オカ研の部室の空気は随分悪くなっていた。理由は簡単だ。客人の態度が悪かったからである。客人とは教会のエクソシスト。イリナとゼノヴィアという少女である。駒王町には盗まれた三本のエクスカリバーを回収するために来たそうで、それぞれ
つまり、現在この街には五本のエクスカリバーがあるということになる。
「…それで、あなたたちはこちら側に協力を要請しに来たということかしら」
「いや。私たちはそちら側に手出しをしないように言いに来た」
曰く、悪魔が堕天使と組んでいるんじゃないか、という疑いも持っているらしい。
「…あんなナマクラ、象徴として以外に役に立つのか?」
一誠はこっそりと小猫に尋ねる。
「…イッセー先輩が何を以てナマクラ扱いしてるか知りませんが、エクスカリバーは高位の聖剣です。更に格上のものもあるそうですけど…聖剣は悪魔の天敵ですよ?」
「ふぅん…」
ぶっちゃけ、一誠はエクスカリバーを折るのは容易なことだと思っている。拘る必要性も、脅威も感じない。一度折れたものだからある意味当然かもしれないが。
「…訂正しろ」
「む?何だ、お前は」
「アーシアはただ怪我人を放っておけなかっただけだし、自ら悪魔になることを望んだわけじゃない。彼女を悪魔にしたのは俺だ。…そもそも、勝手に聖女に祭り上げておいて都合が悪くなったら魔女扱いってのは勝手すぎる。その上で今度は引導を渡す、だ?巫山戯るな。お前、人の命を何だと思っているんだ」
「その魔女は既に悪魔の身なんだろう?だったらエクソシストである私が殺すことに何の疑問があるんだ。…それより、お前は悪魔…なんだよな?何やら、聖なる力の気配もあるが」
「聖なる力?何の話だ。俺は悪魔だよ」
一誠の背から悪魔の翼が飛び出す。
「…妙なこともあるものだ。悪魔でなければエクソシストに勧誘していたのだがな」
「信者しか救わない神の尖兵なんてゴメンだね」
「イッセーさん、私はそこまで気にしていませんから…」
「アーシアが彼女に対して腹を立てたりしていないことはわかってる。俺がムカついたから俺が怒ってるだけだ」
アーシアの頭をぽん、と撫で、一誠はゼノヴィアを睨む。
「それに、敵の親玉はよく知らないが大物の堕天使なんだろう?彼女たちじゃ返り討ちに遭って自分たちが持ってる剣まで獲られるのがオチだと思うがな」
「…聞き捨てならないな。確かに私たちではコカビエルには敵わないかもしれないが、お前に見下されるいわれはない」
「見下す?俺は見たままを分析して判断しただけだ。総合的に見ても格上相手に善戦できそうな要素が見当たらない。"堕天使に聖剣は弱点にならない"んだろう?」
「・・・」
「死兵になったところで、ひっくり返される差もたかが知れている。…俺は他者の命を軽んじるやつは嫌いだが、自分の命を軽んじるやつにも腹が立つ。教会は人はとかく疾く死ぬべしとでも教えているのか?」
そして売り言葉に買い言葉で一誠とゼノヴィアが戦うはずが、何故かイリナと一誠、ゼノヴィアと祐斗が戦うことになっていた。解せぬ。
「今度は、前みたいには行かないんだからね」
「そうだな。アーシアがいるから怪我を気にする必要はないし」
「えっ…」
「殺す気で掛かってくる癖に自分は反撃されないとでも?随分お目出度いな。俺は敵には容赦しないぞ」
相手が誰であっても、と言外に含ませ、一誠は八極拳の構えを取る。イリナは僅かに狼狽えたが自分の聖剣を構える。
勝負は一発でついた。…ついてしまった。
「エクスカリバーが?!」
「…えー…流石に脆すぎないか?俺は折ろうとした覚えはないぞ」
エクスカリバーは真っ二つに折れてしまっていた。それも、一誠の手刀を一発受けただけで。一誠が意図したのは刃を弾くことだけだったのだが。
「ど…どうしよう。まだ戦ってもないのに」
「…悪い」
一誠は僅かに困った顔をする。
「ええと…とりあえず。これでどうにかならないか?」
一誠は魔力で一振りの聖剣を作り出す。
「うう…イッセー君マジエンジェル!!」
「いや、俺は悪魔だから」
一誠は折れた刃を手に取る。それは彼の手の中で聖なるナイフへと姿を変えた。
『…成程な。大体読めた』
「何がだ?ドライグ」
『多分、他のエクスカリバーもお前と相対したら
「自壊?」
『エクスカリバーの本来の持ち主は誰だ?そして、俺は誰だ?』
「え?…あー…ああ、成程…可能性としてはなくもない、か。…先輩たちの中にはいなかったような気がするけど」
『神器を一度たりとも覚醒させなかった者はあそこにはいないからな…そういうことだろう』
ナイフを籠手に収納し、一誠はゼノヴィアと祐斗を見る。
そんな気はしていたが、祐斗は随分頭に血が昇っているようだった。スピード・テクニックタイプの彼が力押しというのは、悪手である。特に、ゼノヴィアはどうやらパワータイプであるようだから、尚更だ。…悪魔の膂力に人間が競り勝つというのも少々不思議な話だが。
少し考え、一誠は祐斗たちに向けて呼びかける。
「悪い祐斗!イリナの持ってたエクスカリバー折っちまった!」
「「は?!」」
二人は思わず動きを止め、一誠を見る。苦笑を浮かべる一誠と、折れた聖剣と、新しい聖剣を持ったイリナを見て、ゼノヴィアが言う。
「馬鹿な、こんな短時間でエクスカリバーが折られただと…?というか、そっちの聖剣は一体…?」
「俺も折るつもりなかったし、武器がなくなると困るだろ?だから代わりになるかわからないけど、作ってみたんだけど…」
「お前、
「いや、違うけど」
「…イッセー君」
色々な感情がごちゃごちゃになっている祐斗に、一誠は困ったように笑う。
「ごめん」
「…なんだか、気が抜けちゃったよ」
余りにもあっさり過ぎて、どう反応すべきかわからなきなった。所謂、もうどうにでもなれ、という状態である。一誠の常識外れっぷりは祐斗も知っているのだが。
「…これは」
刺殺されている神父を見つけ、一誠は眉をしかめる。そして、聖句を唱えた。十字を切ったところで、背後に少年が立つ。
「おんやぁ?こりゃあ珍しいところで会うじゃん?」
「君は確か…フリード、だったか」
フリードは聖剣を手にしていた。振り返った一誠は目を細める。
「神父でも仲間ではない、ということか」
「まあ、これも仕事ってやつ?でもって、目撃者は殺さなきゃいけなかったりするわけだ」
「俺もそう簡単に殺されるわけにはいかないけどな」
一誠は籠手を出現させる。
「…ん?お前、何時の間にか悪魔になったわけ?…あれぇ?でも今さっき
「そりゃあ、肉体が変化したくらいじゃ俺の本質が変わるわけじゃないからな。…そういやあ君、エクスカリバー持ってるみたいだけど、今回はえーと、コカビエル?の配下ってことでいいのか?」
「聞かれて素直に答えるとでも?まあ、その通りなんだけどな!」
「へぇ。…フリード君、フリード君、これなーんだ?」
一誠は左手に出現させたナイフをゆっくりと振って見せる。
「あ?…!その気配…まさか、エクスカリバーか?何で教会の人間じゃねぇお前が持ってんだよ」
「うーん…まあ、ちょっと気になることがあってさ。ちょっくら、エクスカリバー賭けて戦ってみないか?」
「んなっ…?!」
「んー…相棒の推測は正しかった、ってことか。いくらオリジナルに比べりゃナマクラだって言っても、脆すぎるもんな」
折れた
「一体どうなってんだよ、どんな手品を使いやがったんだ?!」
「手品っていうか…まあ、エクスカリバーも一つに戻りたがってるんじゃね?多分」
「あ゙?」
「君の雇い主の相方…バルパーだっけ?その人、
「!」
「ああ、やっぱり。丁度良いからこれは君に預けておくよ」
「…何のつもりだ?」
「俺、剣は専門外なんだよね。詳しい人に任せた方がいいかな、って」
一誠は邪気のない笑みを浮かべる。フリードは毒気が抜かれたような顔をした。
「まあ、コカビエルがこの街でやろうとしていること自体は止めるつもりだけど、頑張れよ」
「…いや、いやいやいや、お前頭おかしいわけ?もしくはヴァカ?」
「いや?俺は合理主義者なだけだ。バルパーがどういう方式で統合しようとしてるか知らないが、時間がかかるんだろう。君がこうやって神父狩りをしてるのだって、時間稼ぎだろ?教会がエクソシストにエクスカリバーを持たせて寄越したらそれを奪うためってのもあるだろうけど」
「・・・」
「中途半端に阻もうとすれば行動を読めなくなるだろうから、途中まではそちらの思う通り動かせてやろうかと思って」
「…そりゃあお優しすぎて涙が出るね」
「ちなみに相手が自分に絶対の自信を持ってるタイプだと、俺が言ったこと伝えても百年も生きてない小僧に何ができる、って鼻で笑って気にしない確率が78%」
「…まあ、旦那は何もしないだろうけど」
この世界線ではそういう設定
ちなみにこいつとある世界では