一誠は球技大会で部活枠の方でドッジボールに参加することになっていた。なのだが。
「なんか対戦相手が
「…野球なら敬遠、ってところですね」
「何を遠慮してるんだろうなあ…」
一誠はちらりと祐斗を見る。対戦相手もアレだが、あちらはあちらで心此処にあらず、といった風情である。何かしら一人で悩んでいる(というと少し違うかもしれないが)ようなので、その内ちょっかいを出すべきかもしれない、とは思っているのだが、どうもきっかけが掴めないでいた。というか、日常に影響を及ぼすレベルって普通に拙いと思う。
一誠自身はあまり自覚がないが、一誠は結構モテる。
それは、実は中学時代からそうなのだが、グレモリー眷属になってから…
顔立ち自体は端整だが中の上程度で目立つイケメンではないが、人当たりが良く近づきやすく、所謂庶民派なところがいいらしい。その上で困っているところに颯爽と現れて手助けしていったりするので、学園の
一誠が男子から嫉妬されないのは、困っているところを助けるのは女子に限らないから…まあ、勉強を見てもらって赤点を免れている者も多いからである。そして単純にその並外れたお人好し具合に毒気を抜かれてしまうからである。
まあ、そんなわけでリアス率いるオカ研は構成メンバーが美少女とモテ男なので男子連中からは手出し辛い対戦相手なのだった。
一誠からすればゲームにんな事情持ち込むなよ、という感じだが。ちなみに一誠は相手が誰だろうと(怪我させない範囲で)容赦しない。僅かなりとも竜らしいところもあるのか、負けず嫌いなのである。
一誠は祐斗を追うか一瞬迷い、リアスに尋ねる。
「部長、あいつ、一体何に対して思いつめてるんですか?」
「…これは、あの子の過去に関わることなんだけど…」
少しの逡巡の後、リアスは一誠に祐斗の過去について話した。彼が教会の"人造聖剣使い"を作るための被験者だったこと。失敗作として処分されかけ、彼一人が逃げ延び、リアスが悪魔に転生させることで生きながらえたこと。
「…だから、あの子はエクスカリバーに強く思い入れがあるみたいなの」
「そうなんですか…」
大まかな事情を飲み込んだ一誠は、彼が拘っているのは寧ろ、喪われた命だろうと思う。"自分だけ生き残ってしまったから"、生き残った自分は死んだ仲間のためにすべきことがあるのではないか、自分の他に生き残るべきだったものがいるのではないか、と。
極普通の人生を送ってきた一誠が諭すようなことを言っても響かないだろう。説得力がないからだ。何も知らないやつが、簡単に言うな、と思われるだろう。
一誠自身そうやって無理矢理意思を変えさせるのは好みではない。それに、そうやって迷うこと自体は悪いことではないと思う。大切なのは自分で決めることと、後悔しないことだ。仲間としては彼に己の命を粗末にはしないで欲しいところだが。
少し考え、一誠は言う。
「俺、祐斗のこと追いかけてきます」
「祐斗!」
「…イッセー君」
「リアス部長から、君の過去について聞いた。…君の苦しみも、思いも、君のものだ。だから、わかるとは言わない。君とはまだ付き合いが浅いし、分からないことの方が多いと思う。だけど」
一誠は真剣な顔で祐斗を見る。
「俺は祐斗の仲間だから、俺に出来る事があったら頼ってほしい」
「イッセー君…」
祐斗は一誠を少し見つめ返した後、首を振る。
「ありがとう。でもこれは僕の問題だから」
「君の手で決着をつけなきゃいけないことがあるってのはわかる。だけど、それで君が一人になるのは違うだろう。一人で死のうとしたら、ただじゃおかないぞ」
「死のうとなんて…」
言葉を濁した祐斗を
「今の君は、自分の価値を低く見ている者の目をしている。目的さえ果たせば死んでもいいと思っている」
「・・・」
「君にとって大事なことなら俺は止めない。でも、命を粗末にするのは見逃せない。君は、俺たちにとって必要な存在だ。君がいなくなると寂しい。後、君がいないと前衛が小猫ちゃん一人になってしまう。とても宜しくない」
「…イッセー君、何というか…恥ずかしいんだけど」
「何か変なことを言ったか?」
「変なことっていうか…よく照れずにそんなこと言えるよね」
「別に何も恥じることのない素直な気持ちを言っただけだぞ。何で照れる必要があるんだ」
「…はは。イッセー君には敵わないな…」