「…どうしようか」
「何やってるんですか先輩。完全に場が白けてますよ」
「いや…うん、俺も別に狙ってこうしたわけじゃないというか…」
一誠は少し困った顔をした。
状況は簡単である。敵が喚び出した
「使い魔探しの時の再現ですね」
「妙なフェロモンでも出してるんですか、先輩」
「フェロモン…考えたことなかったな。いつもこんな感じだし」
「と、とにかく…お前たちの目論見は外れたようだぞ」
「フリード!」
「へいへい、っと」
光の剣を手にしたフリードと魔剣を手にした祐斗が戦い始める。一誠は少し考え、送還術を起動する。
「騒がせてごめんな」
不満そうにするケルベロスたちに一誠は困ったような苦笑いを返した。
「手下がこれだけだと思ったら間違いだ」
光の剣を手にした神父たちが姿を現す。
「十把一絡げのエクソシストでどうにかなると思ってるなら甘い、です」
「本命のための時間稼ぎってことだろ。フラグ立ってるし」
と言いつつ、送還術を使っている一誠は動けない。送還先の座標を正確には把握していないためである。*いしのなかにいる*という事態を引き起こさないための配慮がいるのだ。
聖魔剣を開眼した祐斗がフリードと四つの聖剣を統合したものを打ち破る。
「やったよ皆、僕たちはエクスカリバーに勝ったんだ」
「やったな、祐斗」
「ああ。君たちのおかげだ」
一誠は折れたエクスカリバーを手に取る。そして、ふむと呟く。
「ゼノヴィア、
「は?何を…「ギブアンドテイクっていい言葉だよね」あ、ああそうだな!」
破壊の聖剣は一誠の手に渡るとオリジナルの欠片を残して砕け散る。
「?…イッセー君、一体何を…」
「冥土の土産に本当の聖剣エクスカリバーと名乗るに足るものを見せようかと」
一誠を中心に、足元に光の魔法陣が描かれる。アリアのように、この世界に存在しない言葉で一誠は呪文を歌い上げる。エクスカリバーの破片から光が紡がれ、剣の形に織り上げられていく。
「今此処にないエクスカリバーって何だっけ?」
「…
「祝福と支配か。じゃあ、何とかなるかな」
【
【
一誠が二つを追加で歌い上げた時、聖剣が完成する。
それはまさに、聖なる剣だった。光を帯びた白い刀身に、黄金の握りと鍔がついている。形状は
「
一誠は籠手を出現させた左手で聖剣の柄を掴んだ。そのまま、片手で構える。
『ところで、バルパーが聖剣を完成させた時に制限時間がどうとか言ってなかったか?』
「そういえば、そんな事を言ってたような…」
一誠とドライグがマイペースな会話を始めたところで、やっと目の前で起こったことに理解が追いついたバルパーが騒ぎ、コカビエルに殺される。
「解せんな。貴様らは何故そうも既にいない主の為に動くことができる?」
「勝手に顔も知らない相手の走狗にしないでくれるか?」
ばさり、と一誠の背から翼が広がる。白と黒、そして上下に赤の四対八枚の翼。
「既にいない…主…?」
「そうか、天界上層部は必死に隠してたんだったな。…疑問に思ったことはないのか?天界は何故、魔王を失った悪魔どものところに攻め込まなかったのか。…先の大戦で魔王どもが全滅した時、神も共に死んだのだよ」
「そんなっ…」
「神様が、既に死んでいる…?」
「そんな馬鹿なッ」
大きくショックを受けた教会に縁を持つメンバーと、嗜虐的に笑うコカビエルを見て、一誠が眉を寄せる。
【Balance Brake!】
一誠の全身が赤い鎧に覆われる。
『この状況で禁手に至るか!流石、相棒は主人公体質だな』
「流石の俺もぷっつんだ。何か動きにくいけどこのままぶっ潰す!!」
『動きにくい、って、相棒?!』
聖剣を両手で構え、一誠は地面を蹴ってコカビエルに肉薄する。
「天誅!」
「っ、貴様、赤龍帝だったのか!」
「そういえばあんたには名乗ってなかったな。俺が今代赤龍帝、一誠だ!別に覚えなくてもいいぜ」
剣に振り回されているかのような大振りな動きで一誠はコカビエルに斬りかかる。
「会ったこともない、顔も知らない奴が死んでたからってどうした!俺は神様が何を言おうが何をしようが、
一誠は、剣士ではない。
気の遠くなるほど昔、魔術主体に振り切れるより前に、剣を振るっていたこともあったような気がするが、剣術を極めたことはない。剣士が仲間にいたことはあるし、扱い方は一通り知っているが、一誠は剣術使いにはなれても剣士にはなれない。
故に、実質
「こなくそ!」
「赤龍帝とは、そんなものか。少しヒヤッとしたが、どうやら俺を倒せるほどではないらしいな」
『何だと!』
「あーくそ、使いにくいし動きにくい!やっぱこんなもんいらねぇっ」
一誠の叫びと共に、鎧が組み替えられていく。要所だけを覆う形になった鎧は、何処か
『いらない、って、相棒?!』
調整が終わったことを示すように、二股に分かれた黒いマントがその背に広がる。
「エクスカリバーを巡る話だったからエクスカリバーで幕を引こうと思ったが、もういい、めんどい。この一撃で終わらせる」
エクスカリバーに譲渡が行われそのオーラが膨れ上がる。
「この一撃を手向けと受け取れ。これが今の俺の"最高"の攻撃だ!」
斜めに切り上げる形で一誠は剣を振るう。斬撃と共にオーラがビームのようにぶっぱなされる。余波で結界が砕け散り、咄嗟の回避も間に合いきらず、コカビエルの羽と手足の一部が蒸発する。一誠は舌打ちする。
「結界が壊れたか。見積が甘かったな。…上に向けて正解だった」
先程一誠が口にした最高とは、世界を壊さず、必要以上に危険視もされない、表に出せる最高値、という意味である。ぶっちゃけ、連発も可能だ。
「くそっ…この俺が、ドラゴンなんぞに…」
「止めを刺されることがお望みか?今ならきっちりあの世に送ってやるぜ」
「――それは遠慮してもらおう」
突如現れた白がコカビエルの意識を刈り取る。
「お前は…」
「連れ帰れと言われているからな。殺されてしまっては困る」
「美味しいところをかっ攫っていこうって?」
「俺は君と戦っても構わないが…フィールドが整っていないからな。あまり騒がせるのは君も望むところではないだろう?」
「けっ。モッテケドロボー」
一誠は肩をすくめる。白…白龍皇は、コカビエルとフリードを抱え上げる。
『おい、黙って去る気か、白いの』
『…久しいな、赤いの』
『決着を付ける気はなさそうだな。…まあ、こちらもあまりそちらのことは言えないが』
『今代は興味の対象が他にいっていてな…だが、今までで最強の白龍皇だよ』
『こちらも同じだ。相棒以上の赤龍帝など、おそらく生まれまい。何しろ、世界のバグみたいなやつだ』
「誰がバグだ。この世界の理を曲げた覚えはないぜ」
『普通は曲げようとしても曲げられんのだ』
ドライグが溜息をつく。
『そもそも"因果律の干渉"は何度かやっていただろう』
「そうだっけ?」
本気でとぼける一誠に、白龍皇が口を開く。
「何処までも底の知れない男だな。君と戦う時が今から楽しみだよ」
先程も全力とは程遠かったようだし、と付け加える。
「生憎俺は戦闘狂じゃないんで遠慮させてもらいたいね。必要ない戦いはしない主義なんだ。タイムイズマネーだよ」
「ゼノヴィア」
はい、と一誠は聖剣をゼノヴィアに渡す。
「…いや、渡されても困るのだが…」
「借りたもんは返さなきゃいけないだろ?どうせ俺剣は使いこなせないし」
「…とりあえずイリナに渡しておく」
「さて、今回の件で三勢力はどう動くのかね。コカビエルの言葉を信じるなら、堕天使に戦う気はないし、天使も悪魔もそれどころじゃないから戦争にはならない、ってのが最有力だけど」
「まあ、神も魔王も死んでいる、となればな…そういえば、あの時相棒は何故ぷっつんしたんだ?」
「え?あー…アイツがアーシアたちがショックを受けてるのを見て悦ってたからだよ。確かに、絶望ってのはなかなか見れない感情だし、綺麗な色してたけど、あいつらは俺の大事な仲間だ。あいつらが傷つくことを俺は望まない」
「…さらっと外道なことを言っているのが気になるが、要するに仲間を傷つけられた事への怒り、ということか」
「あとは、此処で感情のままに怒りを爆発させれば禁手に至れるかな、という計算もあったりなかったり」
「…感情によって力を発揮する赤龍帝と相棒は相性が良いのか悪いのか…」
自分の感情も操れるのかお前は、とドライグはぼやく。
counterfeit:模造 正確にはカウンターフィットと読むっぽいけど
リュー君とはこの辺から分岐