原作一巻ごろ
「…普通の人間のようだな」
『そうだな』
「…あれが今代の赤龍帝なのか」
ヴァーリはそう言って目を細める。
「…なぁ、アルビオン」
『何だ、ヴァーリ』
「戦うまでもなく、今代の赤龍帝は俺より弱い。だったら、"戦わない"という選択は許されるのだろうか」
『・・・』
「アルビオンがあくまで赤龍帝と戦うというなら、俺はお前の器としてその力を振るおう。だが…争わなくても良いのなら、俺は」
『…お前は争うのが嫌いだからな』
アルビオンは溜息のように返し、言う。
『俺たちが仕掛けずとも、あちらは争いを望むかもしれんぞ』
「その時は潔く戦うだけだ。いつも通りな」
『…まあ、今のところは様子見ということでいいのではないか。赤いのも目覚めていないようだしな』
「…悪魔化したのか」
『ただの人間でいるよりは強くなったのではないか。まあ、お前に及ぶほどではないだろうが』
「悪魔化しただけで俺の17年を埋められても困るがな」
ヴァーリはあらゆる条件、あらゆる制限を想定して己の力を鍛えている。完全な肉弾戦、神器戦、魔術戦、どのような状況でもその時点での己の最高のパフォーマンスを発揮できるように戦術を練り上げている。神器を発現させて以来、ヴァーリは鍛錬を怠ったことはない。
「…だが、挨拶くらいはしておいてもいいか」
「おい、お前」
「ん?…子供はもう家に帰る時間だぞ」
「む…お前も成人していないという意味では子供だろう」
「あー…でも俺はもう高校生だからな。俺に何か用か?坊主」
「坊主じゃない。俺はヴァーリ、白龍皇だ。今代の赤龍帝に会いに来た」
「セキ…?誰だ?」
「お前だ。…まさか、お前自分の神器すら把握していないのか」
「いや、そんな事言われても…」
「…アルビオン、本当にこんなのが俺のライバルで合ってるのか…?」
『目覚めてはいないようだが、確かにこの者から赤いのの気配がする。間違いないだろう』
「随分好き勝手言ってくれるじゃねぇか」
「お前が弱い上に無知なのは事実だろう、赤龍帝」
「弱いって言うなっての。てか、俺の名前はセキなんとかじゃなくて一誠だ。兵藤一誠」
「イッセーか。良い名だな」
「え、お、おう…」
「戦うまでもなく俺の方が強いのはわかりきっているから今のところ戦おうとは言わない。だが…白龍皇と赤龍帝は争う定めにあるらしい。だから、精々強くなってくれ、イッセー。俺が拳を振るうことに躊躇う必要がなくなるくらいにはな」
弱いものいじめは趣味じゃない、とヴァーリは付け加える。
「俺よりお前の方が強いっていうのかよ」
「己の神器を使いこなすどころか把握すらできていないやつに俺が負ける道理はない」
「ぐっ…」
反論できない一誠に、ヴァーリはにっこりと笑ってみせる。
「まあ、今後の成長には期待している。お前は多分、心がけ次第で強くなれる」
「…おう」
「…ん?イッセー、何故シスターと一緒にいるんだ?」
「別にいいだろ、俺が金髪美少女と一緒にいても」
「相手がシスターでなければな。お前一応悪魔だろう」
『…それはお前に言えるセリフではないだろう』
「そうか?」
「シスターとか悪魔とか、関係ない。困ってる女の子を助けるのは当然のことだろ?」
「成程、道理だ」
「…あの、イッセーさんのお知り合い、ですか?」
「ああ。俺はヴァーリ。君は?」
「私はアーシアといいます」
「アーシアか。日本語はあまり堪能ではないようだが、この国には来たばかり、ということか?」
「はい、今日から、この町の教会に移ることになった所なんです」
「それで、迷子になっていたところをイッセーが見つけて案内している、と」
「・・・」
「何でわかったんだ」
「見て聞けば十分わかる。…これも何かの縁だ。俺も一緒に行くぞ、イッセー」
ニィ、とヴァーリが笑うと、一誠は嫌そうな顔をした。
アーシアを協会に送り届け(お茶を一杯ご馳走になった)後、ヴァーリは拠点に戻り電話をかけていた。何回目かのコールで相手が電話に出る。
「アザゼルか?」
『何だ、ヴァーリ。お前が電話をかけてくるなんて珍しいな』
「早急に確認しておきたいことがあってな。…お前、駒王町に堕天使を派遣した覚えはあるか?」
『まさか。そんな悪魔との火種になりそうなことしねぇよ。あの街はグレモリーとシトリーの管轄だぞ。下手したらボン、だ』
「つまり、下っ端の独断、というわけか」
『少なくとも俺は指示してない。…そういやお前、今何処にいるんだ』
「駒王町だ。赤龍帝のことをいくらか知っておきたくてな」
『…ってことは、赤龍帝は駒王町に居たわけか』
「ああ。先日悪魔になったところだ。…下手すると、そちらも堕天使が関わっている」
『マジ?』
「俺はアザゼルに嘘は言わない」
『…そうか。悪いが、そいつらが何か"やらかしそう"だったらお前の判断で
「わかった。ところで、先日教会を追放されたアーシア=アルジェントが堕天使と行動を共にしているようなのだが」
「…ふん。いるのは小物だけか」
「な、何だお前は」
「何だ?一体俺に何を答えて欲しいんだ?名前か?それとも役職か、称号か、種族か」
ニィ、と嗜虐的にヴァーリは笑う。堕天使は思わず一歩後ずさる。彼が存在するだけで随分な威圧感が堕天使を襲っていた。
「教える義理はないが…うむ、だが、お前たち程度なら俺が直接手を出すまでもないか。寧ろ、
「なっ…私がかませだと?!」
「無知で、愚か、弱くて、相手の実力を測ることもできない。何処にも勝てる要素がないじゃないか。なら、精々アイツに経験を積ませる程度の役に立ってくれないとな」
「…ん、イッセーは奥か」
「新手か?!」
「何者…」
「いきるな。俺は君たちと争うつもりはない。後始末をしに来ただけだ」
「後始末…だって?」
ひらひら、と手を振ってみせるヴァーリに木場は警戒心たっぷりの目を向ける。
「下っ端が馬鹿をやってたみたいだからね。最悪、羽は回収してくれと言われている」
くすり、とヴァーリは笑う。
「そもそも、殺す気ならこうして話すまでもなくやっている。相手してやってもいいが…そういう場合でもないだろう?」
「…ふむ。そういう結果になったか」
「っ、まだ残っていたの?!」
「アイツらと一緒にするな。俺は弱いものいじめの趣味はない」
「あ、お前…ヴァーリ?」
「やあ、イッセー。その女性がお前の主か?」
「え、ああ…てか、お前何かちょっと前顔合わせた時より大きくなってないか?」
「知らないのか?イッセー。高い魔力を持つ生物はある程度外見を
「そうなのか…」
「イッセー、知り合いなの?」
「部長にも話したと思うんですけど…ヴァーリはえーと、ハク…「白龍皇だ」そう、それ」
「白龍皇ですって?!」
「挨拶が遅れたな、グレモリー。俺はヴァーリ。今代の白龍皇だ」
「…リアス=グレモリーよ」
「そう警戒するな。言っただろう?弱いものいじめの趣味はない、と。今の君達と戦うつもりはない」
「随分な自信ね。白龍皇を名乗るだけはある、という事かしら」
「俺は子供相手に本気を出す程大人気なくないからな。それに俺は平和主義なんだ。必要のない争いはしたくない」
「…いいわ、信じてあげる。イッセーに既に会っていて、彼が無事なのは、あなたに争う気がないからなのでしょうし。…でも、話は聞かせてもらうわよ」
「あなた、私の配下になる気はない?」
「…本気で言っているのか?リアス=グレモリー。だとしたら俺はお前の神経を疑うぞ。赤龍帝と白龍皇を同時に従えようなどと…無謀にも程がある」
「でも、あなたが戦力として優秀なのはわかるわ」
「…断る。俺には君の配下になっても大して利はないし、必要性もない。それに、君では俺の
「…随分大きく出たわね」
「少なくとも君の残りの空き駒…
やれやれ、とヴァーリは肩をすくめてみせる。
「…まあ、いいわ。私も本気であなたを配下に迎えられるとは思っていなかったし」
「実際、彼をこちらに引き抜けば色々問題になりそうですしね」
「まあ、俺もフリーというわけではないからな」
「やあ、遅かったな、ヴァーリ」
「曹操か。何故お前が此処にいる」
「黒歌から、お前がこの街にいると聞いてな。会いに来たというわけだ」
「ヴァーリたんはあはあ」
「…そうか、ジークの発作か」
「あはは…」
ヴァーリはやれやれ、と溜息をついて普段よりも幼い姿へと変化する。
「久しぶり、ジークお兄ちゃん」
「うん、久しぶりだね、ヴァーリたん!」
「今日は何をして遊ぶの?」
「毎度すまないな、ヴァーリ」
「友人の助けになるのは当然のことだろ?…それに、不本意ながら、ジークが
「いや、お前が悪いわけじゃない…多分」
「そうそう、きっかけはヴァーリかもしれないけど、そもそもジー君に
ジャンヌは机に料理を並べる。
「ありがとう、ジャンヌ」
「っていうか、ジー君そろそろ本格的に矯正した方がいいんじゃない?」
「…まあ、日常生活に支障をきたすようなら…な」
「毎度毎度、そうやってヴァーリに小さくなってもらうってのも心苦しいしな」
「ん?俺はそこまで気にしていないから、俺のことは心配しなくていいぞ」
『お前は気にしろ』
「これは…ヴァーリたんのお墨付きktkr」
「ちょっとは自重してくれ」
後半は外見年齢15歳ぐらい