平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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修行パート


赤き龍帝12

 

 

10日間後。それがリアスとライザーのレーティングゲームの予定日である。それまでにグレモリー眷属は修行のための合宿を行うことになった。

正直なところ、一誠は気が進まない。自分の弱点をはっきりわかっているが故に、修行となれば己が鍛えろと言われるであろうこともわかっているからである。

まあ、他メンバーに修行が必要なのは否定しないが。

「俺は体育会系とは対極なんだけどなあ」

『他は皆体育会系のノリのようだがな』

「皆、ってことはないだろ」

アーシアは非戦闘員である。まあ、治療役(ヒーラー)なので当然といえば当然だが。

「…気が進まない」

はあ、と溜息をついた一誠に祐斗が声をかける。

「イッセー君、もうへばっているのかい?」

「そういうわけじゃあないけど…人には向き不向きってものがあるだろう?」

「まあ、それはね…でも、部長だって色々考えてることがあるんだよ」

 

創造理念(どのようないとで)基本骨子(なにをめざし)構成材質(なにをつかい)製作技術(なにをみがき)成長経験(なにをおもい)蓄積年月(なにをかさねたか)。この六つを再現(トレース)することで、真に迫る贋作(フェイク)を作り出すことができるのだと、俺の知る"君に似た能力の使い手"の男は言っていた」

一誠は祐斗をまっすぐに見つめる。

「今の君の魔剣は、形だけ真似たハリボテだ。だから脆い」

黒い、奇妙な剣を突きつけたまま一誠は言う。その剣は、彼が魔術により作り出したものだ。彼はその剣で祐斗の魔剣を打ち砕いた。

「…その剣も?」

「俺には最後の二つは再現しきれない。だから使いこなせない」

アイツは、担い手の力量まで再現(トレース)させてみせたからな、と付け加え、一誠は肩をすくめて一歩下がる。祐斗は立ち上がって埃を払った。

「なら、六つ全てを僕が再現できれば君を越えられる、ということだね」

「そうなるな」

 

「…イッセー先輩、何か格闘技でもやっているんですか?」

「ああ。八極拳を、型だけは覚えてる。修得したとはお世辞にも言えないけどね」

しかも、人体破壊に特化した殺人拳とでも言うべき代物に成り果てているものの方が幾らか身についているといえるのだから性質が悪い。精神修養など、殆どできていない。

「私にも教えてください」

「俺は人に教えられる程の技量はないよ」

「それでも…私は、強くなりたいんです」

「…本当に?」

「私が、嘘をついているって言うんですか」

「俺には、君が成長し、強くなることを恐れているように見える」

「、…それは」

「俺は小猫ちゃんの事情を知らないから、はっきりした事は言えないけど…君が望むなら俺はちゃんと手を貸すから。仲間だしね」

にっこり、と一誠は笑う。小猫は戸惑いと不安の入り混じったような視線を一誠に向けた。

「…少しだけ、話を聞いてくれますか?」

「ああ。話したいところだけ話してくれて構わない」

「…確かに、私は強くなるのは少し怖いです。強くなって、力に溺れて、暴走するかもしれないって、そう思うんです」

「それは、全く根拠のないことってわけじゃないんだね」

「…はい」

「無責任に聞こえるかもしれないけど、俺の意見を言ってもいいかな」

「…はい」

「もし、小猫ちゃんが力に溺れて暴走しても、俺が絶対君を止めて正気に戻すから大丈夫だ。俺だけじゃなくて、部長たちもそうすると思う」

一誠は小猫の頭を優しく撫でる。

「それに、そうやって恐れることができる小猫ちゃんならそうはならないよ」

 

 

「部長、まだ起きてたんですか?」

「イッセー。…作戦を考えていたのよ」

「作戦、ですか」

「ええ。…悔しいけど、ライザーは私より強いわ。何の策もなく挑んでも返り討ちにされるでしょうね」

「…まあ、相手は経験者でこっちは全くの初心者ですしね」

多少はこちらにハンデを積んでくれるかもしれないが、そんなものあろうがなかろうが活かせなければ同じである。それに、あちらはフルメンバー(16にん)、こちらは戦力と数えられないアーシアを加えても6人である。戦力差は単純に考えて倍以上だ。個々の力量が低くても数の暴力という事もある。

「あちらがよく使う戦法などはわかっているんですか?」

「サクリファイスと、キング(フェニックス)の不死に頼った力押しが多いそうよ」

 

「…あれ、小猫ちゃん、何か…変わった?」

「そう、かもしれません。…先輩のおかげです」

「俺で役に立てたのなら嬉しいよ。…でも、無理はしないようにね。一人で頑張る必要はないんだから」

「…じゃあ先輩も、一人で頑張ろうとしないでくださいね」

「…あっは」

一誠は苦笑する。

 

実のところ、一誠は極簡単な魔術ならば"意識を向けるだけ"で発動できる。

視線を向ける、指を示す、対象に手をかざす、触れる、そんな些細な動きで魔術を行使できる。普段指を鳴らすのはミスリードを誘うために過ぎない。

或いは、相手を必要以上に警戒させないため、と言ってもいい。予備動作らしい予備動作もなく魔術が行使できるというのは、それだけで脅威足り得る。

レーティングゲームでは、ある程度自分で能力を縛って参加するつもりでいる。"観客"にあまり手の内を明かしたくないのだ。とりあえず、神器は使わないつもりでいるし、魔術の行使ももう少し隙の多い方式を使うだろう。

舐めプとは少し違う。どちらかといえば、自己防衛だ。おそらく、ライザーを倒せるのは自分くらいなので、そこ以外で目立ちたくないのである。ゲームの注目度がどの程度のものかはわからないが、貴族の醜聞、ゴシップというものは耳目を集めやすい。気をつけておくに越したことはないだろう。

 

「…しかし、不死、か。厄介な相手であるのは確かだよな」

精神世界の中で一誠は胡座をかいていた。

「フェニックスの不死の対策は大きく分けて二つだ。再生できないレベルの攻撃をぶつけるか、精神を折るか」

ドライグはそう言って鼻息を大きく吹き出す。

「相棒ならどちらも可能だろう」

「できないとは言わないけど、可能なことと実行できることは別だからね。例えば、威力重視で攻撃をしたとして、部長が巻き込まれてアウトになったりしたら意味がないし」

「"(キング)"を守りながら相手のキングを討つ、か。地味に面倒だな」

「否定はしないけど」

一誠もドライグも、そういう戦い方の経験はあまりない。

ドライグは宿敵以外にあまり興味がなかったため。

一誠はそもそも守らなければならない相手を戦いに巻き込むことそのものを下策と見ているため。それに、守られる側になることはあっても守る側になることは少なかったからである。"彼"は魔術師(メイガス)としては強いが、戦士としては弱いと言っても間違いではない。完全な後衛タイプなのだ。

「やっぱり、精神を折る方がいいかな。やり過ぎて"本当に"殺しちゃったらいけないし」

「俺はそれもありだと思うが?」

「後々面倒なことになるじゃん、絶対」

それに積極的に殺したいと思うほどの興味もないし、と一誠は付け加える。

眷属たちから慕われているという点において、好感すらある。双方合意の上でという前提において、一誠はハーレム肯定派である。

「俺はあの男は嫌いだ」

「そりゃアイツ神滅具(ロンギヌス)とドラゴンを馬鹿にするようなことも言ってたけど」

「あの男にはドラゴンの恐ろしさを存分に味合わせてやらなければならん」

「俺、ゲームで神器(ドラゴン)の力を使わないつもりなんだけど」

「なんだと…?」

「だって俺が赤龍帝だって広まったら面倒なことになりそうだし」

「・・・」

ジト目になったドライグに一誠は肩をすくめてみせる。

「仲間と白龍皇以外の者に俺が赤龍帝だと知らせる必要はない」

白龍皇は知らせなくてもわかるだろうし、と付け加える。

「…それはそうかもしれないが」

 

「…女の子は成長が早いって言うけど…」

『…いや、アレはそういうレベルの話じゃないだろう』

一誠とドライグが話しているのは小猫のことである。彼女は何か(・・)を吹っ切って精神に大きく変化をしてから、急激に成長したのである。…肉体面が。具体的に言うと、身長が10cm以上伸びてアーシアと背があまり変わらなくなった。

成長痛とかないんだろうか、と一誠は密かに心配している。その成長自体は、どうやら今まで無意識に止めてしまっていたものがそれがなくなってあるべき姿になろうとした結果、であるようだが。

 

 

 

 

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