平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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聖剣折ってから二日後


赤き龍帝20

 

「…お前ら何やってるんだ?」

「イ、イッセー君?!」

「物乞い?日本にそういう文化はないんだから、やめた方がいいと思うぞ」

「え、いや、その…これには色々と、深い理由があってね?」

「教会に清貧の教えがあるといっても、最低限の活動資金とか給料とかあるんじゃないか?エクソシストは体が資本だろ?」

「…うぅ」

「これを買ったら手持ちの金が尽きてしまったんだ」

「…馬鹿なの?」

「ぐっ」

「…ねぇ、イッセー君、図々しいお願いなのはわかってるけど、お金を貸してくれない?昨日から私たち何も食べてないの…」

「イリナ、後々返すから貸し借りなんだよ。わかってる?」

「わ、わかってるわよ」

「…まあ、一食ぐらいなら奢るよ。ファミレスでいいか?」

 

「…よく食べるなあ」

「うっ…しょうがないじゃない、お腹空いてたんだもの」

「別に悪いとは言ってないだろ。ご飯を美味しく食べられるのはいいことだ」

少々量が多すぎるが。

「あ、イッセーさん、見つけました!」

「…大食いチャレンジでもしていたんですか」

「相変わらずすぐ女子に囲まれるな、お前…」

「それで、用事って?」

「イリナ、ゼノヴィア、ギブアンドテイク、って言葉は知ってるよな?」

にっこりと天使のような笑みを浮かべた一誠は、確かに悪魔だったのだと後に二人は語る。

 

「それにしても、一人二人来てくれたらいいな、と思っていたら全員来てくれるとは」

「そりゃあ、聖剣使いの二人と一緒にいると言われたらね…」

「イッセーさんに呼ばれることってあんまりありませんし」

「…手が空いていましたから」

「態々主が違う俺に声をかけてくるなんて何事かと思ってさ」

「まあ、匙に声をかけたのは、一応そっち側にも情報を流した方がいいかと思ってさ」

一誠はその場の面々を見回し、尋ねる。

「昨日一日使って街中調査した結果と、それを踏まえての俺の仮説なんだけど、聞いてくれるか?」

肯定の返事を得て、一誠は話し始める。

「今回の件で一つ、疑問に思わざるを得ないことがあった。"何故コカビエルはこの街を潜伏場所に選んだのか"、だ。ただ、聖剣を集めたいだけなら、他に適した土地があるはずだ。悪魔の管理する土地じゃなくて、堕天使の管理する土地にな?であれば、何かしらこの街でなければならない理由があるはずだ」

「この街でリアス部長と支取会長が管理者になっていることは、オカルトサイドではそれなりに知られてるんだよな。二人が現魔王の妹だってことも」

「…まさか」

「そう、コカビエルは二人に危害を加えるつもりである、と考えるのが自然だ。当然そうなれば堕天使と悪魔は戦争状態になるだろうし、それに聖剣(エクスカリバー)が関わったとなれば天界も無関係ではいられないだろう。天使と堕天使が手を組んで悪魔を潰しに来た、ってね」

「つまり、コカビエルの最終的な目標は、三勢力三つ巴の戦争を起こすこと、ということになる。コカビエル単独か、堕天使の総意かはわからないけどね?」

「…そう考えたのなら、何故部長たちに進言しないんだい?」

「じゃあ逆に聞くが、話した時二人はどう反応すると思う?」

「…部長は、打って出るだろうな」

「会長は…相手がコカビエルだから、魔王様に救援を要請する…んじゃないか?」

「使い魔を通してだから正確なところはわからないが、見た感じ多分部長じゃコカビエルには歯が立たない。また、コカビエルを撃退できるレベルの悪魔はゴロゴロいるってことはないだろうから、要請してすぐ駆けつけてくれる、というわけにはいかないだろう。その場合、相手に察知されて計画を早められる危険が有る」

「それじゃあ、イッセー先輩はどうするべきだと考えているんです?」

「バルパー=ガリレイは聖剣を合成して一振りの剣にしようとしている。それが完成し切る前に急襲をかける。少なくとも、相手の準備が整い切るより前に仕掛けなければ勝率はないと考えるべきだろう」

フリードも加わってるみたいだし、と一誠は付け加える。

「フリードって、フリード=セルゼン?」

「ああ」

誰それ、という顔をしている匙に一誠が補足を付け加える。

「破戒僧の神父verみたいなエクソシスト。エクスカリバー持ってる」

「彼は聖剣使いではなかったはずだが…」

「バルパーが何かしたんじゃないか?人造聖剣使いとやらを研究してたそうだし…聖剣があってもそれを使えるやつがいなきゃ意味がないからな」

一誠は取り出したタブレットに地図を表示させる。幾つかのアイコンとポインタが追加される。

「俺たちの現在地が此処。で、バルパーが潜伏してると思われるのがこのあたりで、聖剣持ってウロウロしてるフリードが最後に監視網に引っかかったのがこの辺」

 

 

「フリードの現在地はわからないんですか?」

「今回使ってる使い魔は見つからないことを優先してるからなぁ…動きを制限してないから、監視網と言っても穴は多い」

一所に留まるような指示はしていないし、追跡するようにも言っていない。その代わり、ネットワークを形成している使い魔は鳥・獣合わせて100を越える。位置情報と資格情報を特定条件を満たす時のみ送らせる仕様で、分割思考三チャンネルとタブレットを外付けメモリとして使用している。ぶっちゃけ色々めんどい。

「でもまあ、その気になれば簡単にエンカウントできるんじゃないかって気はしてる」

「根拠は?」

「俺が迷い人ホイホイだから」

「…は?」

「何かしら迷いがある人を見つけるのって俺の特技みたいなもんなんだよね」

小猫が呆れたような顔をすると、一誠は小さく肩をすくめた。

 

「あ」

「げっ」

「フリード=セルゼン!」

「流石のフリード君も数でかかられると厳しいかも、みたいな?こういう時は…逃げるっきゃない!」

「待ちなさい!」

「待て、イリナ!」

「ああもう、罠に決まってるのに…!」

イリナ、ゼノヴィア、祐斗がフリードを追跡する。アーシアがフリードの居たところを見て、倒れていた神父に駆け寄り、手を触れて小さく首を振る。

「イッセーさん…」

「死人に鞭打ってたわけか…」

一誠は神父を仰向けに寝かせて目を閉じさせ、胸の上に手を揃えさせる。

「"迷い人に憐れみを(キリエ・エレイソン)"」

一誠はそう言って十字を切る。祈りに対するダメージは発生しない。

「今の、教会の祈り…だよな?」

「いや、俺は浄霊術の一環としてやってるから祈りとカウントされない。相手が教会の信徒だから教会式に寄せたが」

「意味がわからない」

「型は真似ても信仰心はないから関係ないってこと」

より正確には異なるのだが、説明が面倒なのでそれで押し通す。

「そんなことよりあの三人を追うべきだと思います」

「あ、そ、そうだな」

 

二本の聖剣…おそらく、夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)を手にしているフリードと、ゼノヴィアと祐斗が戦っている。この共闘は祐斗が気を使っているからこそ成り立っているものだろう。ゼノヴィアは多分根本的に共闘というものが向いていない。手にしているのが破壊の聖剣だから、というのもあるかもしれないが。イリナは早々に倒されたようだ。

「アーシア、イリナを頼めるか?」

「はい!」

「匙、小猫ちゃん、援護を」

「ああ」「わかりました」

「行くぞ」

一誠が指を鳴らすと魔術の雷が発生しフリードの振り上げていた聖剣に落ちる。

「いっ…たあ!!」

「!」

「どうやら、こちらの増援が来たようだよ」

「うへぇ…倒しても増えるとかゴキブリかよー」

「誰がゴキブリだっての」

「相変わらず口が悪い…です」

一誠がイリナを後方に移動させ、アーシアが回復する。アーシアの神器は傷は治せても疲労などは回復できないのですぐ戦線復帰は無理だろう。寧ろそもそも気を失ってる視点で望み薄だが。

「…いっそ全部折るのも一つの手だが…」

正直、前衛組が凌ぎを削っている中に入っていくのは一誠には辛い。後、あまりメリットも無い感がある。この件…聖剣とバルパーに関しては祐斗に決着をつけさせたいと一誠は考えている。コカビエルはともかく、それ以外は裏方に回るつもりなのである。

「――フリード、一体何をしている?」

「!」

「げっ、コカビエルの旦那っ」

一誠はコカビエルを見て複雑な思いを持つ。思っていたより弱い。まあ、倒せるだろう。だが、この状況では難しいだろう。一誠以外歯が立たないのだから、守る必要がある。だが、守りながら戦って勝てる相手ではないだろう。

「破壊の聖剣か。この国では"鴨が葱を背負ってくる"と言うのだったか?…まあ、余計なものが幾つも付いてきているようだが」

「この状況でそんなこと言えるとか旦那マジパネェっす」

「あれが、聖書に記された堕天使…」

「拙い状況、です…」

「アイツ、何かヤバい…んだよな」

「コカビエル…!」

「死ね、人間」

「"私は拒絶する"」

障壁がコカビエルの放った光の槍を防ぐ。

「…何?」

「お前は俺が相手してやる」

「相手してやる?ガキが大口を叩いたものだな」

「皆、一旦撤退して立て直そう。殿(しんがり)は俺が務める」

「しかし…」

「死んでしまったら元も子もない」

一誠の手には何時の間にか本がある。

魔道書(グリモワール)の13ページから48ページまで簡易起動、"雑多なる魔術の矢"、発動用意」

一誠の周囲に35の魔術の矢が出現する。

「撤退だ」

「何やら妙な魔術を使うようだな、小僧」

「手を抜いた魔術じゃ足止めできなさそうだからな」

ブラフである。

 

 

 

 

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