部長が一誠の家で部活(の打ち合わせ的なもの)をすると言い出したので、オカ研メンバーが部屋に集まっている次第である。
ちなみに母は一誠が可愛い女の子連れてきて嬉しいわー、みたいなノリである。先輩も後輩も同輩も所謂"彼女"ではないのだが。
飲み物を取ってきた一誠は僅かに呆れた顔をする。
「部長、ベッドの下にエロ本はないので家探ししないでください」
一誠のベッドの下は真っ当な収納スペースである。他季(今なら冬物秋物)の衣類がしまわれている。ちなみに、強いて言うならR18に引っかかるかもしれない本はスライド二重構造(容量とスペースの問題)になっている本棚の後ろ側上二段程に入っている薄い本(ケモノロリショタ獣八禁)くらいである。サクッと認識阻害で気を散らしているので目に止まることはないだろうが。
「あら?この本棚二重構造になってるのね」
「…朱乃先輩、出したものはちゃんと元に戻してくださいよ」
「イッセー君って意外と読書家だよね…」
「別に何ら隠してないが」
寧ろオカ研に加わる前には図書館と図書室に入り浸り、書店と古書店を梯子していた。最近はどっと頻度が減っているが。
アーシアは苦笑のような笑みを浮かべ、小猫は我関せずとお菓子を食べている。
「…イッセーの性癖が全く読めないわ」
寧ろ主体性を持って行う性行為に興味がない異常、所有する本で判断されても困る。有り体に言えば、三次元に性的な興味がないのである。二次元で理想のフェチズムに会ったことはあるが、現実では(少なくとも今生は)出会った覚えがない。まあ口にはしないが。
「確かに、態々二重になってるのにエッチな本もありませんわね」
「イッセー位の男の子は普通エッチなことに興味津々なはずなのに…」
残念ながら一誠は色んな意味で一般から外れている。両親はいたって普通なのだが。
「――イッセー、アーシアちゃん、お友達さんたちも、ちょっといいかしら」
「…母さん?」
母親の手にした本のようなものに一誠は僅かに表情を歪める。
「こんにちは、イッセーのお母様。私、イッセーの先輩のリアス=グレモリーです」
他メンバーも次々と自己紹介をする。母さんはホクホク笑顔で手にしていたもの…フォトアルバムをテーブルの上に広げる。
「ふふ。イッセーがお友達を沢山連れてきてくれて嬉しいわ。私、イッセーがお友達を連れてきたらしてみたいことがあったのよ」
「母さん、それはまさか俺的黒歴史にあたる幼少期のアルバムじゃないよね?」
「昔から可愛い息子の話がしたかったのよねー」
「それならせめて物心着いてからのものにして欲しいかな、なんて」
「是非聞かせて頂けるかしら、お母様」
「昔から可愛い、ですか…」
「先輩の黒歴史、気になります」
「黒歴史…?」
「っていうか、何で黒歴史なの?」
「…事あるごとに周りの人間に何でこんな簡単なこともわからないんだろう、と思いながら助け舟出して、何言われてもニコニコ笑って可愛子ぶっとけばどうにかなると思ってたこまっしゃくれた子供だったからだよ。内面と外面が乖離しすぎてて痛々しい」
「…へー」
「黒歴史と言いつつ詳しく解説してくれるあたり先輩言うほど気にしてませんね」
「寧ろアレは俺であって俺でない別の俺だと思いたいのが本音でさ…いや、アレも俺なんだけど」
一誠がそんな事を言っている間に母と先輩はアルバムの閲覧を始めていた。可愛い可愛いと連呼され一誠は居心地が悪そうな顔をする。
確かに、その写真はいっそ不自然なほどに笑顔のものばかりしかない。アルバムが一定の方向で選び出された写真を集めたものだとしても、だ。
しかし、あるところでそれが変わり始める。画一的な笑顔ばかりではなく、怒り、泣き、笑い、時には得意げに胸を張り、恥ずかしそうにしたいたり、不思議そうにしていたり、困ったり、悪戯っぽく笑ったり、感情豊かな姿を見せ始める。
「…何かすごく急激にガラッと変わったみたいだけど」
「自分もわかっていなかったんだと、察したことをきっかけにまあ…世界を楽しむってことを学んだんだな」
「世界を楽しむ、ね…」
とある写真で祐斗が大きく反応を示す。
「…ああ、これは幼馴染と一緒に撮ったやつだな。そいつ、教会の人間だったんだけど…何かそいつの父親の商売道具勝手に引っ張り出してきて、流石にアレは怒ったなあ」
一誠はしみじみと呟く。祐斗の視線は写真に写っている一振りの剣に向いている。
「エクスカリバーとか言ってたけど、なまくらだったし、多分ホラだろうな。んなメジャーな聖剣がほいほいあったらおかしいだろうし」
というか、エクスカリバーってアーサー王の死後、
「…エクスカリバー、か」
「…祐斗?」