平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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二巻開始


赤き龍帝11

 

 

一誠は風呂上がりのストレッチを行っていた。体を柔らかくし、筋肉の維持をするためのものであり、己の躯の動きとイメージとの差異をできる限りなくすためのものである。意識して躯を動かすのであれば、イメージと実際のズレが大きく問題になってくる。熟練度を上げるに越したことはないが、イメージ通りに動ければそれだけ選択肢が広がることになる。

『相変わらず、お前は貧弱だな…』

「しょうがないだろ、俺頭脳労働に振り切れてるんだから」

一誠も多少気にしているが、こればっかりはどうしようもない。魂レベルの事実である。改善しようと思っても今生ではどうしようもない。"兵藤一誠"の一生を無為にすることを覚悟して肉弾戦の修行に一生打ち込めば来世には多少マシになっている、かも?程度のレベルだ。

当然彼にそうするつもりはない。無駄だからだ。そもそも来世があるかどうかわからないし。

「苦手をなくそうとしても器用貧乏になることの方が多いし、尖った性能ならそのまま特化した方がいいんだよ」

一誠はそう言って全身鏡を片付けた。そして自分のベッドに腰掛ける。

「合計の上限値はわからなくても、割り振れる値が限られてるってのはドライグにもわかるだろう?」

『…まあ、言いたいことはわからないではないが』

「――イッセー」

「…部ちょ、?!」

突然転移してきたリアスが全裸になったことに流石の一誠も慌てる。

「イッセー、私を抱きなさい」

「部長を、抱く…?」

突然のことに一誠の思考は追いつかない。

「私の躯、魅力的だとは思わない?」

「・・・」

一誠は無言でタオルケットをリアスにかける。

「イッセー?」

「ご自分を軽んじるようなことを言わないでください。何があったかは知りませんけど、軽い気持ちで男に抱かれようとしたらダメです。それで傷つくのは部長なんですから」

「・・・」

「俺にできることなら幾らでも部長の為に動きますから、自棄にならないでください」

「イッセー…」

「――リアス様、こちらにいらっしゃったのですか」

「グレイフィア…」

 

「…ドライグ、部長は何でこんなことしたんだろう」

『俺に聞かれてもな…』

「貞節を喪うことが目的だったとするなら…結婚関係か?部長も貴族なんだし、婚約者とかいるだろうし」

詳しい家庭事情などは知らないが、実家は大貴族らしいので、同じく貴族の婚約者ぐらいいて然るべきだろう。寧ろ、引く手数多なのではないだろうか。器量も良いのだし。

…悪魔は子供が生まれづらいそうなので丁度いい相手がいない、という可能性もなくはないが。

 

「…あれ、何か部室に知らない人がいる…?」

旧校舎に足を踏み入れた一誠はそう言って足を止めて首を傾げた。

「知らない人?」

「誰かお客さん、ということですか?」

「…いや、でも完全に知らないということもなさそうな…」

「別に、行って確かめればいいと思います」

小猫の言葉に一誠は苦笑する。

「それもそうだね、ごめん」

 

「「グレイフィア様」」

「あ、昨日のお姉さん」

「お知り合い、ですか…?」

「知り合いっていうか…」

「私はグレモリー家のメイドをしています、グレイフィア=ルキフグスと申します」

「リアス部長の兵士(ポーン)になりました、兵藤一誠です」

「あ、アーシア=アルジェント、です」

 

ぱちん、という小さな音が部室に響き渡ると同時に炎と風が消える。

「な?!」

「こんな場所で示威行動をしないでください。校内にはまだ一般生徒も残っています。無為に魔力を誇示してそちらに悪影響が出ては困ります」

「生意気な…俺を誰だと思ってるんだ?」

リアス部長(オレのキング)の知人の自己顕示欲の高い悪魔の方、としかわかりませんね。生憎、悪魔の事情には明るくありませんから」

すっと、一誠は紫の瞳を細める。

しかし、ある程度正体は絞り込める。火と風に関する伝承を持つ悪魔、特に72柱に数えられる悪魔なのではないかという予想は付けられる。ぱっと思いつくところで言うと、フェニックスあたりだろうか。聖獣、不死鳥としてのフェニックスと悪魔としてのフェネクスの二種類がいると何処かで聞いたような気もする。

まあ、いずれにしても一誠が本気になれば倒せない相手ではないが。

「イッセー、下がりなさい」

「差し出がましいことをしました」

リアスの呼びかけに一誠は大人しく従う。その所作は文句の付けられない程洗練された優雅なものである、まるで、よく訓練された猟犬のようだった。

「…それで、一体何の用かしら、ライザー」

 

ライザーとリアスのやり取りを眺め…というか、二人の感情の動きを眺め、一誠は僅かに眉をしかめた。ライザーは口ではリアスを愛していると言っているが、それは"本当に愛している"相手に向ける感情に一誠には見えなかった。

有り体に言えば、軽すぎる。それに、利己的な思惑も見え隠れしていた。

そして、リアスはといえば、好意の欠片も見えず、寧ろ敵視し嫌悪感すら持っているようだった。婚姻にも全く乗り気ではないのだろう。

 

 

「部長が嫌がっています」

一誠はそう言ってライザーの前に立ち塞がる。その左手には籠手が出現しており、起動していることを表す光が灯っている。

「神器持ちか。だが、そんなもので俺が止められると思うのか?」

「できれば、使わないで場を収めたいのですが。俺は、戦うのはあまり得意ではないので」

ライザーはそれを鼻で笑う。

「だったら、怪我をしたくないなら大人しく下がっているんだな。俺はお前らを殺したって構わないんだぜ?」

一誠ははあ、と溜息をつく。

「では、正当防衛を主張させていただきます」

一誠が右手の指を鳴らすとライザーの躯が一瞬で氷に包まれる。一拍遅れてライザーの躯から炎が溢れ出し氷が溶かされようとするが、一誠の籠手から向けられた倍加により打ち消される。ライザーは鋭く一誠を睨みつける。

「申し上げましたよね、"得意ではない"と。相手の反撃を封じて一方的に攻撃するというのは、"戦い"とは呼ばないでしょう?」

「…一誠様、それぐらいで留めておいていただけますか」

一誠はグレイフィアをちらりと見て、また指を鳴らす。氷が一瞬にして砕け散り消える。後ろに下がった一誠の代わりにグレイフィアがライザーとリアスの間に立つ。

「このような状況になった場合の方針として、申し付けられていたことがあります」

 

 

 

 

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