平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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白龍皇本編終了後if
inゼロ魔


白き使い魔1

 

 

その場のメイジは皆、言葉を失った。

誰もが、ルイズの喚んでしまった使い魔が規格外の存在であると悟らざるを得なかったからである。

気付けば、他の生徒たちが喚んだ使い魔たちは皆その存在に大して(こうべ)を垂れていた。

それは、成人男性であるように見えた。艶やかな銀髪に白い肌、纏う衣も間違いなく上等であり、全身から気品が溢れ出ている。青年は共に召喚されてきた椅子に座ったまま動かない。

その沈黙の中、動いたのは青年と召喚した張本人であるルイズだった。

「…寝てる」

触れられる距離まで近づき、ルイズは青年が静かに寝息を立てていることに気付いた。ルイズの呟きをきっかけに、メイジたちは思い出したようにざわつき始める。

ルイズは青年を暫く見つめた後、決意したような顔をして呪文を唱え始める。

「!いけません、ミズ・ヴァリエール!」

教師の制止も虚しく、ルイズはコントラクト・サーヴァントの呪文を完成させる。口付けと共に、青年は目を覚ます。

「…誰だ?」

美しい紫水晶(アメジスト)の瞳に怯みそうになりながらも、ルイズは虚勢を張って宣言する。

「あなたの御主人様よ!」

「…面白い冗談だ、と言ってやればいいのか?」

くすり、と青年は微笑し、小さく欠伸をする。そして周囲を見回して首を傾げる。

「ドッキリにしては大掛かりなようだが、此処は何処だ?このような意味のわからないことを考えそうなのは…美猴か、ゲオルグか、それとも、父様かサーゼクス兄さんあたりか…いや、クロウたちということもありうるか」

シャルバは死んだし、と呟いて青年は再びルイズを見る。

「さて、誰の差金でこんなことをしたのかな、お嬢さん」

「誰の差金ってこともないわよ。私はあなたを使い魔として召喚して、ちゃんと契約も結んだわ」

『…この少女の言うことは事実だ、相棒』

何処からともなく男の声がして、ルイズは辺りを見回す。

「根拠は?」

『お前は眠っていても私は起きていたからな。…そもそも、此処は異世界だぞ』

「……ああ、確かに、"違う"な。俺としたことが、頭が働いていなかったようだ」

いつの間にか、青年の背には異形の翼があった。声はそこからしているようだった。

「私はルイズ=フランソワーズ=ル=ブラン=ド=ラ=ヴァリエールよ。あなたは?」

「俺は白い龍(バニシングドラゴン)。ヴァーリ=ルシファーだ」

 

「この度は大変申し訳ありませんでした」

「いや。そのように畏まらなくても良い。"事故のようなもの"なのだろう?俺も立場がある故にずっと子供の遊びに付き合っていることはできないが…まあ、迎えが来るまでくらいなら相手をしてやってもいい」

「寛大なお言葉、感謝致します…」

「失礼ですが、いずれの方か伺ってもよろしいでしょうか」

「白龍皇、と呼ばれている」

ヴァーリはそう言って口の端を上げるが、それ以上を説明しようとしない。

だが、その()から高い地位にあることは容易に想像できた。そうでなくともその風格と気品から、貴人であることは疑いようがなかったが。

 

「…つまらんな」

ぽつり、とヴァーリは呟く。

「つまらん、って…」

「このような陳腐で子供の遊びのような魔術によって喚ばれたとは…俺も随分気が抜けていたらしい」

「なっ…」

ぱちん、とヴァーリが指を鳴らすとその目の前に剣が十振り程出現し、床に突き刺さる。

「洗練された魔術師(メイガス)を名乗るのならばこれくらいのことはできなくてはな」

剣はいずれも素人目に見ても名のある職人に作られた業物と言っても通じる品ばかりだった。実用を重視しているのか装飾は控えめなものばかりだが。

「魔術じゃなくて魔法だし、メイジよ」

「どちらでも同じだ」

肩をすくめ、ヴァーリは立ち上がる。

「時間の無駄だ。俺は席を外させてもらおう」

「ちょっと、何処に行く気よ、ヴァーリ」

「さて、何処にしようか。お前も来るか?ルイズ。何ならお前に魔法の手ほどきをしてやってもいい」

「え?!」

「困ります、ミスタ・ルシファー。授業中なのですよ?!」

「この国が教養としてどの程度のことを教えているかは知らんが、魔法に関しては大した事がないのは見ていればわかる。なに、要はその程度(・・・・)のことを覚えさせれば良いのだろう?暇潰しに丁度良さそうだ」

「なっ…」

「幸いにも俺とルイズの属性は"近い"。物覚えが悪くなければどうにかなるだろう」

「私の、属性…?」

「四大のいずれにも当てはまらぬもの。"あるはずなのにないもの"」

「それってまさか…虚無?」

ニィ、とヴァーリは笑う。

「ミスタ・ルシファー、ミズ・ヴァリエール、授業の妨害はやめて頂けませんか」

「どうする、ルイズ」

「えっ…」

ルイズは逡巡する。ヴァーリの誘いは魅力的だった。これまでまともに魔法を使えなかった自分がちゃんと魔法を…それも、すごい魔法を使えるようになるかもしれないのである。

「授業を受けるのであれば、俺は一人で散歩にでも行かせてもらうが」

「…わ、私も行く!」

「ミズ・ヴァリエール?!」

「そうか」

ヴァーリはルイズを抱き上げ、白い翼を広げて窓から飛び出した。

 

 

「とりあえず何でもいいから魔法を使ってみろ」

「えっ」

視線で促され、ルイズは渋々杖を構える。何のアドバイスもないのだから、常と変わらない結果になるだろう。ルイズはファイアボールの呪文を唱える。

爆発した。

「…ふむ。どうやら基本ができていないようだな」

ヴァーリはそう言ってルイズの杖を持つ手をその上から掴む。

「使いたい魔法のヴィジョンをもっとはっきり具体的に持て。呪文など所詮その助け程度にしかならん。そして自分がそれを出来るのだと疑うな。もう一度だ」

至近距離で囁かれ赤くなるルイズをヴァーリは意に介さない。

ルイズが動けないのをどう判断したのか、ヴァーリはふむ、と呟く。

「手本を見せてやるからよく見ておけ。…"ファイアボール"」

ルイズの手を掴んでいない方の手を前方に伸ばしてヴァーリはたった一言そう詠唱する。すると、メロン程の大きさの火球が出現し前方に飛んでいき、障壁らしきものにぶつかって消えた。

「ほら、やってみろ」

「や、やればいいんでしょう、やれば!」

半ば破れかぶれになりながら、ルイズはヴァーリの言う通りに魔法を発動させる。リンゴ大の火球が発生し、前方に飛んで消える。

「…え」

「それが魔法だ。今の感覚を覚えておけ」

「わ、私、魔法がちゃんと使えた?」

「ああ。"それがお前の本当の実力"だ」

「私の、本当の実力…」

「ほら、もう一度やってみろ」

ヴァーリが手を離す。ルイズはもう一度呪文を唱える。

「ファイアボール!」

爆発した。

「・・・」

「感覚を覚えろ、と言っただろう。その己の放つ魔法を爆破魔法に変換する癖は何故付いたんだ」

「魔法を、変換…?」

「自覚がなかったのか。お前の魔法は発動直前に爆破魔法に変換されている。変換しなければ何の問題もなく元の魔法が発動するはずだ」

そう、ルイズは魔法が失敗して爆発するのではなく、寧ろ成功しているが故に爆発するのである。ある意味性質が悪い。

 

「アルビオンの皇太子の名がウェールズ、か」

心底可笑しそうにヴァーリは笑う。

「何がそんなに面白いのよ」

「いや、何…白い龍(バニシングドラゴン)の宿敵は赤い龍(ウェルシュドラゴン)と決まっている…なぁ、アルビオン」

『…ああ。私も少々複雑な気分だ』

「アルビオン、ですって?」

『こちらでは国の名になっているようだが、あちらでは私のことであり私の名だ。二天龍の片割れ、白い龍(バニシングドラゴン)のアルビオン。或いは白龍皇』

「白い龍とか、白龍皇とか、ヴァーリのことなんじゃなかったの」

「俺のことであり、相棒のことでもある。そもそも俺とアルビオンは切っても切れぬ関係だ。どちらでもそう変わらん」

「・・・」

「それで、何だ。ウェールズとやらをどうすればいいんだ?」

「ちょっと、ヴァーリ?!」

「折角アルビオン(あいぼう)と同じ名の国があるんだ、観光がてら見に行ってくるのもいいだろう」

『お前はまた、滅茶苦茶なことを…』

「お前は気にならないのか?」

『そりゃあ、気にならないと言えば嘘になるが』

 

禁手の鎧を身に纏い、ヴァーリは空を飛んでいた。

『何を思って引き受けたんだ?あの姫はお前の好みではないだろう』

「暇潰しだ。こんな未開の地じゃあ一所に留まっていても退屈だからな。それに…対価はいずれ払わせるさ。ルイズも含めて、な」

『…やれやれ。お前は本当に、どんな相手でも気にしないな…』

「区別する必要性がない。そもそも、この使い魔契約に俺の意思も、利益もないからな。コンプレックスを解消してやれば多少マシになるかと思ったが、どうも期待外れだ。…所詮、人間の貴族ということか」

『お前らしくもない言葉だ』

「俺だってストレスが溜まれば毒くらい吐く」

癒しが足りんのだ、癒しが、とヴァーリは毒づいた。苦笑のような声を漏らし、アルビオンは言う。

『しかし…流石にそろそろ来るのだろう?迎え(・・)は』

「ああ。だいぶ近づいて来ている感触がある。もう後一週間もかからずハルケギニアに現れるだろうな」

まっすぐ俺のところに来るかはわからないが、とヴァーリは付け加えた。

 

「父様は無闇に殺してはいけないと言っていたが…」

ぽつりと呟き、ヴァーリは飛空艇を見る。

「まあ、やられたらやり返せ、とも言っていたからな」

魔力弾が飛空艇を撃ち抜く。船体が燃え、バランスを崩して落ちていくそれを見下ろしてヴァーリは言う。

「…死にはしないだろう、多分」

『…いや、中身はただの人間なんだから死ぬ可能性はあるだろう』

「警告もなく撃ってきたのだから正当防衛だ」

『あの程度で傷つく鎧ではないがな』

寧ろ、この世界(ハルケギニア)には傷つけられるものは存在していないだろう。元々この禁手の鎧は物理的にも魔術的にも高い防御力を誇っている。流石に無敵とまでは言わないが、普通の人間が神器もなく出せる程度の攻撃力では歯が立たないのも確かだ。

「攻撃してきたことそのものに対する報復だ。俺だから平気であっても、俺でなければ死ぬような目に遭っていただろうからな」

『寧ろお前以外にこういう状況になりうる者はそうそういないと思うが…』

 

 

 

 




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