平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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閑話


赤き龍帝10

 

「一誠君、眼鏡をかけるのをやめたんですね」

「必要なくなってしまったので」

「必要?」

「認識阻害と俺の目は相性が悪いんです。…その認識阻害も、ドライグが此処に悪魔が居ると言ったので使い始めたんですが」

「…悪魔に見つからないためのものだったから、と」

「悪魔になった以上、もう他の悪魔に見つかることを気にする必要性がありませんから」

支取は何とも言えない不機嫌そうな顔をする。一誠は苦笑した。

「いずれは何かしらの道を選ばなければならなかったでしょうし。それに、明確な弱点が増えたのは面倒ですけど、俺は特に神に対する信仰心の類は持っていないので、悪魔になったことに殊更後悔とかはありません」

「あなたは、人間であることに拘りがあったのではないのですか?」

「人の中で生きるのなら、人である方がいいに決まっているじゃないですか」

きょとん、と一誠は僅かに首を傾げた。

「悪魔は寿命が長いそうですから、年の取り方も多少変わってくるでしょうし。父さんも母さんも普通の人なので、俺も普通の人らしく成長して社会に出て、普通の女の子と結ばれて、両親に親孝行して、みたいな人生を送ろうと思っていたんです。…無理みたいですけど」

「…そうですか」

 

悪魔になったので、一誠も契約取りの方もすることになった。アーシアはまず一通りチラシ配りかららしいが。

初参加の今回は、塔城の代理であるらしい。魔法陣にて召喚者のところへ向かう。

「こんばんは、小猫ちゃんの代理で参りました、イッセーです」

「え、小猫ちゃんじゃないの。しかも男?」

「男ですいません」

一誠は苦笑する。

「今日は小猫ちゃんにこれを着てもらいたかったんだけどなあ…」

「コスプレですか?」

男はアニメのポスターを見せながら、そのキャラの素晴らしさと小猫との共通点を語る。

「成程…では、俺にできる限りのことをさせていただきます」

こんこん、と踵を鳴らして一回転すると、一誠の姿が小柄で可愛らしい少女へと変化する。

「とりあえず、こんな感じでしょうか」

「えっ…えっ?」

「私は悪魔であり、魔術師ですから」

にこり、と笑い、一誠は尋ねる。

「さて、此処からどうしましょうか」

 

「悪魔さんにお願いがあるにょ」

「何でしょうか」

「ミルたんに魔法が使えるようにして欲しいんだにょ」

「魔法…ですか。具体的には、どんな魔法が使えればいいんですか?」

「ミルたんは魔法少女になりたいんですにょ」

「魔法少女…では、ちょっと手を見せていただいてもよろしいですか?」

「にょ」

一誠はミルたんの手を調べてふむ、と呟く。

「どうやら、あなたには魔力を生み出す系統の素質はないようですね」

「悪魔さんでもミルたんに魔法を使えるようにさせることはできないんですかにょ?」

「残念ながら、直接、というわけには。…ですが、次善の策として、魔法の杖を作成する、というのはどうでしょうか」

「にょ!」

「あまり大仰な物を作るのもあれなので…とりあえず、飛行と魔力をチャージして発射する魔法でどうでしょうか」

「にょ。それでお願いしますにょ」

 

「…イッセー」

「どうしました?部長」

「あなた、契約者からの評判自体はいいのだけど…」

迷うようにそう言ってリアスははあ、と溜息をつく。

「ちょっとやりすぎよ」

「そうですか?大したことはしてないはずですが」

きょとん、と一誠は首を傾げる。

実際、彼の感覚的には大したことはしていない。魔術を使っても大して消費はしていないし、それどころか魔術を使わずに終わったものもある。彼の"知識"は幅広いジャンルを網羅しているのである。

「変身魔術にマジックアイテムの作成、錬金術、占星術…一体どれだけのことができるの、あなたは」

「まあ、形式に制限を付けなければ大抵のことは」

としか言い様がない。何しろ、一誠は"己が使える魔術"を本人が把握しきれていない(・・・・・・・・・)。この場合、魔術というのは魔力を消費して行う技術全般のことになる。更に他にもやれることはあるだろう。

「そんな無茶苦茶な…」

「でも事実ですから」

 

「久しぶりに鍛え直してもいいのではないか、相棒」

夢の中、邂逅して一番にドライグにそう言われ、一誠は露骨に嫌そうな顔をする。

「…。…そりゃあ、悪魔になったことで限界値は上がっただろうけど…」

悪魔になる前の時点では、彼は己の肉体を既にその限界値まで鍛え上げていた。一誠の躯はどんなに鍛えてもそれ以上の筋肉はつかないし、体力もつかなかった。そういう体質なのだと、言うことしかできない。一般的な人間の、平均値を僅かに上回っている程度でも、それが彼の己の躯を鍛えてやっと届いた領域なのである。

それを維持するためのトレーニングは怠っていないが、それ以上に鍛えるというのはあまり気が進まなかった。

 

 

 

 




正直、普通に人外として生まれた事がある以上、彼は自分が人間である事に対する執着はないんですよね。
どちらかと言えば、執着しているのは自分があの両親の自慢の息子である事なので。
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