平行世界のドラゴンたち。   作:ペンギン隊長

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とある休日


赤き龍帝24

 

 

「よお、奇遇だな、悪」魔君、と言おうとしたところで、アザゼルの躯は地面に叩きつけられていた。みしみしと骨が悲鳴を上げる音さえしている。

「ギブギブ、何が気に障ったか知らないが、悪かった、って」

「………あ、最近よくお客さんになってる堕天使の人。…ごめんなさい」

一誠はぱっと手を離して退く。

「いてて…ちなみに何でこんなことしたかって教えてくれるのか?」

「あー…ちょっと、今朝は夢見が悪くって…夢の中であなたと似た声の人に友人が殺されたりしたもので…」

「そりゃ、ご愁傷様。…だがそれ、俺完全にとばっちりだよな?」

「面目ないです」

一誠はしょぼんとして眉をハの字に曲げる。

『…まあ、そいつがとばっちりなのはともかく、その原因はそいつの後ろで相棒に戦意を向けてる白いのにもあるんじゃないか?』

「あ」

「やあ、赤龍帝君」

「…ヴァーリ、てめぇ…」

「仕方ないだろう?彼は俺のライバルにあたるんだから。戦えるかもしれない機会が巡ってくれば気がはやりもする…っと、そういえばまだ名乗ったことがなかったな。俺はヴァーリ、白龍皇だ」

「俺は一誠。…前も言ったけど、何の利もない戦いはしたくないんで戦うのは遠慮させてくれ。平和的に、ゲームとかでやるならいいけど」

「ゲームだと…?」

「"俺がいなくても世界は回る"だろうが、俺が動くことでより上手く回るところもある、と俺は信じてるんだ。自分の怪我で時間を無為にするのは嫌だし…支障のあるような怪我なんてしたら母さんたちが心配するから困る」

「・・・」

「…?」

きょとん、と紫の瞳を瞬かせ、一誠はヴァーリに歩み寄る。全てを見透かすような瞳にじっと見つめられ、ヴァーリは無意識に一歩下がる。一誠はヴァーリの手を取って無邪気に笑みを浮かべる。

「ヴァーリ、俺と一緒に遊びに行こうぜ!とりあえずゲーセン!対戦ゲームやろう!」

「え、あ、ああ…」

「…おい、俺は無視かよ」

「保護者同伴で遊びに行くのって興醒めじゃないですか」

「アザゼルについて行くより、コイツの方が面白そうだからな」

「お前らなあ…」

「えーと…じゃあ、賄賂です」

はい、と一誠はアザゼルに量産型聖剣(コピー・カリバーン)を二振り渡す。

「これは…聖剣か?」

量産型聖剣(コピー・カリバーン)です。伝承をリスペクトして、使用者の身体能力底上げ(ブースト)と義のない戦いでは刀身が折れる機能を付けてみました」

二振りの剣が出てくるパターンの場合、卑怯な行いによってカリバーンが折れてしまうことになるという話がある。

まあ、ある意味敵対勢力に武器を渡す以上、当然の措置ではあるのだが。

量産型(コピー)?こんなもん量産できるのかよ、お前」

「想定してる規模により否定した方がいいかもしれませんね。まあ、一品物(ワンオフ)でも原典(オリジナル)でもない、という意味での量産型(コピー)でもありますから」

「そういえば君はあの聖剣は結局どうしたんだ?」

「どうした、って?」

「先日振り回していただろう。偽造の聖剣(エクスカリバー・カウンターフェイト)、だったか」

「ああ、あれ。普通に返したよ。別にいらないし。…今の人造聖剣使いじゃ扱いきれないとかなんとか文句言われたけど」

「…そういやお前、聖剣使いなわけ?」

「生まれてこの方、正式に剣術を習ったことはないですよ」

事実である。少なくとも今生、一誠は他者から剣術を習ってはいない。

 

「…くっ、もう一度だ」

「ふはははは、音楽と名のつくもので俺が負けるわけにはいかないのだ。何度でも返り討ちにしてやる!」

『…一体どういう状況なんだ、これは』

『俺にもよくわからん…』

相棒たちの困惑を余所に、一誠とヴァーリは並んで音ゲーをしていた。

とても平和な、子供が遊んでるだけにしか見えない光景である。その実、自らの人外の動体視力と反応速度を無駄遣いした、人間卒業レベルのスコアを出していたりするが。まあ、それでもゲームはゲームである。

「…っと、この曲終わったら一旦休憩な」

「む…ならば今回こそ俺が勝つ」

「はっはー、寝言は寝て言え」

\\フルコンボだドン//

 

「イッセー君、彼は…?」

「白龍皇のヴァーリ。ちょっと遊びに連れ回してるとこ」

「白龍皇って確か…」

「安心しろ、無理に拳を交えるつもりはない。どうせ戦うのなら、お互い悔いの残らない方法にしたいからな」

「今のところ、音ゲーは全勝したけど、それ以外の対戦ゲームは6:4くらいなんだよなー。お前本当にゲームやったことなかったのか?」

「ああ。戦いと修行に明け暮れていたからな。…だが、ゲームというのも悪くないな。新たな技の構想が幾つかできた」

「リアル格ゲーでもする気かお前」

 

 

今代赤龍帝・イッセーは変な奴だとヴァーリは思う。

拳を振るうこと自体にさして躊躇いはないようだが、戦うことに執着がないようだ。その手も、武人のものではなかった。赤い龍によると歴代最高の力を持っているそうだし、垣間見た実力はかなりのものではあったが…。

どうも、接したことのないタイプの相手のようである。子供っぽいような、大人びているような。冷静沈着のような、情熱的なような。とりあえず、人懐こくて仲間思いなのは間違いないようだ。そして、仲間からも慕われている。

「…何だ?」

「…何でもない、です」

聖魔剣使いについで合流した少女は、ヴァーリがイッセーの隣にいるのが気に入らないらしい。そこまで警戒せずとも、ヴァーリは狂戦士ではない。状況を見て空気を読むこともできるのだが。

「小猫ちゃん何か邪推してない?」

「してません」

「祐斗もだけどさ、そう難しく考えなくていいんだって。俺はただ、ヴァーリとも友達になりたいんだ」

「友達?白龍皇(オレ)赤龍帝(キミ)がか?」

「ライバルと友達は矛盾する概念ってわけじゃないだろ」

ニィ、と笑ってイッセーは僅かに首を傾げる。細められた紫の瞳に敵意や悪意の類は全くない。裏もなく、本気でそう言っているようだった。

「敵と友達なら、両立しないと思うけど」

「そうかなあ」

 

スポーツに移行して以降、二人の対戦成績はややヴァーリが優勢である。スポーツを行う上である種上限みたいなものはお互い設定していたが(でないと超人的な結果が出て困る)やはり一誠は運動が苦手なのだろう。これでヴァーリが手加減が上手いタイプだったらボロ負けしていた可能性もある。

 

「うちで夕飯食ってけよ」

「…だが」

「うちの両親、俺が友達とか連れてくとスゲー喜んでくれるんだよ。だからさ」

「……まあ、いいだろう」

 

「…で、今日のアレは一体何だったんだ?」

精神世界で一誠に向き合い、ドライグは問う。一誠はニィ、と笑って言う。

「何って、わからないのか?アイツが無闇に俺と戦おうとさせないための布石作りだよ」

「相手は白龍皇だぞ」

「お互い人間じゃないんだ、決着を焦る必要はないだろう」

一誠は肩をすくめる。

「人間じゃない?…まあ、確かにただの人間ということはなさそうだったが」

「多分悪魔とのハーフだな。でもって、所謂純血名門の血を引いてる可能性も高いと思うんだが…堕天使についてることからして、実家とは縁を切ってるか、潰れてるかしてるんだろうな。貪欲に力を求めてるようだし、子供時代により大きな力にねじ伏せられるタイプの挫折でも味わってるかもな。…いや、親族からの虐待という線もありそうではあったが。いずれにしても、アイツは戦いを求めてる。自滅型だな」

「お、おう…」

「復讐鬼属性もなくはなさそうだったし…赤龍帝(オレ)じゃない強者に挑んで返り討ちに遭って負ける可能性もなくはないんだが、ある程度状況を読むだけの頭はあるみたいだからその点は考慮しなくて良さそうかな。つぅか、ある程度天運を持ってそうだから、放っとけばどんどん強くなるんじゃね。英雄(しゅじんこう)属性あるよ、アイツ。中二病(しゅじんこう)要素てんこ盛りっぽいし」

「だが、今戦いたくはない、と」

「俺は現在悪魔陣営、アイツは堕天使陣営。戦えば大事になる可能性もある。まあ、二天龍の戦いだから、と勢力が手を出すのは無粋、としてくれる可能性はあるが、口実に使えないわけじゃない。…どう戦おうとするかにもよるが、実力的には互角やや俺が上、ってところじゃないかな、今のところは。アザゼルは戦争に対する意欲はないみたいだが、コカビエルみたいなのが他にいないとは限らないし、組織の利の為に動くのは長の務めだ。可能性としてはゼロじゃない」

「戦争、か…」

「とまあ、この辺までが、リアス部長の兵士(ポーン)として、そして赤龍帝として、の俺の意見」

「…うん?」

「アイツが孤独を魂に抱えてるみたいに見えたから、手を伸ばさずにいられなかったんだ。迷っている子供がいるのなら、放っておくって選択肢は俺にはないから」

「迷っている子供、か」

「俺とそう実年齢が変わらなさそうだから、本人には言えないけどね。俺、案外アイツのこと嫌いじゃないよ。アイツの感情(いろ)はアーシアたちとは別の意味で綺麗だと思う」

「…お前、そういうことを俺以外の前であんまり口にするなよ。下手すると修羅場になるぞ」

「修羅場?何で」

「お前がなんだかんだで周囲の者を惹きつけているからだ。男女の区別なく、な。…どうしてこうなった」

 

 

 

 

 




ちなみに夢は前世の別ルートである
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