アフタースクールにクラスメートとかと遊びに行っただけの話
「くそっ、完璧超人が二人もいる…」
「弱点ないのかこいつら…」
「イッセー君は運動苦手なんだと思ってたんだけど」
「ボーリングは規定値あれば、後はコントロールだろ?必要以上に力を込める意味はないし、速く走る必要もない」
「僕は別に完璧超人じゃないんだけど…」
「…まあ、完璧ではないですよね」
「祐斗さんもイッセーさんも、一発でピンを全部倒しちゃいました」
「次は私の番だな」
ゼノヴィアと、ついで小猫が立ち上がる。
現在、一行はボーリング場に来ている。ちなみに、個人戦であり、ぐっぱーで2レーンに分かれてプレイしている。メンバーは左側のレーンに祐斗、ゼノヴィア、桐生、元浜。右側のレーンに一誠、小猫、アーシア、松田となっている。
「ゼノヴィア、遊びなんだから気楽にな」
一誠が呼びかける。彼女は先日悪魔に転生したばかりであり、元々身体能力が高いこともあって本気を出されると困るのである、色々と。
「わかっている!」
「私にはないんですか、先輩」
「小猫ちゃんは遊びで無粋をする子じゃないだろう?」
にこり、と一誠は笑う。逆に言えば、ゼノヴィアはすると思われているということでもある。
「…しませんけど」
「小猫ちゃんが何回ストライクを出せるか楽しみだな」
「それは、私への挑戦と受け取ってもいいですか?」
「いいよ」
闘志満々で向かった小猫を見送る一誠に桐生が言う。
「完全に子供をあしらってる感じだったわね」
「んー…なんか、小猫ちゃん見てると姪っ子を思い出すんだよね」
より正確に言うなら、前世の、とつくが。
「あれ、イッセー君って一人っ子じゃなかったっけ」
「血の繋がりはないけど兄と慕ってた人の娘だから姪っ子みたいなもんでしょ」
「へぇ…」
「私が勝ったんですから、奢ってください」
「賭けはしてなかったと思うけど?それに、ストライクの回数では負けたけどスコアでは俺が勝ってたし」
「む…」
「…っていうか、美味しいもの食べてる時の小猫ちゃん可愛いけど奢ったら財布が大打撃を受けかねないし…せめて一品献上くらいにしておいて欲しい」
「じゃあそれでもいいです」
少し照れた様子で小猫は視線を外す。嫉妬心らしきものを噴出している元浜に苦笑しながら一誠は肩をすくめる。
「じゃあ次の部活の時持っていくんでいいかな」
「許します」
「イッセーさん、歌うの好きなんですね」
「え?あ、うん。歌うのっていうか、音楽自体好きなんだ。…自重しなきゃいけないのはわかってるんだけどね」
彼はその特性から歌えば周囲の者を"聞き惚れさせて"しまう。聞き惚れさせるのは歌に限ったことではないが、この効果、本人が制御しきれないものだったりする。理由は本人が歌うことが好きで歌い始めると周囲の状況が頭から抜けがちなところにある。そして聞き惚れている者は行動が阻害されるのである意味最強の妨害スキルである。普段は必要のないものだが。
しかし、音楽を聞けば歌ってしまう悪癖がある上に現在地はカラオケ、歌うための場所である。そもそもカラオケで歌わないでどうするというのか。よって、適当に注目を散らす効果を付加した腕輪を着用している。
「私、イッセーさんの歌…好き、ですよ」
「ありがとう、アーシア」
「イッセー君って結構罪作りだよね」
「罪作り?何が」
きょとん、と一誠は目を瞬かせて僅かに首を傾げる。祐斗は苦笑を浮かべた。
「うーん…人気者だよね、ってこと?」
「モテ度は祐斗の方が上だと思うけど」
「そうかな?"伊達眼鏡"を止めてから告白されることが倍以上に増えたそうじゃないか」
「それは一時の感情のまま突っ走る人が増えたってだけだから…」
それ以前は誰か知らない親切な人で終わっていたのが、兵藤一誠という個人として認識されるようになった、という方が正しいか。その結果、彼個人に好意を持つ人がどっと増えているのである。
「僕もイッセー君のことは好きだし」
「それはありがとう」
「…そういうところが罪作りなんだって」
「?」
『相棒のこれは昔からのものだ。今更治らん』
「治らん、って…俺何か間違ったこと言ったか?」
「そりゃあ、僕とイッセー君は男同士だけど、好きだって言ったらそんな風に笑ってくれると、なんというか…」
「別に俺そっち方面に偏見はないけど、応えられるかっていうと微妙なんだよな…祐斗がどうしたいかにもよるけど」
『真面目に何を言ってるんだ相棒』
「日本じゃ割りと昔から広くあることだよ?現代は
ふと、一誠は祐斗が真っ赤になっている事に気付く。
「…祐斗?」
「その、なんというか」
「うん」
「…やっぱり、なんでもないよ」
「そう?」
何でもないという顔ではないが、本人がそう言うならそういうことにしておこう、と一誠は結論する。