われても…」

「俺以外の三人はどう呼んでいるんだ?」

「サーゼクス兄さんとレヴィアたんとファルビー」

「・・・」

斜め上の回答に面食らったアジュカにヴァーリは真面目な顔で返す。

「そう呼べと言われた」

「…いや、まあ君が自分からそう呼ぼうと思ったとは思わないが…馬鹿正直にそう呼んでるのか」

「特に不都合はないからな」

平然とそう言ったヴァーリを見て、アジュカは少し考えた後、悪戯っぽく笑う。

「だったら俺もサーゼクスと同じく兄さんでいい」

「…では、アジュカ兄さん、と」

躊躇いもなくそう返したヴァーリに、アジュカは一応予想はしていたが笑みを引きつらせる。こいつ冗談が通じねぇ。

『…今のは軽口の類だろう』

「別に、俺に不都合はない。"血の繋がりもないのに兄と呼ぶ相手"が今更一人増えても特に葛藤はない」

それはつまり、前はあったということか。

「それに"上に立つ者は些細なことでも口に出した発言には責任を持たなければいけない"とシュミハザが(父様に)言っていた」

『まあ言っていたが』

 

「サーゼクス、ヴァーリに兄さんと呼ばせてるらしいな」

「ああ。だって私も彼も"ルシファー"と名乗っているんだから、別にいいだろう?」

それに彼の傍にいると気分が落ち着くんだよね、とサーゼクスは付け加える。

彼の言いたいことはわからないではない。納得できるかはともかく。

「そういう君は何と呼ばれているんだ?彼なら殿付けで呼びそうだけど、君はそういうの好きじゃないだろう?」

「…お前が兄さんと呼ばれているというから、同じでいいと言ったら…」

「あはは。良かったじゃないか、可愛い弟ができて」

「お前と一緒にするな」

不本意そうな顔をするアジュカを見てサーゼクスはくすくすと笑う。

「アイツ絶対"性格悪い"面もあるぞ」

「寧ろないわけがないだろう。旧魔王派を潰すために禍の団に入り、敵意なく相手を攻撃できる男だよ」

「…まあ、そう言われると…」

潰したいだけなら、正面から叩き潰した方が簡単だったはずだ。実力的にも、ヴァーリは十分それができる。そこをあえて己を埋伏の毒とすることを選ぶのだから、一筋縄でいく相手ではないだろう。

敵意に関しては、寧ろ彼にはそういう"悪意の類がない"という方が正しそうだが。まあ、厄介な相手であることは間違いない。

「態々怒らせるようなことをしなければ無害なんだけどね。まさに触らぬ神に祟りなし、というやつ」

「…そういえばアイツは一体()なんだろうな」

「さあ…ハーフというのを考慮しても、ただの悪魔ではないよね、彼は」

 

 

 

 




他ルートでも多分似たような感じに見えている
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