平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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一誠ノーマル√

駒王学園入学式の日


一誠ノーマル√
赤き龍帝1


 

兵藤一誠は普通の人間である。

否、こう言うと誤謬を招くだろう。

確かに、一誠には高い魔力がある。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)という神滅具(ロンギヌス)を所持している。総じて高い戦闘力を持っている。

しかし、彼は普通の人間である。お人好しの善人である優しい両親を見習い、その教えに従って生きている何処にでもいるだろうお人好しの善人である。

『イッセー』

「(どうした?ドライグ)」

『この学園、悪魔がいるようだぞ』

「(悪魔が?)」

ある程度のことは、ドライグから聞いていた。

この世界には人間以外にも様々な存在が居ること。各神話体系の神、ドラゴン、幻獣、天使、堕天使、そして悪魔。幻獣の類はともかく、他の人間と同程度かそれ以上の知性を持った種族に彼…赤龍帝のことが知れれば争いに巻き込まれることになるだろう、と。

「(…じゃあ、認識阻害と自己封印をかけておいた方がいいかな。お前も学校じゃ緊急時以外話しかけるなよ)」

『…そうするべきだろうな。相棒が平穏を望むなら』

ただでさえ、入試を満点の一位突破したとかで目立っているのである。新入生代表として宣誓を行うことにもなっている。あまり目立ちたくない彼としては、面倒極まりない。

そもそも、ただ家から徒歩か自転車で通える位置にある、というだけの理由で選んだ学校である。両親は浮いた話の一つもなく、女の子に興味を持っている様子もない息子に彼女ができる事を期待しているようだが。

「…俺は特別じゃなくていいんだけどな」

一誠は溜息のようにそう呟いた。

 

「(…あー、緊張したー…)」

読み上げるよう言われた宣誓の文書が白紙だったことに気付いた時には泣きたくなったが、何とか適当な宣誓文を"知識"から引っ張り出して乗り切った。

会場がやけに静かになったりしたからビビったが、ちらっと見た感じ特に悪印象を持たれたということはなさそうだ。

恐らく、一斉と本来の文書を用意した人間以外は、一誠の手にあった紙が白紙だったことに気付いていないだろう。まさか、用意されていた文とそっくり同じ事を言った、なんてミラクルは起こっていないだろうし。

しかし、何とか入学式は無事乗り切れそうだ。明日からは目立たないよう普通にしていよう。"人間として"目立つのはともかく、悪魔に目をつけられては困る。退魔法の類もある程度使えるが、できる限り敵対せず穏便に乗り切りたい。

 

「…どうしてこうなった」

『(…相棒の平素の行動が原因だろうな)』

ホームルームでの出席番号順の自己紹介を無難に終わらせ、クラス委員を決めることになった。勿論、同じ中学出身のものもいるだろうが、顔を合わせたばかりで人となりもわからないのだから、と先生は立候補を募った。だが、一誠と出身中学が同じだった者たちが結託して一誠を推薦したのである。…確かに、中学時代にそういうまとめ役になることは多かったが。

そして何故か特に反対意見は出ず、立候補者もおらず、一誠も断りきれず、で無事クラス委員に就任してしまったのだった。

「…内申とかは別にいらないんだけどなぁ」

そんな小細工をせずとも、一誠は己の実力だけで大学に入学する自信がある。寧ろ、高校に通う事時代、卒業資格を得るため以上の目的意識はない。日本には飛び級や早期入学(イースター)の制度がないので仕方ないと割り切ってのことではあるが。

ぼやきながらも一誠は早速任せられた仕事…掲示物の作成を行っていた。まあ、雑用である。

「…いや、考え方を変えよう。こういうことは余裕のある人間がやるべきだ。だから、色々と余裕のある俺が引き受けるのは間違ってない」

よし、と呟いて一誠は意識を切り替える。そうと決めたらいつまでもぼやいていても仕方ない。一誠に任せて良かったと言われるよう、最高の仕事をしなければ。それが引き受けたものの責任であり、一誠のプライドだ。

何事に対しても真摯に対応する。できないことならきっぱり断る。引き受けたことは途中で投げ出さずに最後までやり遂げる。

一誠は、それを人として正しく当然のことだと思っている。思っているだけでなく実行している。だからこそ周囲の者たちは彼を信用し頼りにしているのだが、その自覚は薄い。一誠という名に相応しい、とても誠実な人間だ、と。

彼自身、それで普通のつもりなのである。

 

 

 

 

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