曹操視点
一人でうだうだ考え事してるだけ
あの時のことは今でもよく覚えている。
『君は何で英雄なんかになりたいんだ?』
彼に投げかけられたその問いが、俺たちに現在の道を選ばせたと言っても間違いではないだろう。彼にはそんなつもりはないのだろうが、俺たちは彼の影響を強く受けていると思う。
良くも悪くも、彼は人を引き付ける。人を導く天性の資質を持っている、とでもいうのか。カリスマがあるといってもいい。ジャンヌあたりは俺もカリスマに関しては良い勝負だと言ってくれるが…俺など比べ物にならないだろう。俺は味方の心しか掴めないが、ヴァーリは味方ではないもの、敵対した者の心さえも掴んでしまうのだから。
寧ろ、あの他者を心酔させる資質はある種の呪いじみてさえいると思う。それは、ルシファーの血を引く悪魔(正確には半魔)であることや、超越者クラスの力量を持つことよりも、彼が彼であることに由来しているのではないかと思う。彼はおそらく、仮にただの人間として生まれても高いカリスマを持っていただろう、という気がする。明確な根拠があるわけではないが。
とはいえ、カリスマがあるというのは、間違わないということではない。何をしてて何となくそれが正しい選択をしているように見えるというだけだ。彼に世界中の全生物がヴァーリのカリスマに平伏したりしたら、世界は平和になるかもしれないが、その内滅びるだろう。彼は上に立つ者としては奇矯に過ぎる。サポートする者が必要だ。彼と世間のズレのすり合わせをする者が。
そもそも彼は上に立つのは苦手なのだと言っているが、
「…大体、アイツはマイペース過ぎるんだ」
俺は居合わせなかったが、グレートレッドを愛玩動物認定してペットとして連れ帰ろうとしたとか、フェンリルたちをペット扱いしてるとか、魔王や神を手玉に取って遊んだとか、並行世界のヴァーリがどうとか…お前一人だけ楽しそうだな。ストレスが溜まってたのは知ってるが、猛獣を愛玩動物扱いするのはどうかと思うぞ。まあ、フェンリルは護衛として優秀な存在かも知れないが。何しろ神喰狼、神殺しの牙だ。容易に退けられる相手じゃない。…ヴァーリは相対するだけで服従させたらしいが。
アイツを傷つけられるやつなんてそうそういないんじゃないかという気さえしてくるが、つい先日サマエルによって死にかけたからな。何者にも傷つけられないというわけではない。単純に力量的な意味で困難なことではあるのだが。
「まだ強くなるつもりらしいし…アイツは一体何を目指しているんだか」
現時点でも、俺はヴァーリに勝てないだろう。元英雄派メンバーが束になってかかっても難しいかもしれない。一応ライバルだという赤龍帝だって、文字通り子供のようにあしらわれて終わりだろう。魔王はどうだろう、最終的にはヴァーリが勝ちそうな気はするが、いい勝負はできるだろうか。神はまだ流石に勝てないと思いたいが…世界最強たるオーフィスは精神的なところで勝負にならないし、聞いた感じではグレートレッドもそうだ。アイツは神殺しでも目指しているんだろうか。
いや、本人の言葉を信じるならアイツは戦いは求めていないし、平和主義者である。…傍から見れば戦闘狂だが。まあ、本当に戦闘狂なら自己封印で子供になろうとなどしないだろう。多分。
どちらかといえば、
おそらく原因は、ヴァーリの両親。そして、その相手が既に死んでいる以上、直接上書きしてもらうことはできない。アイツの厳密に区別したがる性質からして、両親から拒絶されたという事実を他の者が上書きすることはできないだろう。つまり、どうもできないということになる。
…。
せめてアイツにまともな肉親がいたら良かったんだろうが、アイツは一人っ子で祖父は"アレ"だ。どうにもならないだろう。…そういえば母方の親族の話は聞かないが、そちらに関してはどうなのだろう。…いや、ただの人間では、おそらく無理なのだろうな。そもそもヴァーリが気にしている様子がないからヴァーリの方も受け入れないかもしれない。