平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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斥候隊到着・宣戦布告


白き使い魔2

 

 

『ヴァーリ!』

「グレン。よく来てくれた」

ふわり、と花が咲くような笑みを浮かべたヴァーリにグレンは鼻先をこすりつける。

『体の不調などはなさそうだな。心配した』

「ああ。退屈極まりないし、不快なことも多かったが、体調を崩すほどでもない」

「ヴァーリ、寂しくなかったか?」

グレンの背から飛び降りたオーフィスがヴァーリに抱きつく。

「寂しかったのは君だろう?」

「…うむ。我、ヴァーリに会えなくて寂しかった」

「そうか」

ヴァーリはオーフィスを抱き上げて頭を撫でる。その間に、グレンの背から更に二人、下りてくる。

「これが異世界かー。"遊び"甲斐がありそうじゃねぇか」

「"遊び"に行くのはきちんと情報共有してからにしてくれ。此処でリゼヴィムが死んでも"俺たち"は困らないがヴァーリは悲しむ」

「へいへい、知ってますよ」

「おじいちゃん?!何でおじいちゃんが此処に?!」

「そりゃあ、うちのヴァーリきゅんが攫われたって聞いたら、俺様も動かざるを得ないじゃん?異世界にも興味あったし」

『…後ろがメインだろうな』

「そう簡単に動いていい立場じゃないはずだが」

「こっちで好き勝手する分にゃ何も言わねぇだろ。だってアイツ等には関係ねーもん」

ヴァーリは微妙な顔をした。リゼヴィムは楽しそうに、そして嗜虐的に笑う。

「ヴァーリ、その人たちは一体何?」

「俺の部下とおじいちゃんだ。おじいちゃん、俺を召喚して使い魔にしたルイズだ」

「へぇ、ヴァーリきゅんを使い魔に。使い魔…使い魔って…」

リゼヴィムはツボに入ったらしく腹を抱えて大笑いする。呆気にとられるルイズとヴァーリを他所に、オーフィスはルイズを睨みつける。グレンも剣呑な視線をルイズに向けている。

残りのメンバーが追いついてきた時、リゼヴィムはやっと笑いの発作が収まったらしく、目尻に浮かんだ涙を拭う。

「あー笑った、笑った。ルイズ、だっけ?…お前、死ね」

リゼヴィムが放った魔力弾は障壁に防がれる。

「リゼヴィム、勝手な行動をされては困るのだが。"こちら"にも"召喚者"に色々言いたいことがある者がいる」

「そんなこと僕ちゃんの知ったことじゃないね。ヴァーリきゅんで遊んだり困らせたり弄んだりして楽しんでいいのは俺様だけなわけ。だから(・・・)殺す。超シンプルでわかりやすい論理じゃん?」

「わかりやすいがやめてくれ。特に俺を玩具扱いすることを」

「いいじゃん、どうせ俺っちはもうすぐヴァーリの"唯一"じゃなくなるんだしー?」

「…そちらはまだあまり実感がないがな…とにかく、いい大人が癇癪を起こすのはどうかと思う」

 

ヴァーリ=ドッペルゲンガーがその存在特性を利用して二つの世界を繋ぐ転移の門を開く。

一時間にも及ぶ儀式により無事途は開かれ、楔が打たれる。

一番に門をくぐって現れたのは黒歌だった。

「ヴァーリ!!」

「黒歌」

勢いよく抱きついてきた黒歌を受け止め、ヴァーリは苦笑する。

「そんな激しい動きをして大丈夫なのか?お前一人の体じゃないだろう」

「今は安定期に入ってるから、ちょっとぐらい大丈夫にゃ。っていうか、私がどれだけ心配したと思ってるにゃ!ばか!ばかばかばか、ばかヴァーリ!」

「不可抗力だ、と言いたいところだが…まあ、甘んじて受け止めよう。すまなかった。心配してくれてありがとう」

ヴァーリはそう言って黒歌の額に口付けを落とす。そして優しく微笑んだ。

「黒歌は相変わらず綺麗だ」

「にゃっ…も、もう!ヴァーリはまた、そういうこと言って…」

盛大に照れる黒歌を見てヴァーリはまた微笑う。

「公衆の面前でそうやって盛大にイチャつくのはどうなんだ」

「これぐらい普通だろう」

「普通じゃねぇよ」

「そうか…?」

若干イラついている早々に苦笑しながらヴァーリは首を傾げる。

「君にも面倒をかけたな。すまない」

「いや。業務自体はドッペルゲンガーがこなしていたし、部下がお前の心配をするのは人徳だ。突発的な事故でもあった以上、お前を責めるつもりはない」

「…そうか」

「代表は結局曹操ということで落ち着いたのか」

「人間代表はな。セラフォルーとバラキエルとミカエルもそれぞれの代表として来るそうだ」

「…そこまで大事になっているのか?」

「"被害"にあったのが他でもないヴァーリだからな。例えば、俺だったらもっと穏便に済ませることもできただろうが…天界にも冥界にも既に"不在"の影響が見え始めている。お前が突然失踪したのが拙かったらしい」

「では、さっさと戻らないとな」

 

交渉のテーブルについたのは曹操、セラフォルー。バラキエル、ミカエルの四人と、トリステイン王国上層部と学院の責任者だった。ヴァーリは黒歌とオーフィスの毛づくろいに気を向けているし、ルイズ他生徒たちは口を挟めないでいる。ちなみにグレンとドッペルゲンガーは不参加、リゼヴィムはニヤニヤしながら見ているが話し合いには参加していない。

「ヴァーリ、召喚者、消してもいいか?」

「確かにルイズは短慮が過ぎたが、命で支払わせる程のことか?」

「ヴァーリを好きなもの、皆心配した。ヴァレリー、自分がヴァーリを眠らせたせいで、と己を責めていた。我も気付けなかった、不甲斐ない」

「そうか…」

ヴァーリは目を細めた。妙なところで己の居眠りの原因がわかったものである。

「だが、やはりこの国では命の危険には会っていないのだから、殺すのはやりすぎだろう。命は気軽に奪ってはいけないと父様も言っていたし」

「この国ではない所ではあったのか」

「俺でなければ死んでいた可能性もなくはない」

 

 

ヴァーリ=ルシファーは、聖書を巡る三勢力にとって重要人物である。

悪魔にとっては言うまでもない、前魔王ルシファーの血を引く生まれながらの君臨者にして、現魔王の元、大公として先代に今も忠誠を誓っている悪魔をまとめあげている大悪魔である。彼が姿を消せば彼に心酔する悪魔たちは統制を失い誰彼構わず牙をむく可能性さえある。

天使にとってはもう少し複雑である。公表されてはいないが、彼は世界のバランスを整える者としての"神"と"魔王"を兼任している。いわば、この世界の秩序の源そのものといってもいい。彼が存在することで約2000年ぶりに天界の"システム"は安定し、新たな天使が生まれるようにもなっている。故に、彼が存在しなくなれば"システム"に不具合が生じ、天界に混乱が生じてしまう。

堕天使にとって、彼が存在すること/しないことに対する直接的な影響はあまりない。彼の義父であるアザゼルの精神に対して大きな影響はあるだろうが、アザゼルは総督の地位を退いた身である。公的には関係ない。だが、同じく冥界に住む者として悪魔の混乱と無関係ではいられないし、彼は他の神話体系に対する抑止力でもある。故に見過ごすわけには行かない。

また、三勢力に共通の事情もある。三勢力が完全に手を結んだことで統一された軍事部門、通称・連合軍の最高責任者たる総帥がヴァーリなのである。当初は御使いのジョーカーであるデュリオや、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)の持ち主である曹操、若手悪魔の中でも実力者であるサイラオーグなども候補として上げられていたが、実績(・・)と抑止力としての期待値から彼が選ばれることになった。彼を欠いたところで不具合が出るような組成にはなっていないが、心理面での影響は大きい。

簡単に言えば、彼が喪われることおは三勢力のいずれにとっても不利益となるのである。

「我々としても、彼を拐かした上に契約で縛り、あまつさえ精神に干渉するルーンを刻んだというあなた方の行いは誠に遺憾という他ありません」

「彼は許しを口にしたそうだが、精神に干渉して"言わされた"言葉で矛を納める程私たちは愚かではない」

「彼の慈悲深さを思えば、それがなくとも許しを口にしていたかもしれませんが、既にこちら側に損害が生じている以上、このまま引き下がるわけには参りません」

「俺たち、連合軍総帥ヴァーリ=ルシファー配下一同、皆彼に危害を加えた者たちを蹂躙し滅ぼす用意がある」

セラフォルー、バラキエル、ミカエル、曹操の順に己の立場を述べる。

要するに、宣戦布告に近い。そして、その理由も至極まともで当然なことだ。寧ろ、問答無用に滅ぼされていてもおかしくなかった。

しかし、感情的にも理論的にもそれを理解できていない者がいた。

「確かに、彼を召喚し使い魔契約を結んだのはこちらに非があるかもしれません。ですが、彼は私を助けてくれましたし、そちらと友好的な関係を結ぶこともできるのではありませんか?」

「姫様!」

アンリエッタの言葉で代表四名ばかりか、それを見守っていた黒歌とオーフィス、リゼヴィムも殺気立つ。特に強い殺気を放っているのはミカエルである。

「では、あなたはそちらで言う教皇、或いは始祖ブルミルとやらに当たる存在が他国に拐かされ奴隷にも等しい地位に落とされたとしても、その国と友好を結べると」

「それは…」

天界にとってはそういうことであり、その答えは勿論Noである。彼を取り返しその国を蹂躙し征服する。選択肢はそれ一択である。元々、十字教はそういう侵略者としての性格を持っている。

「先に手を出したのはそちらです。あなた方に友好を唱う資格はありません」

「ミカエル、ヒートアップのしすぎだ。あまり激昂しすぎると"堕ちる"ぞ。戻せるとはいえ、トップが堕ちては他に示しがつかないのではないか?」

「…申し訳ありません」

ヴァーリの呼び掛けでミカエルは殺気を納め、大きく息を吐いた。

「私たち四人が上に立ってることだけでも気に入らないと思ってるヒトたちもいるんだから、たかだか20年も生きてない小娘が彼の主を名乗ってると知れたら暴動が起きかねないのよね」

「俺たちも彼が人間の小娘に使役されるというのは受け入れ難い」

「よりにもよって、彼を使い魔とは…傲岸にも程がある」

「抹殺対象追加決定待ったなしだわー、これは放置しとけないしー」

「人死には最小限に抑えて欲しいんだが…」

「最小限ってことはゼロじゃなくてもいいってことだろ?」

「…まあ、おじいちゃんに不殺は無理だろうからな」

性格的にも、能力的にも。相手を弄ぶために手を抜くということはあっても、敵を殺さず生かすということをするような悪魔ではない。大変気まぐれではあるが。

「ルイズを殺す気ですか?」

「契約は結んだ相手が死ねば破棄されるってのは基本じゃん?っていうか、うちのヴァーリきゅんで遊んでいいのは俺様だけなの。百万歩譲ってヴァーリきゅんが自分で決めた相手の言うこと聞くのはいいとして、"それ以外"は全部アウトなわけ。わかる?」

 

 

 

 




某if(チャット参照)の流れをくんでる話でもある

リゼ<侵略ヒャッハー
天使<よろしい、それでは聖戦だ
部下<俺らの総帥拐かすとか絶許
悪・堕<何?お祭り?俺たちも混ぜろ
 これはひどい。
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