「久しぶり、イッセー君」
「…イリナ?」
「ええ、そうよ」
「久しぶり、イリナ。すっかり可愛い女の子になったな。見違えたよ」
にっこり、と一誠は笑みを浮かべる。それに対してイリナは僅かに頬を染め、ふん、と胸を張る。
「当然よ。こんな美少女が幼馴染だって幸運に感謝するのね」
「イリナは相変わらずだなあ」
「イッセー君も相変わら、ず…」
途中で言葉を止めたイリナに一誠は首を傾げる。
「嘘…何で…?」
「どうした?イリナ」
「何で、マイエンジェル・イッセー君が悪魔になってるの?!」
「え?うーん…話の流れ、的な?」
「信じられない…イッセー君は主が地上に遣わしたもうた天使なんだって、そう思ってたのに…」
「いや、俺昔から信仰心とか欠片もないし…っていうか、何それ。聞き流そうかと思ってたけど、イリナ的に俺って天使だったの?」
「も、勿論比喩としての話よ。イッセー君は私の幼馴染だし」
「ふぅん。…まあ、安心してよ。俺も肉体的には悪魔になって多少丈夫になったけど、魂も、精神も、何も変わってないから。ある意味都合良いっちゃ良いし」
「都合良い、って…」
「だって、悪魔は対価と引換えに人の願いを叶えるんだ。それって、俺のしたい事と被ってるだろ?」
一誠の望み、困っている人を助けること。困っている相手を見れば手を差し伸べる。それが彼の美徳だ。
「悪魔は対価がなきゃ動かないわ」
「うん。でもね、イリナ。対価無しに動く者より、対価を払えば動く者の方が他人は信用できるんだよ。…それに、神様は信者しか助けないしね」
そして、より正確に言うなら、信者だって見捨てる時は見捨てるのだ。…アーシアに対してそうだったように。
「…残念ね、イッセー君」
イリナから敵意を読み取り、一誠は僅かに眉をしかめる。
「私はエクソシストであり聖剣の担い手。…
「イリナに俺が殺せるのか?」
「…殺すわ」
イリナが突き出した剣…腕に巻きつけてあった紐から変化した聖剣…を、一誠は軽く受け止める。
「イリナじゃ人間だった頃の俺も殺せないよ。精神じゃなくて、純粋に実力的にね?君じゃ力不足だ」
「なっ…」
イリナは聖剣をその能力で変化させようとするが、全く反応しない。
「何で?どうなってるの?」
『…
「エクスカリバー?こんなショボい聖剣が?」
『
「ふぅん…何か、盛り下がる話だな」
一誠は"前回"、完全なエクスカリバーを目にしている。その鮮烈さ、美しさ、力強さを思えば、目の前にあるそれは比べるのも烏滸がましい、出来損ないのなまくらだった。…まあ、別物と言えば別物なのだが。
「イリナ、俺はお前を殺したくない。引いてくれないか?」
「…そうね。確かに私はあなたを殺すことはできないわ」
イリナが引く意思を見せ、一誠は手を離す。聖剣は再び紐の形に変化する。
「でも、これで私とイッセー君は敵同士ね」
「俺はイリナを敵とは思いたくないんだけど…まあ、イリナは教会の人間だから仕方ないか」
肩をすくめ、一誠は困ったような微笑を浮かべた。
「道を違えても、俺は君が健やかであることを祈るよ、イリナ」
「っ………バイバイ、イッセー君」
『…しかし、この街にエクスカリバーを持ち込んだということは、また近い内に会うことになるのではないか?グレモリーとシトリーがこの街を管理しているのだろう』
「…まあ、確かに、それはそうなんだよな。…昨日の今日で顔を合わせることになったら気まずいだろうなあ」
『そういうのはフラグと言うんじゃないのか。…ところで、相棒はエクスカリバーに何か思い入れがあるのか?』
「え?うーん…まあ、なくはない、かな。俺の知る
『目にしたことがある、ということか』
「ああ。俺の主観的に言うと…大体、
『直近前世、ということか。ならば強く印象に残っていてもおかしくないな』
「あの時は様々な宝具を見ることになったが、武具というカテゴリで言えば文句なしの超一級の品だった。並ぶものを上げるとするなら、
『…お前は前世も相当濃い人生を送っていたのだな』
「まあ、中二病乙って言われないで済む人生になったことは覚えている限りないからね。今回も十分"中二病乙"、だし」
『中二病、か』
「神器とか悪魔とか転生とか、一般から見たら中二病だよ。漢字とか使った和名にカタカナのルビが振られたりすると倍率ドン」
『・・・』
心当たりがありすぎる。